第19章「バブイルの塔」
S.「 “ただの旅人” 」
main character:バッツ=クラウザー
location:バブイルの塔

 

 

「追いついたぞ・・・セフィロス!」

 前方で、魔物を斬り捨てるセフィロスを見つけ、クラウドは叫ぶ。

「・・・・・・」

 クラウドの声に、セフィロスは感情のない声で振り返った。
 回復魔法でも使ったのか、カインに開けられた胸の穴はなくなっている。どころか、どういうわけか身体と一緒に貫かれた服までもが元通りになっていた。
 だが、そんな些細なことにクラウドは気づくこともなく。

「今度こそ、今度こそお前を・・・ッ!」

 走る勢いそのままにセフィロスへ突進する―――が、その肩を誰かが掴んだ。

「待てよ。俺に先にやらせろッ」
「なっ!?」

 クラウドの肩を掴み、引き寄せた反動で前に出たのはサイファーだった。
 肩を放し、その手を走りながらセフィロスへと向けて―――

「『ファイア』!」

 炎の弾がセフィロスに向かって飛ぶ。
 その弾の後を追うように、サイファーはセフィロスに飛びかかった。魔法と剣の二段攻撃。

「・・・・・・!」

 

 八刀一閃

 

「―――なっ!?」

 飛んできた炎などまるで意に介さず、セフィロスはカインを迎撃した同じ技を放つ。
 高速の刃に為す術もなく、サイファーの身体が切り刻まれ、身に着けていた白いコートが真紅に染まる。

「がああああっ!?」

 斬撃により吹き飛ばされ、サイファーは床に倒れる。

「ち・・・くしょう・・・」

 少しでもファイアの効果があったのか、それとも単に運が良かっただけなのか、なんとか生きてはいるようだ。
 そんなサイファーを飛び越えて、今度はクラウドがセフィロスへと迫る!

「喰らえ―――」

 クラウドは愛用の巨剣を両手で握りしめ、強く地面を蹴る。
 それはセフィロスへ接近するものではなく、高く天井へと向かう跳躍だ。竜騎士のような高々度からの攻撃!

 

 ブレイバー

 

 頭上から、全力で剣を振り下ろす―――ただそれだけの攻撃だが、頭上からの攻撃は意外と避けにくい。なおかつ、肉体を強化されたソルジャーの一撃だ。それは必殺と呼べる威力にもなる。

「・・・・・・!」

 だが、セフィロスはバックステップしてそれを回避する。
 クラウドの剣は虚しく床を打つだけだ―――ソルジャーの必殺の一撃でも、この塔の床は傷一つつかない。

「・・・チッ!」

 地面に着地したクラウドは、再度セフィロスに攻撃しようと前を見る―――

「!?」
「・・・・・・」

 すぐ目の前にセフィロスが居た。
 剣を構えようとするクラウドの身体に、無数の斬撃を刻みつける。

 

 虚空

 

「ぐ・・・あ・・・!?」

 クラウドの身体に刻まれた無数の傷。
 その傷が、淡く魔晄の色に輝いて―――爆発する!

「ぐあああああああああああああっ!」

 悲鳴とともにクラウドの身体は吹っ飛んで、床に叩き付けられた―――

 

 

******

 

 

「・・・しっかし、変な塔だよなあ・・・初めてだぜ、こんなの」

 塔内を走りながら、バッツは呟く。

 ―――二手に分かれ、バッツ達はセフィロスを追いかけたクラウド達を追っていた。
 当然、話し込んでいるうちに姿は見失ってしまっていたが、所々にクラウド達が斬り捨てた魔物達の屍が落ちている。それで行き先はなんとなく解った。

 他人が斬った魔物とはいえ、それを見るのもあまり気分が良いものではないらしく、バッツはなるべく魔物達を見ないように、やや視線を上向きにしながら走っている。
 そうした視界に映るのは、見慣れない材質でできた塔の壁や天井。しかもそれらの隙間にはなにやらよく解らないケーブルや機械が埋め込まれ、時折電子的な光が走っていた。そんな機械のせいなのか、塔の中は窓もランプもないというのに、まるで昼間のように明るい。
 フォールスや、バッツの故郷であるファイブルでは、まず目にすることはないような、バッツにとってはまるで異世界のような光景。

