菊の湯は広々として浴槽が深く、大量の湯が溢れかえっていて、教授のお気に入りの湯となった。なにしろ奥の細道道中の松尾芭蕉の心を捉え、芭蕉はここで八泊もしたというのですから、山中の湯の魅力は昔から圧倒的な威力があったようです。

 年末年始の雑踏がおさまった16日、加賀温泉駅で落ちあい、CANBUSという観光用巡廻バスで山代温泉に入り、まず古総湯で入浴した。この古総湯は山代温泉開湯以来の場所にあって、数年前までは古い鉄筋コンクリート造りの総湯があったのだが、これを取り壊して明治時代初期のスタイルに復元された。

 湯は澄み切っていて柔らかく、湯槽横のタイル張りの湯溜めからかなり熱い湯が常時注ぎ込まれている。すぐ近くの源泉の湯温が60度なのだそうで、源泉の流入量で湯温を調整しているようだ。


   浴後、お隣の総湯(これも新築)に入湯したが、ここは通常の銭湯であった。

 コオロギ(行路危)橋をちらと見物し、今来た道を逆戻りして、小料理屋「けんさん亭」へ11時に入る。

写真:ばん亭。食べかけですが、燻製かものスライス。すばらしく美味。

山 代 ・ 山 中 温 泉

                       2015/01/06&07

 これにて今回の温泉旅行は終了。温泉宿に泊るのではなく、ビジネスホテルに泊るというアイデアは現代人感覚で、とてもよかったです。

 ただ、今回から自動車を使わなくしたので、霙が降るなかを徒歩での漫遊ということになり、慣れていないからひどく疲れました。自動車運転をもうやめようかと思っているのです。自分の耄碌度を自覚しはじめたのです。

 では皆様、ご機嫌よう。

画像:山中温泉縁起絵巻

写真:のど黒。教授のお好み。値段が高い。私にはこの魚の美味しさがわからない。

画像:けんさん亭

菊の湯からコオロギ橋までをブラブラ散歩する。途中、「町人旅人亭」で「かに汁大鍋」をやっていたので¥200で味噌汁をいただく。美味しかったですよ。

写真:かに汁

 なにを食べたかって? のど黒、刺身盛り合わせ、牡蛎味噌鍋、かれい一夜干し、牡蛎フライなど。

チェックインしたAPAホテル最上階に大浴場が設置されていたので本日三回目の入浴をした。一角にサウナまで設えてあったので久し振りに15分間発汗し、冷え切っていた身体を温めた。

夕食は「ばん亭」で美味しい鴨料理をいただいた。最近数日で鴨が六羽獲れましたので今日は「坂網鴨」です、とおかみからの説明があった。

翌日17日、JRで一駅加賀温泉駅まで移動し、CANBUSで山中温泉に乗り込む。

画像:色絵百花手唐人物図大平鉢 古九谷

浴後、タクシーで大聖寺に移動し、駅前のAPAホテルに荷物を置き、九谷焼美術館を見学した。通常の美術館よりも格段に美的センスがあふれていて、展示されていた販売用の器もすばらしく、買いたいと思わせる作品が何点かあった。この鄙に稀な美術館はお勧めです。

 こういう訳で、まず山代温泉の古総湯、総湯で入浴し、次に大聖寺に移り、九谷焼美術館を見てから「ばん亭」で鴨を食べ、翌日は山中温泉の菊の湯で入浴しよう、ということになった。

画像

紙本著色温泉寺縁起図

所 在 地   山代温泉
所 有 者   薬王院温泉寺
指定年月日  昭和54823

 当該資料は、嘉永5年(1852)に小嶋春晁によって描かれた温泉寺の由来絵図である。
 この縁起は山代温泉の発見から始まり、行基による一宇の建立、明覚上人による七堂伽藍の建立など、温泉寺の由来とともに、山代温泉の変遷も見ることができる。画面左下には江戸時代後期の山代湯の曲輪の繁栄が伺える貴重な資料である。

画像:上の「薬王院の温泉寺縁起図」左下部分
真ん中の広場中央に見えるのが江戸時代末期の総湯である。

 そう決めたら、1224NHKテレビで大聖寺の坂網鴨猟が放映された。坂網猟の猟師は老齢化が進んだので、技術の途絶を憂いた「ばん亭」の若主人が自分みずから猟師になった、という趣旨の内容だった。

 宮内庁の鴨場(埼玉県)と新浜鴨場(千葉県)で捕る鴨は、食べないで放鳥するから、鴨猟で捕る鴨を食べられるのは日本では多分大聖寺だけだろう。

写真:山代温泉古総湯。八角形の囲いが湯溜め。

 私がその人柄の故におおいに徳としている友人は、名古屋大学名誉教授なのであるが、今回は山中・山代温泉に行ってみたいと仰有るので、この地方は冬の期間は寒くてみじめな天気ですが、しかし食事は美味しい。蟹も旨いけれど、冬しか食べられないものに鴨がある。加賀市郊外の鴨池に飛来している天然鴨を坂網を使ってとるのだが、狩猟の期間は11月中頃から2月中頃までしかない・・・・と説明したら、是非その鴨を食べたいと仰有るので早速に「ばん亭」の予約をとった。

画像:坂網猟

画像:菊の湯 足湯の天井部分から

写真:食べかけですが、カレイの一夜干し。とても繊細な味で、私好み。

画像:菊の湯

写真:牡蛎の味噌煮。素晴らしく美味しいが、味が濃いのでご飯が進む。

写真:朝10時過ぎなのだが、平日でもあり、人通りのほとんどない山中の町

画像:九谷焼美術館内部

画像:古総湯内に掲示されていた明治27年の古総湯スケッチ。当時は男女浴槽間を出入りできたようだ。