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宇宙ステーション

 ロシアの宇宙ステーション“ミール”というのが空から降ってくるそうです。なんでも当初は 3月13日ころという話だったのが一週間ほど延期になって3月20日ころになるそうです。NASA、 アメリカ航空宇宙局というところに こんなページ(注:このリンクはミールが落っこちる2001年3月20日以降は存在しない と思われます)があって、今ミールがどこにいるかを1分ごとに表示してくれています。 (ちなみに上記のページの左上の"J-Track"というボタンから行かれる ページは、 昼夜表示された世界地図の上に複数の人工衛星の軌道と現在位置を表示していて、とても面白いです。)

 そもそも勝手に太平洋に捨てていいんだろうか等はここでは考えないことにして、1週間延期した ことによって日本に破片等が落下する確率が下がったそうです。以前は数千分の一とか言っていたのが、 一億分の一というような数字が出ていました。この数字、どうやって計算したんでしょう? (説明されてもきっとわからないだろうと思いますけど。)

 さて、人工衛星といえば、私はお気に入りのフリーウェアがあります。 Vectorという、フリーウェア・シェアウェアを 多数提供しているサイトからいただいたもので、Windows用なのですが、以下のページにあります。

  • FDT Vector のページ(ver 3.0)
  • 工作と物理のページ 作者の江川直人さんご本人のページ(ver 3.1)
  • FDTのページ  上記のご本人のページのなかのFDTのページ
  •  FDT という名前は Force・Δt なのかな、などと勝手に想像しています。 くわしい説明は作者ご本人のページをご覧いただくとして(江川さんのページは他のコーナーもとても面白いです)、 とりあえずこんなシミュレーションができます。

    fdt01.jpg fdt02.jpg
    図 1-a   図 1-b

     画像を縮小しているため小さくて見難いですが、図1-aの赤い矢印() のように初期値を与えてやると(マウスでドラッグするだけです)、図1-bのように衛星軌道をまわります。 もちろん初速度が小さすぎると地球に落下してしまいますし、大きすぎるとシミュレーションの範囲を 超えてしまいます。(この場合このソフトは画面の縁で折り返します。)

     私はこのソフトの中では「月ロケット」という設定のシミュレーションが好きです。地球と人工衛星 という2つの物体だけだったときには単純な軌道しか描かなかったものが、地球・月・人工衛星の3体 になると、とたんにとても複雑な挙動になるのです。FDTで描いてみたいくつかの軌道の例をご覧ください。

    fdt1.jpg fdt2.jpg
    図 2-a 図 2-b

     図2-aは楕円軌道です。図2-bは8の字の軌道です。いずれも、先ほどの地球と人工衛星だけの場合と 違ってきれいな1本の軌道になっておらず、ねじった帯の中を埋め尽くしてゆくような軌道になっています。 もちろん、特別な軌道として1本の線になっているものもあるはずなんですが、それを見つけるのは、 回っていない独楽を机の上に立てるのと同じくらい難しいです。

     このような安定軌道に乗せるのはなかなか難しくて、適当な初期値を与えると、ロケットはすぐに地球か 月に落下してしまいます。

    fdt3.jpg fdt4.jpg
    図 3-a 図 3-b

     安定な軌道には他のパターンもあって、例えば図3-aがそうです。これは図2-aの楕円の上下をつかんで 引っ張ったような形をしています。。(2人あやとりに「川」というパターンがありますが、それを取る ときに小指で互い違いに引っ張りますよね。あんな感じ。)こういった軌道がすべて安定かというと もちろんそんなことはなくて、例えば図3-bのように、図3-a型の軌道を描きながら最後は地球か月に ぶつかってしまう、というパターンの方がずっと多いです。

     さて、ようやく本題です。このソフトを使って遊んでみましょう。

    問題1
     人工衛星が図のように右上から左下に向かって落下しています。これは最後はどうなるでしょうか? 右の画像をクリックしてください。結末が見られます。見る前に予想してみてください。
  • 周期軌道になる
  • すぐに地球に落ちる
  • 月に落ちる
  • 地球と月と両方の周りを回った後でどちらかに落ちる
    こたえのページ
  • こたえのページへ
    問題2
     地球と月の周りを1回ずつ回り、うまく周期軌道に乗ったように見えるのですが・・・。 さてこのあとどうなるでしょう?
  • 周期軌道を永遠にまわる
  • 地球に落ちる
  • 月に落ちる
    こたえのページ
  • こたえのページへ
    問題3
     今度はどうでしょう?
    こたえのページ
    こたえのページへ

     このFDTというシミュレータ、いじってみているとものすごく楽しくて、あっというまに何時間も 経ってしまいます(いえ、そんなに暇なわけじゃないんですが・・・)。まずは安定な周期軌道を みつけてみましょう。狙った周期軌道を描かせることができるようになっているころには、あなたも 立派にFDTの世界における人工衛星オペレータの資格があるでしょう(笑)。

     そのころには多分あなたも、落下地点が自明でない軌道、つまりまっすぐ地球か月に向かって 落下して衝突しておわり、というような軌道ではなく、上記の問題で出題したような途中を見ていて はらはらするような軌道を設定できるようになっているでしょう。そうしたらパーティでもいいし 宴会でもいい、あなたが出題者となって全員参加型のクイズができます。軌道が地球や月をかすめる たび、歓声が上がり、きっと盛り上がるでしょう・・・。

     とまあ冗談はともかく、とても楽しいソフトです。動かせる環境の方、お勧めします。




    付記

     冒頭のミールの場合、なぜ1週間先になると予測精度が上がるのでしょう? ミールは軌道修正用 ロケットに点火して軌道を変えて落とすのですが、1週間先になると高度が下がっているため、点火 してから着水するまでの軌道の長さが短い分だけ予測しやすいということでしょうか。それとも、点火 高度が低いと、より安全な軌道を選択できるということなのでしょうか。(探せば情報はありそう なんですけど、まあいいや。)


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    mailto:hhase@po10.lcv.ne.jp
    2001.03.10 hhase