アンコール・ワット 第一回廊

                                    2013/01/30


              「乳海攪拌」による天地創造

 芸術的完成度のきわめて高い作品ですね。

 感心しました。


 では、皆様ご機嫌よう。

 ここにはいろいろの事件や詳細が取り扱われている。:上方には、空を飛ぶインドラ(雷神)が山の頂を安定させようとしており、その一方、ヴィシュヌ神の円盤の近くには、象「アイラヴァータ」と馬「ウッチャイスラヴァス」の小さな彫像が見える。これらは、アプサラと同じように、両方とも撹拌によって創造されたものである。注目すべきはヴィシュヌ神を取り巻く領域が改変させられて不完全になっていることである。両側のラヴァーナとハヌマンの存在はまったく不自然で、もともとの伝説には入っていない。クメール人達は古代ヴェーダ伝説とラーマーヤナの登場人物を結び付けて表現したのだ。

 北側に歩いていくと、88人の神々がナーガの胴体を反対方向に引張っている。尻尾のところで巨大なハヌマン(猿)が指揮をとっている。浅浮彫の最後の5mには神々の軍隊が描かれている。

宇宙の海は大嵐に巻き込まれた海の生物の渦巻く集団として表現されている。すべてはナーガの二番目の描写によって取り囲まれる。ナーガは大洋の海底に平たく横たわり、その多頭は最左端で持ち上がっている。上空には、この過程の一部として創り出された多数のアプサラ(天女)が飛んでいる。

 最初の5mには、阿修羅達の軍隊が馬と象を連れて整列している。;この直後に撹拌作業が開始される。最初に目にするのは、五つの頭をもった巨大な蛇「ヴァスキ」を抱える巨大な阿修羅「ラヴァナ」である。この「ラヴァナ」はたくさんの頭をもっている。彼の次には92人の阿修羅達のチームが一丸となって、蛇の身体を引張っている。

 ここでは、バーガヴァータ・プラーナ(Bhagavata-Purana)を原典とするこの偉大な天地創造神話が、49mもの長さのパネルに壮麗に展開される。曼荼羅山を取巻いている巨大な蛇「ヴァスキ」の胴体をお互いに反対側から引っ張ることにより、神々と阿修羅達は千年もかけて山を回転させ、宇宙の海-乳海-を撹拌している。こうして不滅の万能薬であるアムリタを作ろうとしているのだ。この物語では、神々と阿修羅達との共同歩調は、アムリタが生産されはじめるや否や、壊れてしまう。神々はその約束にもとづいて阿修羅達にアムリタの半分をあたえようとするが、阿修羅達はそれを盗もうとする。しかし、この場面で示されるのは、実際の撹拌作業である。

写真:たくさんの頭をもつ阿修羅「ラヴァナ」

画像五つの頭をもった巨大な蛇「ヴァスキ」を抱える巨大な阿修羅「ラヴァナ」

東面南側にある

ヒンドゥー神話の「乳海攪拌」

写真:アンコール・ワットの建物の外に作られた集会場?

写真:神々の軍隊

写真:大嵐に巻き込まれ撹拌される宇宙の姿2−撹拌が激しくなった。

写真:大嵐に巻き込まれ撹拌される宇宙の姿1

写真:
回廊外壁に彫刻されたヴィシュヌ神の化身「アヴァター」

スーリヤヴァルマン二世はこのヒンズー寺院をヴィシュヌ神に奉納した。
ヴィシュヌ神は地上に現れるときは10の化身の姿となる。

写真:巨大な蛇「ヴァスキ」を引張る神々

 進んで行くと、多様な海洋生物をリアルに神秘的に見ることができる。多種類の魚のなかには、ワニや竜、蛇や亀も含まれている。このパネルの中央部分に近くなると、撹拌が激しくなって、魚類の多くはちぎれて粉々になってしまう。中央部分では、柱のように聳え立つ曼荼羅山で四本の腕をもつヴィシュヌ神が指揮をとっている。下方に描かれる亀は彼の化身「カルマ」である。「カルマ」は山が回転しつつ海面下に沈みいくのを支えている。

写真:撹拌で創造されたアプサラ

写真:アンコールワットの日の出

画像指揮をとっているハヌマン(猿)

画像
曼荼羅山で指揮をとる四本腕のヴィシュヌ神

写真:第一回廊

写真:阿修羅達

Books Guides “Ancient Angkor” Michael Freeman, Claude Jaques,
River Books, Bangkok 2012 P62

から抜粋して翻訳)