パターンあやとりの世界


第2章:三本指パターンあやとりにおける様々な開始処理・継続処理

2.「ナウルの太陽」の仲間

2-1.「ナウルの太陽」と「逆ナウルの太陽」 [継続処理]

 「太陽」と呼ばれる伝承作品とおなじかたちのあやとりは世界各地でみられるのだそうです。名前や取り方が違っていても出来上がりは全く同じだったり、一見同じに見えて糸の掛かり方が違っていたりするものがあります。

 下の左の写真はナウルの太陽を取ってカロリン展開で仕上げたものです。右はその射影図で、平面に投影して重なり具合がわかるように図示したものです。写真のように糸をピンと張ると二重のダイヤ型になりますが、少し緩めると丸いかたちになります。

Fig.2-21a:ナウルの太陽(カロリン展開) Fig.2-21b:ナウルの太陽の射影図

 この「ナウルの太陽」は第一章のこちらに取り方を書きましたが、このページにも取り方を後で載せておきます。

 「ナウルの太陽」は「人差し指の構え」もしくは「中指の構え」から始めることができますので、開始処理ではなく継続処理です。何度も繰り返して操作することができます。

 この「ナウルの太陽」のパターンは一見上下左右に対称に見えますが、上の射影図をよく見てみると、重なり具合は対称ではありません。なので、前後を逆に取ると異なったパターンができます。通常のナウルの太陽を「正ナウルの太陽」、前後を逆に取ったものを「逆ナウルの太陽」と呼んで、取り方を並べて比べてみましょう。比べやすいように「中指の構え」から取ることにします。(中指をすべて人差し指と読み替えていただいてもかまいません。)

「正ナウルの太陽」 「逆ナウルの太陽」
  1. 中指の構え
  2. 親指で中指の向こうの糸を取る
  3. 中指で親指向こうの糸を取る
  4. 親指の2つの輪を外す
  5. 親指を中指の輪に上から入れ、下から小指向こうの糸を取る
    これは少し取りにくい
  6. 小指の輪を外す
  7. 中指の上の輪を向こうへ半回転ひねって小指に移す
  1. 中指の構え
  2. 小指で中指の手前の糸を取る
  3. 中指で小指手前の糸を取る
  4. 小指の2つの輪を外す
  5. 小指を中指の輪に上から入れ、下から親指の手前の糸を取る
     薬指を添えると良い
  6. 親指の輪を外す
  7. 中指の上の輪を手前へ半回転ひねって親指に移す

 いかがでしょうか。知っているあやとり作品をこのように前後を逆に取ってみると、頭と指の良い訓練になります。どの3本の指でも、どちら向きでも取れるようになっておくと後々便利です。



このように前後を逆に取ることによって出来上がりのパターンをひっくり返すという手法は、たいへん見事な伝承あやとり作品の「ライアの実・ライアの花」で用いられています。

Fig.2-23a:ライアの実 Fig.2-23b:ライアの花

 これは、「ライアの実」のほうは比較的取りやすいのですが、逆の「ライアの花」はかなり難しいです。小指を親指のかわりにしようとするとかなり無理があるのです。他の指のサポートが必須です。



 「正ナウルの太陽」と「逆ナウルの太陽」を比べるとパッと見で区別がつきませんが、何らかの3本指のパターンに対して「正ナウルの太陽」と「逆ナウルの太陽」の継続処理を行うと、結果がまるで違ってくることがあるのです。最も簡単な例として、「正ナウルの太陽」を取った後で「正ナウルの太陽」「逆ナウルの太陽」をそれぞれやってみましょう。結果はこんな風になりました。

Fig.2-24a:「正ナウルの太陽」→「ナウルの太陽」 Fig.2-24b:「正ナウルの太陽」→「ナウルの太陽」

 普通の「正ナウルの太陽」が取れるようになったら、ぜひ「逆ナウルの太陽」も取れるようになってください。それだけで作れるパターンが倍増します。


2-2.「ガイアナの星」[開始処理]

 ガイアナの「星」という名前の伝承あやとり作品があります。これは「ナウルの太陽」とほとんど区別がつかないのですが、糸のかかり方が違います。射影図で比べてみましょう。

