MASUTER CROSS ANOTHER
最終話『原初の時よりの定め』
一種の沈黙とも取れる空間が、俺の周りを覆う。
今、俺とインフィニティの間にはこの世界の命運全てがかかっていた。
俺は、別に世界を守るだとか勇者になるだとか……そんな事、どうでもいい。
ただ……俺の大切な人たちを守りたいだけだった。
だから、ここにいる。
そして奴を倒そうと思えたのだ。
だから、俺はここまで強くなれた。
そしていかな絶望的な状況でも諦めない心を手に入れる事が出来た。
だから、俺はけして諦めない……どんな事があっても!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
ぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
俺は突如全てを吐き出すかのように叫んだ。
すさまじいまでの力の本流が辺り一体全てを覆うかのように包み込む。
対するインフィニティもまたおのれを高めんとしていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ずがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
二人の間で、力の本流が起きる。
それだけで世界が崩壊するほどの力の葛藤が起きていた。
こいつ相手に……小技は通じない!!ならば、俺の奥の手を使うのみ!!
そう思いながら、常に使っている"魔闘鬼神流"の構えを解き俺は、ある流派の構えをする。
それは……
「行くぞインフィニティ!!」
「ククク……来るがいい、漆黒の騎士魔龍 銀よ!!」
ダッと駆け出す俺。
それを迎え撃つインフィニティ。
距離が……時がスローモーションの如く感じられた。
そして、俺は俺に出来うる最強の技を放った!!
「破邪龍聖流 奥義 天魔滅殺轟昇剣!!」
カァァァァァァァァァァァ!!
カオスブレードが大いなる輝きを灯す!!
俺はそのまま奴に振り落とした!!
ガァァァァァァァアァァァ!!ボガァァァァァァァァァァァン!!
すさまじい爆発が起きて緒俺自身もその爆発に巻き込まれ数キロ吹き飛ばされた。
だが、そこで倒れているわけにも行かない。
なぜなら、奴の生死を確認していないからだ。
俺は、かっと目を見開き煙の起こっている当たりを見回す。
しかし、煙のせいか何も見えない。
――――頼む……
俺は、心から願った。
――――これで、終わってくれ!!
だが、俺の願いは天には届かない。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
ボグゥ!!ガァン!!
奴の放った光の球が俺の技を押し返し消滅させ俺のほうへと向かってくる!!
「ぐっ!!」
俺は、その一撃を何とか剣で受け止めた。
ギシィ……ビシィ……
件に亀裂が入る。
もう少し……もう少し持ってくれ!!
カオス・ブレードが悲鳴を上げている。
くそっ!!
バリィン!!
そして、カオスブレードの刃は音を立てて消滅した……
「なっ!?」
俺は、自らの剣の現状に驚きの声を上げた。
当たり前だ!!カオスブレードが折れた……いや、刃が消滅したのだ!!
し、信じられない!!
「ククク……これまでのようだな、魔龍 銀」
その言葉と共に俺に近づいてくるインフィニティ。
僅かに動揺が俺の中に駆け抜ける。
奴の足音一歩一歩が妙に多き聞く聞こえる。
俺は奴に…とどか……ない、のか……?……今だに…!
俺の中で悲痛な声が通り過ぎる……
駄目だ、桁が違いすぎる……
俺の中で絶望が走りかけた……が、そのとき俺は彼女にかけられたこんな言葉を思い出した。
『あきらめないで!!』
かつて……そう、フィセアが生きていた時代、彼女は俺にいつもその言葉をかけてくれた。
そうだ……ったな。
俺は、自分を奮い立たせて心を起き上がらせる。
「……ほう?」
インフィニティは俺の瞳に今だに闘争本能があることに感心したようだ。
「……負けられないんだよぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
俺は、自分に言い聞かせるように大声で叫んだ!!
大きく手を振り全てを振り払うように叫ぶ……!!
俺の瞳には爛々と熱く闘志が燃え盛っていた。
その時、一条の光が俺を包み込んだ!!