「そうですね。地上の外観は、俺は飛空艇の上から何度か見たことがありますが」

 と言ったのはロイドだった。
 もっとも、バブイルの塔の地上部分は、バロンと長年敵対していたエブラーナにある。ロイドが赤い翼に配属された時には、すでに停戦していたが、それでも気軽に飛空艇で近づけるような場所でもない。だから、見たと言っても遠くから望遠鏡を使って見たと言うだけだ。

「ただ、内部がこんな風になっているとは・・・俺も初めてです。けど」

 ふと、ロイドは疑問、というか違和感を感じる。

「でもこの材質、つい最近に見たことがあるような・・・」
「あれじゃねえの? ほれ、バロンの港の・・・」

 ロイドの疑問に答えたのはギルガメッシュだった。それを聞いて、ロイドは「ああ」と理解する。

「ああ! そうか、確か・・・ゾットの塔! あれと似ているんだ!」

 一ヶ月前、ローザが捉えられていた空中に浮かぶ塔。
 そのローザの転移魔法のせいで、バロンの港に出現した。その内部に仕込まれた浮遊石を使って、現在バロンでは、新型飛空艇の量産が進められている。
 ロイドも一度、塔の内部を見せてもらった。その時は、すでに塔の機能は停止していて、このバブイルの塔のように稼働しては居らず、灯りも外から持ち込んだ薄暗いランプの明かりしか無かったために、はっきりと内部を見渡せたわけではなかったが。

(あの塔も、このバブイルの塔もかなり高い技術で作られてる―――そんな塔を二つもゴルベーザは起動させて使っていた・・・)

 バブイルの塔とクリスタルの事は知っていても、クリスタルで塔が起動するなんてことをロイドは知らなかった。
 ゾットの塔に至っては、その存在すら知らなかった。それはロイド以外の殆どのフォールスの住民も同様だろう。

(その土地に住んでいる俺達ですら知らなかったようなことを、何故、あのゴルベーザは知っていた・・・?)

 そもそも、この塔でなにをしようとしているのか、未だにゴルベーザの目的が解らない。
 戦況的にはこちらが優勢のはずだが、まだまだ謎は多く残されている。

(その謎を解く手がかりを少しでも掴まないと・・・)

 走りながら、ふと隣を並走する赤い鎧の男を見やる。
 このギルガメッシュという男も、謎の一つと言える。

「お、居たぜ」

 そのギルガメッシュが声を上げ、前を見れば確かに居た。
 クラウドとサイファーはすでにセフィロスに追いついていたらしい。すでに斬り合っていて―――斬り捨てられた後だった。

「クラウド! サイファー!」

 バッツが声をあげる。
 と、倒れていた二人が、その声に反応してかなんとか立ち上がろうとする。
 二人が倒れていた場所に血溜まりができている。かなり深い傷のようだが、それでもまだ生きているのは、傷口に淡く輝く回復魔法のお陰だろう。

「おいおい、あっさりやられてるなよ」

 しゃーねーなーとばかりにギルガメッシュが立ち止まって溜息を吐く。
 ロイドとリディアも同じように立ち止まり―――そしてバッツだけがさらに加速! セフィロスへと突進する!

「・・・・・・!」

 

 八刀一閃

 

 セフィロスの長い刀から繰り出される、目にもとまらぬ斬撃がバッツを迎え撃つ。
 カインの突撃を迎撃した技だ。しかしカインの時とは違い、それはバッツの服や髪をかすめるだけで当たらない。

「あいつ・・・あれを避けるだと・・・!?」

 驚愕するクラウドの目の前で、バッツはそのままセフィロスの脇を駆け抜け―――

「よっ・・・と」

 背後に回ると同時に、手にした聖剣エクスカリバーで一撃を与える。だが。

「・・・・・・」
「あー・・・やっぱ通じやしねえか」

 セフィロスは何事もなかったかのようにバッツを振り返り、バッツは苦笑する。
 バッツの剣に威力は無い。なので、的確に急所を狙うか、もしくは斬鉄剣のように “斬る” ことでしか相手にダメージを与えることはできない。
 しかし、ソルジャーとして強化されたセフィロスには、急所を狙った攻撃でも通用しそうにない。ならば “斬る” しかないのだが。