Fig.2-25b:ガイアナの星の射影図 Fig.2-21b:ナウルの太陽の射影図

 この2つは糸の交差の仕方が明らかに異なります。ナウルの太陽のほうは、親指(手前側)の輪の両端の糸は最初の交差で両方とも上、小指の輪の両端の糸は最初の交差でどちらも下になっていますが、ガイアナの星のほうは親指の輪の両端の糸は、最初の交差で片方は上、もう片方は下になっています。

Fig.2-25a:ガイアナの星
  1. ひねりのある人差し指の構え
    • 始めの構えから人差し指でひねって取る
      1. はじめの構え(親指・小指に糸をかける)
      2. 右人差し指で左掌の糸を上から下・手前にひねって取る
      3. 左人差し指で右手の人差し指の輪の中から右掌の糸を上から下・手前にひねって取る
    • もしくは
    • 普通に人差し指で掌の糸を取ってからひねる
      1. はじめの構え(親指・小指に糸をかける)
      2. 右人差し指で左掌の糸を取る
      3. 右人差し指の輪を向こうへ半回転ひねる
      4. 左人差し指で右手の人差し指の輪の中から右掌の糸を取る
      5. 左人差し指の輪を向こうへ半回転ひねる
  2. 親指の輪を人差し指の輪の中からつまんで外し、親指に掛け直す
  3. 人差し指の輪を親指の輪の中からつまんで外し、人差し指に掛け直す
  4. 小指の輪を人差し指の輪の中からつまんで外し、小指に掛け直す

 普通に「人差し指の構え」を取ってから両人差し指の輪を向こうに半回転ひねるのではダメです。後から取るほうの人差し指は、必ず「ひねった後」の輪を通さなければなりません。

 実はガイアナの星にも「正」と「逆」があります。5つの輪の開始処理や6つの輪の開始処理ではこのガイアナの星のテクニックは大変有用なのですが、その時にまた説明することにしましょう。


2-3.「パプアニューギニアの亀」の途中まで [開始処理]

 ナウルの太陽の仲間のご紹介の最後に、「パプアニューギニアの亀」の途中までの操作をご紹介します。詳しくは次節の「亀の仲間」で説明したいと思います。

Fig.2-26a:パプアニューギニアの亀の途中まで
  1. 両人差し指に糸をかける(1本指の構え)
  2. 親指で人差し指の向こうの糸を取る
  3. 小指で人差し指の手前の糸を取る
    人差し指に糸が巻きついた状態になる
  4. 両手の人差し指の先端を合わせ、指に巻き付いた小さな輪を交換する
    もしくは右人差し指で左人差し指の背の糸を取り、続いて左人差し指で右人差し指の輪の中から右人差し指の背の糸を取る
  5. 親指の輪を人差し指の輪の中からつまんで外し、親指に掛け直す
  6. 小指の輪を人差し指の輪の中からつまんで外し、小指に掛け直す

 このパターンが「ナウルの太陽」や「ガイアナの星」と最も違う点は、人差し指を外して左右に引くと、外した糸は中央の図形のところで止まらずに逆の手のところまで行ってしまうのです。(ちょうど日本の伝承あやとりの「亀・ゴム・飛行機」のゴムのパターンのようになります。)

 「ナウルの太陽」にもちょっとしたアレンジがあって、代表的なのは「人差し指の構え」の後の最初に親指で取る糸を変える、というものがあります。有名な「たくさんの星」という伝承あやとり作品は、人差し指の向こうの糸の代わりに「小指の手前の糸」を取って「ナウルの太陽」を作ってから、「材木運び」の終了処理を行います。(これは第3章の「材木運び」の終了処理のところでご紹介する予定です。)

 「ナウルの太陽」で最初に取る操作を「人差し指の手前の糸の上かつ人差し指の向こうの糸の下から小指手前の糸を取る」とすると、この「パプアニューギニアの亀」の途中のパターンと同様にパターンが真ん中にできない構造になります。

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2021.05.03
長谷川 浩(あそびをせんとや)


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