二人の男が荒野の中たたずんでいた。
……いや、ここは荒野として認識できるような場所ではなかった。
あたりは歪み既に空間として形成されているかすら怪しい。
「……!」
「……!」
二人のうちシンジが急に倒れこんだ、腹には間違えなく大ダメージであろう程の傷を追っている。
「ぐっ!がはっ……ごほっ……!」
シンジの口から血が漏れる……赤い赤い血が。
絶体絶命のピンチかと思えるその場面なのに……シンジの表情がふと緩んだ。
そして、シンジはスローモーションな動きをしながらにやりと笑い後ろを振り向く。
シンジの後ろには今だに背中を見せながら剣を放った格好をしているブレイクがいた。
だが、その姿は静かに消えていこうとしている……
「流石だな……私は一足先に消滅しよう……我が主の願いが、漆黒の騎士に届くように……!」
「!!…どう……い…う…!?」
だが、シンジの意識が持ったのもそこまでだった、いくらなんでもダメージがでかかったようだ。
彼の意識はそこで暗い闇の中に沈んでいった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
俺は、大きく叫びながら片手を天にかざした!!
そうすれば……何かが起こるような気がしたのだ……
そして、それは半ば予測どおりであり、そして、予測外のことがおきた。
いささか矛盾しているが、その表現が一番正しいだろう。
一振りの剣が俺の元へと降り立ってきた。
その剣は静かに俺に語りかけてきた。
『漆黒の騎士よ、我は汝なり』
(お前は……俺!?)
静かに語りかけてきたその剣に、俺は、困惑気味の声を出す……いや、精神に語りかける。
「おおっ……」
インフィニティが驚きの声をあげるが気にしてられない。
『いや、正確に言えば主の力の集合体』
(俺の……力?)
ふとした疑問が頭の中に浮かんだがそれをすぐにかき消す、なぜなら、その声が言葉を言ったのだ……
『主よ、我が名を呼べ』
俺の前に現れた一見普通の一振りの剣を取る。
その刀は急速に光を衰えさせた……が、内面で光っている力はすさまじい者だと理解できた。
そして、俺は叫んだ!!頭に浮かんできたその単語を叫びながら!!
「何だかしらないが……力を貸せ!!俺の力"アルティメット・ブレード"!!」
『主よ!我が力を!!』
すさまじい力が俺の中に流れ込んでくるのが分かる……
そして、壊れたはずのカオス・ブレードが光りだす!!
二本の剣の光が強くなる!対極の光を放つ剣を構えながら走り出す!!
「……ようやっと、ここまで来たか……」
嬉しそうな声でそう言うインフィニティに俺は……不可思議な疑問を持った。
何かがおかしい……
「インフィニティ……お前の目的は……!」
「ふっ!!」
ガキィン!!
俺の言おうとした事を遮るが如く奴は俺に攻撃を仕掛けてきた。
慌てて防ぐ俺!先ほど感じたまでとは行かないがすさまじい力がかかっているのが分かる!!
(!?)
その時、俺自身の体の変調にも気付いた!そう、奴の攻撃を受けても何とか受けられるのである……
先程までの俺では受ける事すらままならなかっただろう……だが!それが、受けられると言う事は……
(この剣の力なのか……!?)
奇妙な感覚に捕らわれながらも剣を振るう!!二本の剣が光を放ちダイレクトなアタックを可能とする!!
インフィニティはあっけなく俺の攻撃に吹き飛んだ……そう、余りにも呆気なく……
「ぐぅ……」
「嘘だろ……」
インフィニティがダメージを負っているという現実が余りにも信じられない……だが……
(……信じられないけど、こいつなら……インフィニティを倒せる!!)
俺は、アルティメットブレードを大きく振り上げると、最大の力をこめて振り払った!!
衝撃波がおきて全てを薙ぎとばす!!
それは、インフィニティに迷うことなく真っ直ぐに向かっていく。
「ちぃっ!」
しかし、その攻撃はインフィニティ相手には正直すぎた。
真っ直ぐ行く軌道の攻撃なんてあっさりと当然の如くかわせるだろう。
だが、俺とてじっとしている気はなさんざらない。
インフィニティがかわす方向にすぐにジャンプしてインフィニティに剣を振るう!!
その攻撃すらも間一髪で避けて地面を転がる。
「調子に……乗るなぁ!!」
ズガァァァァァァァン!!
「ぐぅぅぅぅぅ!!」
半端じゃない衝撃が俺とアルティメット・ブレードに伝わる!!
だが、耐え切れない物ではない!!
そう、判断すると俺は即座に剣を振り下ろす!!
ズガガガガガガガガガガァァァァァァッッッッ!!
大地が割れ空気が裂ける。
インフィニティは、その攻撃の軌道をそらす事によってかわした。
だが、俺自身はその攻撃に乗じて奴の目の前にいる!!
「なにっ!」
奴の驚きの声が轟く。
だが、俺はそんな事に気を取られるような男ではない!!
