パターンあやとりの世界


第2章:三本指パターンあやとりにおける様々な開始処理・継続処理

1.人差し指の構え [開始処理]

 基本的な構え(開始処理)で、最もよく使います。Aの構え(Opening A) と呼ばれることもあります。

人差し指の構え
  1. はじめの構え (親指・小指に糸をかける)
  2. 右人差し指で左掌の糸を取る
  3. 左人差し指で右人差し指の輪の中から右掌の糸を取る

 右手を先に取りますが、大部分のあやとり作品において左手を先に取っても結果はほぼ同じになります。

 日本では人差し指のかわりに中指で取り合う構えが使われることが多いそうです。(私も子供のころにそう教わりました。)中指を取り合う場合は「中指の構え」と呼びます。野口広「あやとり」(1973)では「日本の構え」と呼んでいました。3本指の構えは親指・人差し指・小指の場合が多いですが、親指・中指・小指の場合もあります。


 単純な「人差し指の構え」から、指の輪をひねるという装飾処理を加えることで出来上がるあやとり作品ががらりと変わることがあります。

Fig.2-11:全ての指を1回転ひねる

 後ほど説明しますが、ナウル共和国に伝わるあやとりの技法で「エオンガツバボ」という終了処理があります。(第2章7節で取り方を説明しています。)「人差し指の構え」に対してそのままエオンガツバボを施した場合、人差し指だけを1回転ひねってエオンガツバボを行った場合、親指・人差し指・小指の3本の指の輪すべてをそれぞれ1回転ひねってエオンガツバボを行った場合を比較してみます。

Fig.2-12:名前なし Fig.2-13:2羽のメスのクロアジサシ Fig.2-14:テリハボクの花
  1. 人差し指の構え
  2. エオンガツバボ
  1. 人差し指の構え
  2. 人差し指の輪を1回転ひねる
  3. エオンガツバボ
  1. 人差し指の構え
  2. 全ての指の輪を1回転ひねる
  3. エオンガツバボ

 このように、ひねるかひねらないかで出来上がりのパターンが大きく変わるのです。

 対称性の高いパターンあやとりでは、外側の指(親指・小指)をひねるかひねらないか、内側の指(ここでは人差し指)をひねるかひねらないか、で4通りの場合が考えられ、それぞれで結果が違ったりします。さらに、上記の例ではひねる方向を変えても出来上がりは区別ができないですが、ものによってはひねる方向を変えたり半回転にしたりするとまたパターンが変わったりします。

 このように、開始処理は最も簡単な「人差し指の構え」だけしか使わないとしても、「指をひねる」という装飾処理を加えて様々な終了処理を施してみると、それだけでも興味深いパターンをたくさん作ることができます。

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2021.05.01
長谷川 浩(あそびをせんとや)


(c)2021 長谷川 浩
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