(この剣じゃそれこそ斬鉄剣じゃねーと斬れねえし)

 斬鉄剣は一撃必殺の技だ。
 セフィロスと同じ “最強” であるレオ=クリストフすら防ぐ術を持たなかった。
 だからバッツはどうしようもなく追いつめられた時か、相手に斬鉄剣が通用しないと解っている時以外は使うつもりはなかった。

(まあ、いいか)

 と、心の中で呟いた時、斬撃が来た。横なぎの無数の斬撃がバッツを襲う―――が。

「速いんだけどさあ」

 のんびり呟くバッツの身体を、しかし刃が切り刻む事はなかった。

「・・・・・・!」
「当たんねーよ」

 セフィロスが驚愕に身を強ばらせる。
 その隙を突いて、バッツが動く。
 無拍子でセフィロスの死角に飛び込んで、一撃。

「・・・・・・!」

 バッツの一撃にセフィロスは軽くよろめいた。
 もっとも、それは見えないところから受けた攻撃に驚いただけで、ダメージは全くないようだったが。

「ちぇ、全ッ然駄目だな」

(俺じゃコイツを倒すことはできねーが、倒すのが目的じゃないし。何よりもコイツは―――)

 

 縮地

 

 刃の届かない間合いでセフィロスが剣を振るう。
 虚空を斬り、生まれるのは真空の刃。5つの見えざる刃が襲いかかってくるが、バッツはそれをサイドステップひとつで回避する。

「―――!」

 真空の刃を回避したバッツの目の前に、いつの間にかセフィロスが接近していた。
 バッツが回避する暇もなく、セフィロスの刃が二度、バッツの身体を切り刻む―――だが、斬った手応えはなく斬り刻んだはずのバッツの姿が掻き消える。

「悪い、それ分け身」

 声はセフィロスの背後から。
 驚愕に目を見開いてセフィロスが、刀を振りながら振り返るが、すでにそこにバッツの姿はない。
 セフィロスの刀が届かない程度に間合いを置いていた。

「アンタの攻撃は当たらねーよ。つか、当たる気がしねえ」

 呟きつつ、思う。

(カインの奴がやる気無くした理由がよく解る。コイツは強い・・・強いが―――)

「アンタは怖くない。レオ=クリストフや、セシル=ハーヴィのような “恐さ” を感じない。だから―――」

 にやり、とバッツはいつものように笑みを浮かべる。

「―――アンタには負ける気がしねえよ」

 

 

******

 

 

「大丈夫ッスか、お二人さん?」

 バッツがセフィロスの相手をしている隙に、ロイドは倒れているクラウド達に声をかける。
 回復魔法が効いてきたのか、戦闘はともかく、動くことができるくらいまでは回復したようだった。ロイドの指しだした手を払いのけて、クラウドは立ち上がる。

「くっ・・・セフィロス」
「って、まだ戦う気ッスか!?」
「当然だ・・・俺はアイツを許すわけにはいかない・・・!」
「その身体じゃ・・・っていうか、あれだけあっさりやられておいて・・・」
「五月蠅いっ!」

 制止しようとするロイドを突き飛ばし、クラウドはセフィロスの姿を目で追った―――と、その動きが凍り付く。

「アイツ・・・」

 それは信じがたい光景だった。
 セフィロスは目にも止まらぬ高速の斬撃を繰り出す。
 その事如くを、バッツは危なげなく回避していた。

「なんで・・・あんな事が・・・」
「そりゃあ決まってる」

 クラウドの誰に問いかけるでもない問いに答えたのはギルガメッシュだった。

「アイツがあのセフィロスよりも強いからだろ?」
「・・・そんなことは有り得ない!」

 ぎり・・・と奥歯を噛み締め、クラウドは否定する。

「セフィロスは最強のソルジャーだ。ただの旅人なんかに―――」
「でも事実でしょ?」

 クラウドの言葉を遮ったのはリディアだ。
 彼女は冷めた目でクラウドを見やり、

「バッツ=クラウザーは、アンタやセフィロスよりも強い。旅人だろうがソルジャーだろうが、そんなことは関係ない」

 はあ、と嘆息して。

「そんなことよりも、さっさと逃げるわよ。あの “ただの旅人” は確実に “最強のソルジャー” よりも強い。けれど、絶対に倒すことはできない―――馬鹿だから」
「だからその馬鹿が相手をしてくれているうちに、早く逃げないと・・・」