……気を取られている余裕もないしな。
静かに呼吸を整え、俺は、一瞬にして吐き出すように言葉を叫ぶ!!
内面に抑えていた力を最大限に発揮しながら!!
「破邪龍聖流 奥義 四気降臨斬!!【はじゃりゅうせいりゅう おうぎ しきこうりんざん】
触れずに、神クラスの者が近づいただけでも消滅してしまうような強大なエネルギーがインフィニティを襲う!!
「ぐあっ!がぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
すさまじい奔流はインフィニティを包み込んだ!!
インフィニティは、余りの激痛に悲鳴をあげてしまっている。
先ほど聞かなかった……奥義クラスの技が…効いている……!
つまりそれは……まだ、勝てるチャンスがあるということだ!!
「龍魔滅翔!!」
インフィニティが高らかに叫ぶ……
その手には黒い剣が握られていた……遂に、この位置まで俺は上ってこれたのだ。
奴が剣を出した時……それは、相手が自分と対等に多々かる者と判断した時なのだ。
……そして、俺は遂に認められた。
「カオスよ……いや、魔龍 銀よっ!!今こそ私も本気になろう!!」
そう言い、ザッと剣を構えた。
俺自身も、二本の剣を構える……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
長い……余りにも長い沈黙が辺りを支配する。
現状では、お互い一歩も動けなかった……動いた方が、やられる。
さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……
ザザァ………
風が通り過ぎる……波の音が妙に大きく聞こえる……
しかし、一歩も動かない……
まだだ……まだだ……まだだ……まだだ……!
頭の中で同じ言葉が反芻する。
頭の中で響かせているこの言葉も、随分と大声のような気がする……
さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
と、突然空気の流れが変わった!!
今まで、そよ風だったのがいきなり凄まじいまでの嵐へと変化する!!
その瞬間をお互い待っていたかのように、動き始める!!
ガキィィィィィィンッ!!
竜巻が吹き飛び、今度は新たに先ほどの衝撃を超えるほどの竜巻が巻き起こる!!
甲高い音があたりに響き渡る!!
だが、そのままお互い即座に剣を振り上げる!!
剣の技量は……互角!!
ギィン!ガァン!ガキィィィィィィン!!
三本の剣が交差し、また、離れる!
既に人の目には届かぬ領域にあった。
辺りが気がぶつかっただけで消滅している。
すでに、インフィニティの作った世界は崩れつつあったが殆ど俺達には関係がなかった。
今の俺にはインフィニティを倒すことしか考えられない……
それは、インフィニティも同じだろう。
負けない……負けられない!!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ガキィン!ガキィ!ガガン!ギィン!
凄まじいまでの剣の応酬……剣筋すら……いや、剣の動きすら見えない。
だが、俺は奴の剣を受け止め奴の剣を弾き返していた。
ガァァァァァン!!
ひときわ大きい音がし、俺とインフィニティはお互いの力を受け吹き飛ぶ。
俺は空中で宙返りをし即座に体を入れ替える。
インフィニティもまた同じように体を入れ替えた。
ダンッ!!
体を入れ替え、岩壁を踏み台にしただけで岩壁が跡形もなく消滅する。
それは、俺とインフィニティの力が辺り一体に影響を強く与えている証拠だった!!
ズガガァァァァァァァァァァァン!!
俺の二本の剣が生み出した衝撃と、インフィニティの持つ黒い剣が起こした衝撃が中心でぶつかる!!
その攻撃力は……互角!!
互いの力を相殺しながら、俺達は今度は直接剣をぶつける!!
ガキィィィィィィィィン!!
三つの剣はお互いの力を拮抗させていた。
スピード、パワー、技量……全てにおいて、俺とインフィニティは全く互角なのだ。
「くぅ……俺は……負けない!!」
「私とて……負けるわけにはいかんのだ!!」
ガキィン!!
もう、何度目になるかも分からないがお互いの剣を弾く!!
だが、今度は先ほどとは状況が違った。
お互い、弾いた後になにもせずその場でとどまったのだ。
「この一撃に……全てをかけよう」
「……奇遇だな、俺も同じことを考えていた」
インフィニティの言葉に、苦笑をしながら答えた。
なぜ、こんな表情が出来るのかは俺には今理解できなかった。
……だが、俺の中でインフィニティに対する憎しみが少しずつ消えていっているのは理解できた。
憎めないのだ……なぜか……
その思いが消えていくと同時に、俺は、俺の中で何かが生まれるような、そんな感覚を味わっていた。
「ひゅぅぅぅぅぅぅぅぅ……!!」「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
俺と、インフィニティは殆ど同時に呼吸を整えていた。
俺は、二本の剣をかまえ、奴も両手で一本の剣を握り締める。
今度こそ……この一撃に全てがかかっている……
「転生輪舞……」
「魔闘鬼神流 最終奥義……」
何故かは分からない……でも、今ならあれが出来ると確信していた。
魔闘鬼神流最終奥義……
俺が、ゆういつできなかった魔闘鬼神流最終最強奥義。
二つの気と魔力はドンドン大きくなっていく。
そして、その力は臨界点に達した!!
