パターンあやとりの世界


第3章:三本指パターンあやとりにおける様々な装飾処理・終了処理

1.「外側」と「内側」

 終了処理として汎用的でよく使われる「親指と小指を取り合う処理」について説明する前に、新しい用語を導入します。

 親指と小指のことを外側の指、人差し指・中指・薬指のことを内側の指と呼びます。

Fig.3-11a:外側の指(親指・小指)と内側の指(人差し指・中指・薬指)

 これは手の立場に立って考えたときの呼び名です。これまでは全て「自分の身体」を基準として糸の呼び名や操作を記述してきていました。

Fig.3-11b:手を基準としたときの「外側」「内側」

 例えば、「小指で親指の向こうの糸を取る」という操作を考えてみましょう。

Fig.3-11c:親指の向こうの糸とは

 誰かにあやとりの取り方を説明するときに「小指で親指の向こうの糸を取って」と言うと、自分の身体から見ての「向こう側の糸」ではなくて、動作の主体である小指の立場になって、小指から見て親指の向こう側の糸(=親指の手前の糸)を取る、という操作をする人が多いと思います。(認知科学的に非常に興味深いです。) これはごく自然な反応で、「常に身体の座標系で考える」ほうが不自然なのです。 こういった誤解がないように、これまでのページではあやとりの糸や動作を記述するときには全て身体座標系で、身体を基準として向こうとか手前とか呼んできました。

 もちろんこれで誤解なく記述できるので素晴らしいのですが、特にパターンあやとりの場合、対称性のある操作をしたくなることが多いので、手やパターンを基準とした呼び方を導入できると記述が簡潔になったり手順が覚えやすくなったりしてとても都合が良いのです。そこでここで(手やパターンを基準とした)「外側」「内側」(中側)という言葉を導入します。

例えば、以下の2つは同じ操作を示しています。

さらに、以下の2つも同じです。

 今までの記述の仕方が上、外側・内側という言葉を使ったものが下の表現です。下の表現のほうが簡潔で意味や目的がわかりやすいと思います。

 親指と小指を1回転ひねる場合の4通りの方向の組み合わせを図示してみました。

Fig.3-11d:親指・小指をひねる方向の4パターンの呼び分け

 次のページではこの用語を活用して、「親指と小指を取り合う操作」による終了処理を解説します。

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2021.05.05
長谷川 浩(あそびをせんとや)


(c)2021 長谷川 浩
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