限りなく続く緑色の大地。穏やかな風に揺れる淡い色の花を付けた草花達。天には眩しい
程に照り付ける暖かな光、限りなく広がる澄み渡った青空。
ついこの間までこの地に生きる人々を脅かし、恐れさせた瘴気は跡形もない。
人々を脅かしていた瘴気を消し去ったのはオールドラントで唯一の完全同位体である、
ルークとアッシュ彼等の共同作業の成した技である。二人が自らの命と引き換えにとしてまで
救いたかった大地は再び豊かな自然を取り戻した。
数万人と言うレプリカの犠牲の元に訪れた一時の安らぎ。
この先に訪れようとしている更なる危機とした出来事にの事など今は誰も知ることはなかった。
・・・いや知ろうとはしなかった。
レムの塔で大量の第七音素を消費したと思われるルークはジェイドの気遣いもありベルケンド
検査を受ける事になった。検査を受けたあと解析までに時間がかかるからと言われ
メンバーはその間各自自由行動となった。
ルークは一人町の外へと足を伸ばした。魔物に遭う危険性もあるため町からは離れない位置までくると
ふとルークは足を止め空を見上げた。
雲は流れてどこへいくのだろう・・・
見上げた大空を無数の雲が合間を縫って流れている。その様子をみつめながら
ルークは自分の被験者である彼の名を口にした。
―アッシュどこにいるのかな・・・―
雲は彼に似ている気がする。
彼もまた雲の様に同じ場所にに留まることもなく自分の道を歩んでいる。
時に流れに逆らいつつ、奪われた自分の居場所を求め彷徨う・・・自分の存在理由を掴み取るために。
ルークの呟いたその声は誰に届く事もなく自然の音に掻き消された・・・筈だった。
もちろんルークもそのつもりだった誰にも聞かせるつもりなどなかった。
しかし彼には届いてしまった
その声が・・・
完全同位体である彼等の成せる、彼等にしか出来ない「回線」を通して。
無意識のまま更にルークは彼の名を口にした。
―逢いたい・・・アッシュに逢いたい―
レムの塔の後、彼は直ぐにまたどこかへ行ってしまった。
ローレライから宝珠を受け取っていた事に気付かなかった自分の不甲斐無さを誤りたかった。
力不足の自分を助けてくれたお礼を言いたかった。
それなのに誤ることも、お礼を言うことも出来ないままルークは彼の後姿を見送るしか出来なかった。
声をかける事も出来ない位に彼は不機嫌そうに繭をしかめ、ルークの方など一度も見ずその場から
去ってしまったのだ。
理由簡単だ、瘴気を消したあと二人は手を繋ぐ形で倒れこんでいたせいだ。
その事が彼には不愉快きわまりなかったのだろう。
条件反射のようにその腕は払われ、向けられた視線は思わず動きが止まってしまうような
冷たく、怒りに満ちた眼光を放っていた。
そのいつにも増して冷たい態度に胸を締め付けられるような痛みを抑え込むのがルークには精一杯だった。
払われた腕からはジンジンとした痛みを感じる。その手をもう片方の手で包み込んだ。
視界がぼやけるのを感じルークは顔を俯かせた・・・
泣きたい分けではなかった。むしろこんな姿を見せたら益々彼の機嫌が悪くなるであろう事が
分かっている為、今は彼が振り向く事が無いと言う事がせめてもの救いであった。
どうしたらアッシュは俺のことを認めてくれる?
どうしたらお前の苦しみを理解してあげあれる?
どうしたら仲良くなれる?
ルークの密かな願いは澄んだ青空へと消えていった。
ベルケンドへ戻ったルークに過酷とも言える検査結果が待っていた。
「今すぐ入院してください。」
ベルケンド研究所の医師であるシュウに言われた一言。
ルークは目の前が真っ暗になるのを必死に堪えた。
死の宣告
それは未来への夢や希望を失わさせられた一言。
近い未来自分と言う存在はこの世から消えてしまう。
ルークは一瞬その言葉に動揺したものの、それほど驚く事はなかった。
レムの塔で超振動を使った後からなんとなく気付いていた体の異変。
力を使ったあと自分の腕が透けて見えていた事が肯定されただけだった。
そんな自分の体の事よりルーク気がかりなのはアッシュだった。
自分に手を貸して力を使ったアッシュは自分と同じ状態になってはいないだろうか?
彼もまた自分と同じように体に異変が起きていないか不安が頭を過ぎる。
(アッシュは大丈夫なのか?会って確認したい!)
そう考えると気持ちだけは先走り部屋の外へと飛び出していた。
闇雲に走り出した所でアッシュに会える筈もないのだが気持ちだけは先走りしてしまう。
医師シュウの呼びかけにも答えずルークはベルケンドの研究所を後にした。
アッシュ!アッシュ!
ルークとアッシュ、この世界で二人にだけ出来る回線を使おうとルークは神経を集中させた。
もちろんルークからは繋がった事は一度もない。それはルークがレプリカであるが故である。
しかしその位しかアッシュを探す術はルークに持ち合わせてはいなかった。
アッシュ!・・・今どこにいるんだよ
何度も呼びかけてはみるが反応はない。
分かってはいた事ながら自分の劣化さになさけなくなって来る。
「やっぱり駄目か・・・。」
はぁ、とため息を付き肩を落とすとルークはみんなの待つホテルへと足を歩ませた。
どうにかしてアッシュと連絡がつけないかと思うのだが、何も思い付かず彼がまた回線を
繋げてくれるのを待つのが一番早いとルークは思った。
ふとルークはその場に立ち止まり大空を見上げた。
「雲か・・・」
アッシュは雲のようだとルークは思った。
居場所も決めずだたひたすら自らの想いのままに進む雲のようだと・・・
雲の行き先は誰にも分からない。
そしてまた彼の行き先も、彼の居場所も誰にも分からない・・・・
「アッシュ・・・」
ルークは大空を流れる雲を見つめた。
自分の被験者が無事であると事を祈りながら・・・
− 雲は流れて何処へ行く −
えぇ〜続き!・・・すみませんしかもアシュルクとか言いつつルーク→アッシュな一方通行だし、アッシュ出てこないし(汗)
ここから私の思い描く捏造EDまで書きたいなと思ってるので(ED後も書きたいですが)続き物になると思います。
次からはアッシュ出します!てか今回で出したかったのに区切りたい理由が・・・
「雲は流れて何処へ行く」このフレーズで終わらせたかったもので(汗)意味はとくにないんですが、
母に言わせると小さい頃の私が家の窓から空を見上げながらそう言ったらしいです。・・・何を思ってたんでしょうね(苦笑)
気になったフレーズだったので昔の私から拝借させてもらいました!
続き早く書けるといいな・・・