「破斬集燕断!!」
ズガガガガガガガがガガガッ!!
凄まじい奔流が奴の体を通して俺へと向かってくる。
今までのが遊びと思えるくらいだ。
「光神永勁!!」
俺の全身が光りはじめる!!
その光は、まるで俺を象徴するかのように闇の色でも光の色でもない光を放った。
『この技はそのものの命すら力にかえる……そして、その瞬間、その本人の心の色が表に出る』
師が言ったその言葉が俺の中で反芻される。
確かに……俺にふさわしい……色だ!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
互いに言葉は要らなかった。
あるのは……結末のみだ。
俺の身体にまとわり付いている光が、剣へと収束し凄まじい光を放つ!!
"二本"の剣が俺と、インフィニティの間で交差する。
瞬間……
ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
この世界の終わりを示すように……全てが光で覆われた。
………ここ……は……?
まだ、覚醒していない意識……俺は、今、自分が何をしているのか理解していなかった。
身体がだるい、力が全身から抜けているようだ。
俺は……どうしたん……だ……?
思い出せない、いや、思い出したくないのだろうか?
いずれにせよ、身体がだるくて動けない……今は、おそらく指一本動かすのにも相当の力が要るだろう。
「クッ……」
起き上がろうとして、身体を全力で動かす。
俺は、身体を何とか起こした。
そして……自らの隣に刺さっている二本の剣を見た。
カオス……ブレードと……?
「っ!!!!!!!」
そうだ、俺は……
「クゥッ!!」
体中の痛みを無視して、俺は、必死に立ち上がった。
完全に立ち上がったとき、俺は、辺りを見回す。
ロスト・ワールド……
この空間は、カオスさえない世界の裏の裏……つまり、全ての世界の真下にある"土台"とも言うべき場所だ。
故に、ここには何も存在していなかった。
そして、この世界に漂う二つの存在……
「インフィニティ……」
俺の前をまるで浮かぶかのようにたっている一人の男がいた。
インフィニティ……俺の、父親だ。
「イン……フィニ……ティ?」
彼もまた、酷く傷ついていた……そう、俺以上に。
彼は、俺のほうへ向くと薄く笑った。
だが、それは今まで浮かべていたあざ笑うような笑みではなく、純粋な、優しい笑みだった。
「魔龍……よ。強く……育ったな」
彼は、酷く傷ついていながら笑みを浮かべていた。
そして、彼は俺の事を"魔龍"と呼んだ、まるで、今までの事が虚構の様に。
「私は……お前に謝らなければいけない。……残りの少ない時間を使っても……」
その言葉を証明するように、インフィニティの存在は徐々に薄れていっている。
いや!だが……まだ、消えてもらうわけにはいかない!!
ユメが言っていた事も聞きたいし、先程の笑った笑みを理由も知りたい!!
だが……心とは裏腹に俺の口は、身体は……全く動かなかった。
「すまない……な、我が息子よ、辛い思いをさせてしまって……」
「……父さん!?」
「私をまだ、父とよんでくれるのか……」
その言葉に笑みを浮かべた所で、父さんは無の空間に捕らわれたように消えた。
一つのエンブレムを残して。
「どういう……事なんだ!!どういうことなんだ!?」
俺は、あらん限りの声で叫んだ!
力いっぱいに、大声で……
その声は、力となりあたりの空間を揺らがせた。
「答えろ!答えてくれ!!ユメが最後に残していった言葉の意味を!!父さんの笑みの理由を!!」
「ええ……教えてあげましょう」
その言葉と共に、もう一人の自称の存在、"必然"の称号をもつものにして……俺の、原初の母、デスティニィが現れた。
「銀……ようやっと、この段階まで着ましたね」
「母……さん?いや。デスティニィ!?どういうことなんだ、これは!?」
「今回の事は、実を言えば私が言い出した事なのよ……」
デスティニィの言ったその一言に、俺は一瞬絶句してしまった。
どういう……意味だ?
