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エントロピー

 年末年始休みに、簡単なプログラミングでもして遊ぼうかと思って、以前ちょっと調べていたアブストラクトゲームのルールをいくつか読み返してみました。その中で、この「エントロピー」というゲームがちょっと面白そうだったので、ルールを紹介します。


エントロピーの初期状態
 図 1 

【名 称】 エントロピー(Entropy)

【考案者】 Augustine Carreno (1992)

【人 数】 2人

【準 備】 5×5マスの盤面に、各自のコマを7個ずつ図1のように並べる。駒は将棋やチェスのような区別はなく、全て同じ扱い。これ以外にコマは使わない。ゲーム終了まで、盤面のコマは増えたり減ったりしない。

【目 的】 自分のすべてのコマが、敵のコマのどれかと隣接し、かつ味方のコマとは隣接していない状況になったら勝ち。ただし隣接するとは、縦横斜めの8個の近傍のマスにコマがある状況を言う。

【駒の動き】 全ての駒は、チェスのQueenと同じく、将棋の飛車と角をあわせた動きが可能である。つまり、壁や他のコマにぶつかるまで、縦横斜めに好きなだけ動ける。ただし自分や相手のコマを飛び越したり捕らえたりすることはできない。 また、動くためには条件が1つだけあって、味方のコマと隣接しているコマだけが動ける。

【移動のルール】 敵とも味方ともまったく隣接していないコマを孤立したコマと呼ぶ。自分の手番のとき、自分のコマで孤立したコマがあったら、それを解消しなければならない。もし、ルール上許される動きで解消できない場合は他の動きは許されず、バスしなければならない。 孤立したコマが複数個あった場合、そのすべてを解消できる動き以外は許されない。 逆に、ルール上移動が可能な場合は必ず移動しなければならない。(戦略的なパスは許されない。)

【備 考】  

  • ルール上どちらも動けない状況になって、なおかつどちらも勝利条件を満たしていない場合は引き分けとする。 
  • どちらかの手番でコマが移動した結果、両者が同時に勝利条件を満たした場合も引き分けとする。(動かした側の勝ちではない。)  
  • 自分の手番のとき、コマを移動した結果自分のコマが孤立するような動かし方は許されている。
     (例えば図1の初期状態から、中央C3に移動するとそのコマは孤立してしまうが、そのような動かし方をしてもよい。)

     ○ ○ ○

     要するに、自分のコマをできるだけ盤面にちらばらせて、自分のコマ同士が縦横ナナメに隣り合うことがないようにするゲームです。ただし、どのコマも必ず相手のコマとは接していなければいけないという条件つきです。 別に難しいゲームではないんですが、言葉だけの説明だとわかりにくいので、例を挙げて説明します。

    エントロピーの説明図(その1)
     図 2 : 白番。孤立コマがあるので解消する必要がある。

     図2、次は白の番です。白は座標C5のコマが孤立しているので、自分の手番で孤立を解消してやる必要があります。解消する方法はいろいろあります。たとえばA3からB4へ移動してもいいし、D3からD5へ移動してもいいです。しかし盤面をよく見ると、赤のほうが盤面に広く分散していて勝利は目前です。(赤のB3,C3がそれぞれC2,C4に移動すれば赤の勝ちです。) そこで白としては、赤に手を進めさせないためにA4からC4という手を選択しました。これによって新たに赤のA5が孤立します。赤はこれを解消するためにはB3もしくはC3を動かす必要があります。

     E4をC4に動かしてE5を孤立させる方法もあります。この場合は、次に赤が指せる手が一意に決まる(C3→E4)ので、先読みがしやすいです。

    エントロピーの説明図(その2)
     図 3 : 白番。赤はあと1手で勝ち。 

     図3も白番です。赤は次の手番で青い点線の矢印のように動かすと勝ちになってしまいます。これを防ぐには、B2の白を動かしてしまってC2の赤を白と接しなくさせるしかありません。

     さて、その場合でも、赤はD2→E1と動かすことがルール上許されています。ここでは仮にそのように動かしたとしましょう。その場合、それ以降は赤は一切動かせません。(味方に接しているコマが1つもないため。)あとは白だけがルール上許される動きをしてゆくことになります。 戦略としては、C2の赤のかわりにE1の赤を孤立させて、最終的に図4のような形に持っていければ白の勝ちになります。途中で一度でも赤の勝利条件を満たす状況が生じてしまったら、その時点で白の負けです。

    エントロピーの説明図(その3)
     図 4 : 白の勝ち方。(赤は動けない) 

     図で、1,2,3の番号を入れたコマを動かしていけば白の勝ちですが、間違って最初にB4のコマを動かすと、その時点で赤の勝利条件が満たされるため、赤の勝ちになります。

     注:いくつかのページを調べていると、この図3〜図4の例のような、「自分は動けないんだけれども勝敗は相手次第」という状況を嫌っているルールもあるようです。その場合は、「ともかく自分のコマのどれとも接しなくなったら勝ち」という定義になっているようです。これでは例えば図3の状況では守りようがないということになります。

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    2002.01.12 hhase