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Fuga a 3 Soggetti Tovey補完版

作曲家、ピアニストとしても知られるイギリスの音楽学者
トーヴィ Tovey, D.F.(1875-1940)は、リーマン同様
フーガの技法の編集・出版(1931年)を手がけており、
その中で未完フーガを自ら補完しています。

トーヴィは補完したフーガのタイトルをContrapunctus XIV
Fuga a 4 soggetti contrapunto al roverscio としています。
この曲が曲集中XIV(14)番目であるという考えは、
後に広く受け入れられていくことになります。

更にトーヴィは、バッハのいわゆる「個人略伝」(死亡記事)にある
「4つの主題を含み、後に転回される最終フーガ」という説明を
独自に解釈し、4つの主題による鏡像フーガも作り上げています。

以上の2曲について、それぞれご紹介します。


補完された"Contrapunctus XIV"

演奏は第3主題の呈示部からです。

中断部以降、反行形を交えて3主題の結合を実施し、
同じく反行形を交えた4主題の結合へと続きます。
基本主題の呈示部はありません。

小節
内容
小節数
1-113
第1主題の呈示
113
114-192
第2主題の呈示
2主題の結合
79
193-262
第3主題の呈示
3主題の結合
70
263-317
4主題の結合
55

リーマンらと同様、第1主題には
しばしば12度の2重対位法が用いられます。
下の箇所では3主題を反行形にした上、
12度の2重対位法も用いています。


主題を青い音符で示しました。
アルトの第1主題は5度下(4度上)に移されています。

4主題の結合においても2重対位法が用いられます。


主題を青い音符で示しました。
ソプラノの第1主題は5度上(4度下)に移されています。

4主題の結合は反行形を交えて数回繰り返されます。
曲は最後に2声部追加され、6声部で終了します。



この補完版はピアノ用の楽譜も出版されており、
本人演奏による録音も残っています。


4つの主題による鏡像フーガ
正置形
反行形

トーヴィはこれを Final invertible Fugue と呼んでおり、
個人略伝にある最終フーガに当たるものとして創作しています。

小節
内容
小節数
1-16
第1主題の呈示
16
17-38
第1・第2主題の呈示
22
39-46
第3主題の呈示
(縮小形に始まる)
8
47-62
第3・第4主題の呈示
16
63-67
第2・第3主題の縮小形呈示
5
68-96
4主題の結合、コーダ
29

以下、曲の説明は正置形のみとします。

第1主題は単独の呈示部を持ち、対主題が伴います。


4小節〜の上声が対主題です。

第2主題は b a c h の音列に始まります。
最初は第1主題に伴って現れます。


第2主題を青い音符で示しました。
ここでは第1主題が反行形になっています。

第3主題は基本主題の変形です。
縮小形を示した後に導入されます。


第3主題とその縮小形を青い音符で示しました。
43小節〜のバスが原形、その他は縮小形です。

第4主題は第3主題に伴って現れます。


第4主題を青い音符で示しました。

4主題の結合の前に、第2・第3主題の縮小形が示されます。


第2・第3主題を青い音符で示しました。

68小節以降、4回にわたって4主題が結合されます。
4主題の結合は、正置形、反行形の双方で行われます。


ソプラノから順に、第1、第2、第4、第3主題が示されています。
第1主題の末尾は変形されています。

曲は最後に2声部追加され、6声部で終了します。




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