「あなたの父……インフィニティは全ての責任を一手に担ったの……ある存在を倒すために!!」
俺は、一言も言葉を発さず、デスティニィの言葉を静かに待つ。
「その存在の名は"ファースト"……自称と存在を創りし"原初"の存在……我らを創った者……」
「!?……あなた達以上の存在がいるというのか!?」
この、誰も知らない事実を聞かされて、俺は、思わず叫んでしまった。
知らなかった……まさか、インフィニティとデスティニィ以上の存在がいたなんて……
「彼は、私たちにこう伝えたわ。私が目覚めるまでに私と戦える者を用意しなさい、と。……そして、その存在が用意できなかった時……そう、今まではどうなったと思う?」
「………………」
今まで……?という事は……?
「そう、全て滅ぼされたのよ……」
「!!!!!!!」
まさか……っ!構築していた世界を全て滅ぼしたというのか……!
「私達は、もう、これで五回目なのよ……そして、気付いた。私達では対抗する事は出来ない、と」
その時のデスティニィとインフィニティの苦悩を思い、俺は、自分がどれだけ小さな思いに捕らわれていたのか、理解した……
くそ!!結局は俺は小さな物に踊らされていただけかよ!!
「そこで、今までとは違う方法を今回はとったわ。そう……まだ、何の色にも塗られていない真っ白な存在を作ることにした。それも、あの人と私の力を使って」
「それが……」
「そう、あなたとリィズよ」
リィズ……絶望の称号を持つ、俺と同時期に創られた存在……妹、である。
彼女が変化して何十億年と立つが……
「そして……あなたはここまで立派に育ってくれた……!奇跡という、称号を得て!!」
「奇跡……ミラクル?」
先程出てきた剣……アルティメット・ブレードの事を思い出し、俺は、ぐっ……と、手を握った。
そう言う意味がこめられていたのか……俺には。
「そして……今あなたの中には二つの称号が眠っているわ」
「二つ……だと?」
奇跡と……まさか!?
「そう、奇跡と、運命……娘の二つの称号があなたの中にある。あなたの父の力があなたの中にある……そして……」
デスティニィは謳う様にそう言うと、自らの胸に手を当てた。
ぽう……と、彼女の身体が光り始めた。
「約束して……ファーストを倒すと……」
「……分かった!絶対に……絶対に倒してみせる!!」
その言葉を聞くと、母さんは微笑んだ……嬉しそうに、そして、悲しそうに……
「……最後に、これだけは言わせて。あなたの事を、私と、あの人は……愛しているわ」
「母……さん……」
その光は、俺の中に収束していく。
そして……その言葉を最後に……デスティニィは消えた……
「愛している……か」
今更、だよな……でも、嬉しいかもしれないな。
何百年、何十万年、何十億年……俺は、父さんを恨んでいたのかは分からなかった。
でも、父さんが個人の感情を消していたのは仕方が無いのだろう……だが、その裏にある苦悩に気付けなかった、自分が情けない……
「ふっ……結局、俺は今だに子供、てわけか……」
自嘲気味にそう囁いた。
俺は辺りを見回した……そう言えば、シンジとトキオはどうしたのだろうか?
他の皆は……?
そう思っていると、不意にこの空間が揺れ始めた!!
「まずい!!作り出している本人が消えたから、空間が不安定になっているのか!!」
俺は、辺りを見回した……そして、倒れている人間達に気付く。
「シンジ!トキオ!!」
慌てて駆け寄ると、二人をたたき起こす。
……ほっ、幸い外傷は余り無い、それ所かかすり傷一つも無いようだ。
だが、二人の意識が目覚めない……おそらく、かなり深い眠りにはいっているのだろう。
「担いでいくしかないか……」
俺は、二人の身体を持ち上げると前方を睨んだ。
くっ……これが、最後の試練って訳か!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は、叫びながら本気で走り始めた!!
しかし、そんなに速度を……光速クラスのスピードを出すわけにはいかない、シンジとトキオもいるのだ。
シンジとトキオが、フルパワーで尚且つ全快だったらなにも遠慮はしないがしかし、何かあるかもしれないの本気で走れないのだ。
辺りを見回してみるが、だが、何も無い……
(どこだ……?どこにあるんだ!?)
出入り口を必死に探すが見つからない……俺は、半ば絶望しかけた時。
(諦めないで!!)
少女声が……俺の最も大切だった少女の声が俺の中に響く。
驚いてみると、目の前には金色の髪に空よりも澄み渡っている青い瞳を持った少女がいた。
「ユメ!!」
(諦めないで……!こっちよ!!)
