戸
建 住 宅 の 免 震 構 造
戸建住宅において現在最も多く採用されている耐震構造は、強固な構造体で強い揺れをそのまま受け止めて耐えるので、震度5以上の大きな地震では建物自体は壊れなくても、家具や電化製品の倒壊、外壁材等の剥離、設備配管の損傷等は避けられません。そして激しい揺れは冷静な行動を妨げ更に被害を増幅させる危険性もあります。 それと比較して免震構造は、建物と地盤(基礎)を切り離し地震の揺れを建物に伝えないシステムで、震度5を越すような大きな地震の揺れでは約1/3〜1/5程度まで揺れが軽減されるそうです。家具や電化製品の倒壊はほとんどなく、住んでる人は余裕を持って地震に対応できます。 更に、設備配管の損傷等も少なく日常生活に与える影響を最小限に抑えることができ、外壁材等が剥離して非難通路を塞ぐというようなことも避けられますから、まさに理想的な耐震(対震)性能と思われることでしょう。 |
戸建住宅における免震構造
元々、免震構造や制震構造は災害時に防災拠点となる公共建物などで採用される特殊工法で戸建住宅での採用例はまだまだ少ないのが現状ですが、最近では差別化を図り免震構造を採用したマンションやハウスメーカー等の取り組みにより免震構造への関心が高められ、機械メーカー・建材メーカー等でも戸建住宅向けの免震構造を商品化し、免震装置自体の価格も従来の半分程度(1階の建築面積が20坪程度ですと約200万円程)まで抑えられるようになったことから新築時に免震構造の採用を検討する方が徐々に増えつつあるようです。 |
免震構造の制約
究極の耐震(対震)性能と思える免震構造ですが、いくつかの制約(デメリット)があります。 これらのデメリットとメリットを総合的に考え、自分の家造りに本当に免震構造が適しているかどうか判断することが大事です |
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1. | 地盤に対する制約 | |||
地盤の揺れを伝えにくくするのが免震構造ですから、地盤が破壊されてはその力を発揮することができません。そこで、まず最初に詳細な地盤調査が必要になります。 軟弱地盤の場合免震装置の設置は不可、普通地盤でも液状化の恐れのある場は地盤改良を行うことが必須条件となります。 |
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2. | 平面プランに対する制約 | |||
下部構造と免震層の負担を軽減するために、1階と2階のバランスを良くする必要があり(できれば総2階が望ましい)、建物の形が複雑になると免震装置の個数が増えてコストアップに繋がるため、できるだけシンプルな形が適しています |
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3. | 敷地に対する制約 | |||
免震装置の上部構造は地震の揺れに追従しないよう水平に30〜40cm程度(メーカーにより異なる)動くため、屋外機や給湯器などの外部設備機器も免震装置上に設置し、電気配線や設備配管に支障がないようにフレキシブル管などを使って対処します。そして設置建物や外部設備機器の外面から周囲の建物や外構までのクリアランスを50cm以上確保しなければなりませんので狭い敷地を有効に利用したい方には不向きと言えます。 |
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4. | コスト | |||
免震住宅の上部構造(土台より上)は耐震構造で造らないといけないので、耐震構造の費用に上乗せして免震構造の費用がかかることになります。前述の通り従来の半分程度になったとは言え、建築面積20坪程度の場合、免震装置約200万円に加え免震装置の設計料、施工費等含めるとさらに100万円程、プランが複雑であれば更に割り増し、そして定期的なメンテナンスも必要になります。また地盤調査の結果によっては地盤改良等が必要となり予想外の費用がかかることもありますから、事前に専門家に相談をすることをお勧めします。 |
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5. | その他 | |||
免震構造では上部構造と下部構造の間に免震層が入るため、建物の高さは通常の建物より高くなります。そのため高さ制限や斜線制限の厳しい場所では天井高を低くする等の工夫が必要になりこともあります。 また、現状では免震住宅の耐震等級は「0等級」のため、住宅性能表示制度は受けられせん。 |
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専門家に相談しましょう
免震住宅の安全性は誰もが認めるところですが、全ての住宅に適しているとは言えないことがお分かりいただけたでしょうか? 住宅の耐震性能を考える時は、まず詳細な地盤調査を行い、その土地で充分な耐震(対震)性能を発揮できる構造は何か、間取りやプランにあった構造は何か、コストや制約に見合う耐震(対震)性能かを専門家と相談をして決めることが大切です。 |
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