 そう言ってロイドがクラウドに手を伸ばす、が、クラウドはまたもやその手を振り払い、バッツとセフィロスの方へと向かおうとして―――しかし一歩踏み出したところで、

「上!」

 不意にバッツが叫んだ。
 反射的にその場の全員が上を向く―――がそこには何もない。

「右!」

 さらにバッツの声。
 見れば、セフィロスの攻撃を身を反らして回避するところだった。

「なんだ・・・?」

 それを見る者たちが疑問を呟く中で、バッツは次々に方向を叫ぶ。

「下! 左! 右! 上! 下! 上! 右―――」

 まるで視力検査でもしているかのようなバッツの様子に困惑する者たちの中で、一人ギルガメッシュは「おお」と手を叩いて頷く。

「あいつ、セフィロスの攻撃を読んでるみたいだぜ?」
「は?」
「さっきから叫んでるじゃん。あれ、あのセフィロスが斬りかかる方向だぜ」

 説明されて見るが、しかし他の者たちには解らない。
 そのセフィロスの斬撃自体が遠くから見ても霞むほどの速さなのだ。どういう風に斬りかかっているのかすらわからない。

「て、てめえ、アレが見えてるのか?」

 サイファーの問いに、ギルガメッシュはにやりと笑って自分の目を指さす。

「おう。俺って目が良いし」
「じゃあ、バッツさんがセフィロスの攻撃を回避できるのは、動きを読み切っているから? そんな・・・セシル王じゃあるまいし・・・」
「いやあ、っていうかセフィロスの攻撃が単調すぎるんだよ。あんなん、俺だって読めるっつーの」
「なんだと・・・?」

 クラウドが訝しげにギルガメッシュを見ると、ギルガメッシュは逆に驚いたようにクラウドを見返す。

「おいおい、まさか気づいてなかったのか?」
「気づくって・・・なにを」
「だから、単調っていうか・・・頭悪いっつーか」
「セフィロスは!」
「はいはい最強最強。さぞかし頭もよろしいはずなんでしょうねえ―――でもなあ」

 不機嫌そう睨付けてくるクラウドに、ギルガメッシュは肩を竦める。

「さっき、カインがセフィロスに突撃を繰り返していたときの事を覚えてるか?」
「そりゃあ・・・」
「ついでに、お前らに追いついた時に、バッツが突進した時のことは?」
「何が言いたい?」
「全部同じ技で迎撃してたろ」
「あ・・・」

 言われて気がつく。
 カインが何度も突撃を繰り返した時と、先程バッツが跳びかかった時―――さらにはサイファーが攻撃しかけた時も同じだ。
 真っ正面から勢いよく突進してきた相手に対して、全部同じ技で迎撃している。

「でもそれは・・・!」
「そうだな。押し返せるなら手数で迎撃した方が、ヘタにガードしたり避けたりするよりも、リスクが少ねえ。現に、それで “最強の竜騎士” の突撃を何度も潰してる」

 結局は二段ジャンプで貫かれたとはいえ、カイン=ハイウィンドの渾身の一撃を止められる人間はそうはいない。

「しかし、あまりにも単調すぎる。何度も同じ技を見せる危険性を、おめえだって解るだろ? もうちっと変化を付ければ、カインだってあんなにあっさり貫くことはできなかったはずだぜ?」
「・・・・・・っ」

 感情は反論したいが、しかしギルガメッシュの言葉は的を得ていて何も言い返すことができない。

「・・・ていうかカインも疑問に思っていたケドよ、あれは本当に “最強” なのか? 俺、ああいうの見た覚えがあるんだけどさあ」
「見た覚え、だと?」
「トロイアで、セシル・・・王が “最強の騎士王” のゾンビと戦ったんだけどよ、あん時と同じだぜ」