彼女は、俺に出口の指示を出した。
俺は、一瞬躊躇するが……彼女を信じる。
彼女の向かっている方に、俺も行くとしばらくすると光が見えた……
「あれか!!」
「急いで!!」
俺とユメは後数秒で完全に崩壊するであろう空間を疾走した。
そして……バリィン!!
音も無く、俺の目の前で……空間が閉じてしまう。
「くそっ!!」
思わず悪態を吐くが、もう、どうにでもなるわけではない……
後は、この空間と共に滅びてしまうだけだ……
「でも……お前と会えたのがせめてもの救いか」
苦笑しながら、隣にいる少女を見る。
だが、その少女は怒りのこもった瞳で俺を見ていた。
(ここで諦めちゃうの!?諦めないでよ!!こんな所で!!)
「無理だよ……俺に、インフィニティの空間を直す事や、それに穴をあける事は……」
(約束したじゃない!あなたは、私と!!何事が起こっても、諦めないって!ねぇ!!)
約束……!そうだ、約束したじゃないか、俺は、ニューと!フィセアと!母さん達と!!そして……ユメと!!
まだ……そうだ!まだ死ねない!!
「そうだ、俺は……俺は、まだ死ねないっ!!生きて!生きて!生き抜いて!!そして、古の禍根を……断ってやる!!」
そう叫ぶと、俺は、両手を掲げた。
掲げた両手には、光が灯っていた。
今までとは違う……圧倒的な光だ。
「力を貸してくれ!!父さん!母さん!!そして……俺の中に眠る、奇跡よ!!」
ふわりと、剣が俺の手の中にあらわれる。
今までとは違う、余りにも小さい普通の剣のサイズの物だ。
だが、その剣の中からは俺に無限の力を与えてくれるような錯覚をおこした。
「今、ここで……俺は、父さんと母さんを……超えるっ!!」
そう言い、俺は剣を一閃させた……
「ふう……やっぱり、フィセアの淹れたコーヒーは美味いなぁ……」
「あはっ、ありがとうございますぅ!」
俺は、フィセアの淹れたコーヒーを飲みながら彼女の淹れたコーヒーをゆっくりと飲んだ。
……あの後、結局俺は自らの力でインフィニティの結界を突破した。
そして、誰一人欠けることなく無事に戻ってきたのだ。
「おやおや、調子も随分と戻ったみたいですねぇ?」
ニューが苦笑しながら俺に問い掛けた。
……実は、あの後、俺は、死んだように眠ったのだ、しかも……一週間ぶっ続けで。
あの時は皆に随分と心配をかけたものだ。
「まぁね……他の奴らも、元気になったみたいだし」
「ええ、本当に良かったですぅ」
フィセアが微笑みながらそう言う。
……しかし、物語は今だに始まったばかりなのだ。
これからが、本当の始まりなのだ……
そう、無限に続く俺の物語……俺は、その一つに足を踏み入れたに過ぎない。
最も、素晴らしい選択だったのかは俺にもわからない。
けど……運命に逆らい、俺は一つの事を達成した……俺は、勝ったのだ、自分という"運命"に。
「う〜ん!それじゃあ、ニュー!俺どっかに出かけてくるわ」
「はいはい、なるべく早く帰ってきてくださいね?」
「はいはい」
そして……運命は、めぐり一つの輪を作り出す……
NEXT……AQUARIAN AGE TO BE CONTINU!
あとがき
はぁ〜やっと終わりましたねぇ、MASUTER CROSS ANOTHER……楽しんでいただけたでしょうか?
魔龍君のストーリーの中では、これだけドシリアスな話も珍しいかな……まぁ、最終話だしね。
ここから、アクエリアンエイジに続くわけですね……ふう……
それでは!!
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜
燃えましたッ! なんかもー、すっげー使い魔好みの展開ですっ。
くくうううっ! 魔竜さんありがとうございましたっ! んでもって、最終話お疲れさまっ。
・・・つっても、労いの言葉はまだ早いですね、続編である「アクエリアンエイジ編」が先行しているし、来るべきファーストとの決着もっ!
インフィニティとデスティニィの苦悩。
苦悩の末の決断―――あえて悪役となり、息子を鍛え、想いを託すッ。
ううっをー、いやマジでツボですっ! 最高ですっ。燃えーっ!(吼えるな)
王道である「奇跡の逆転」もしっかり抑えてあってッ、ドシリアスですけどホンットよかったですー。