 ゾンビとはいえ、ナイトロード・オーディンの力は凄まじく、セシルですら敗れかけた。
 だが、ゾンビ故の攻撃の単調さを見抜いたセシルの斬鉄剣で倒されている。

「ゾンビ・・・あのセフィロスがゾンビだと・・・?」

 確かに、それならば胸を貫かれても生きている理由にもなるが。

「さあなあ? でもダークフォースっぽい気は感じねえし、ゾンビとは一味違う気がするが。ともあれ―――」

 と、ギルガメッシュはバッツの方を見やる。

「 “ただの旅人” 相手には役者不足には違いないみたいだぜ?」

 ギルガメッシュの視線を追って―――またクラウドの身体が凍り付いたように停止する。

「な・・・なにをしているんだ・・・アイツは・・・!」

 セフィロスの嵐のような斬撃が繰り出される中、その鋼の暴風雨を前にして、バッツは目を閉じていた。
 目を閉じたまま、セフィロスの攻撃を回避している。

 如何に相手の動きが読めているとしても、一手読み違えれば首を飛ばされかねない相手だ。
 それだというのに―――

「なんで、あんなことができるんだ・・・?」

 そう呟くクラウドの声は震えていた。
 そして思い知る。
  “違いすぎる” と。
 レベルが違うなどという話ではない。幾ら鍛えても、どんなに強くなろうとも、アレにはなれない―――そう思わせるほどに次元が違う。

「しょーじき、イカレてるとしか思えないわね」

 何気ない風を装ってはいるが、そういうリディアの表情もどこか強ばっている。

「でも・・・賭けても良いけど、あの馬鹿は自分が異常で特別だとは思ってないわ。単純に、できるからやってるだけのことなの」
「だから自称 “ただの旅人” か。あんなん、まともな旅人なんかじゃねーってのに」

 あっはっはと、ギルガメッシュは愉快そうに笑う。
 バッツの次元を越えた強さを前に緊迫する面々の中で、ギルガメッシュだけが普段の調子を崩していなかった。

(こいつもこいつで油断ならないヤツですよね・・・)

 内心思いながら、ロイドは再三クラウドの腕を掴もうとする。

「さあ、こんなところでのんびり話している場合じゃないですよ! いい加減退かないと」
「く・・・・・・っ!」

 そしてクラウドはまたロイドの腕をふりほどくと、セフィロスに向かって絶叫する。

「なにをふざけているセフィロス! お前の強さはそんなものじゃないだろう! お前は・・・お前は最強のソルジャーなんだろうがッ!」
「・・・って、おいおい。お前、どっちの味方だよ?」

 呆れた声でギルガメッシュが言うが、クラウドは無視して尚も叫ぶ。

「本気を出せセフィロス! 本気で・・・戦えーーーーーーッ!」
「ッ!」

 クラウドの絶叫に、セフィロスが反応する。
 後ろに跳躍して、バッツと間合いを取った。

「お? なんだなんだ?」

 いきなり行動を変えたセフィロスに、バッツは閉じていた目を開く。
 なにをする気なのかと見ていると―――

「オ・・・オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 今まで一言も言葉を発さなかったセフィロスが唐突に吼えた。
 そして刀を大きく振り上げて、バッツに向かって振り下ろす!
 セフィロスの長刀でも届かない間合い―――しかし、振り下ろし様に生まれた衝撃波がバッツに向かって突き進む!

 それはセフィロスの渾身の一撃だ。
 だが、バッツにとっては避けるに造作もない攻撃。
 当然、バッツはそれを避けようとして―――不意にその足が止まる。

「ちいっ!」

 初めてバッツの表情に焦りが生まれ、舌打ちとともに腰を低く落とし、腰の鞘にエクスカリバーを納めて構える。
 そして、迫り来る衝撃波に向かって、鞘から剣を抜き放つ!

 

 居合い斬り

 

 バッツの居合いと衝撃波がぶつかり合う!
 剣が衝撃波を断ち切るが、完全には相殺できない。

 余波がバッツに衝突し、バッツの身体はあっさりと吹き飛ばされた―――

 

 

 


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