MASUTER CROSS ANOTER 第五話『夢の如く、悪夢の如く』



午後二時という時間……普段なら、明かりを灯らせずとも校舎の中は明るく学生のうるさい声が響いているだろう。
そして、ご多分に漏れず俺もその談笑の中には言っていたはずだ。
だが、今の俺はその廊下をシンジ、トキオと共に歩いていた。
あまりにも静かに静まり、そして、明かりをともさなければ前が見えないほどの闇の中を……
こんな状況を作り出しやがるとは……くそっ!!
今、俺達は校長室へと向かっていた。
校長室……奴はおそらくそこにいるだろう。
なぜか?そんなもの俺の勘である。
だが、おそらくあたるだろう。
無茶苦茶腹が立つが奴の考えは手にとるように分かるのだ。
そう、奴は……俺の……父親なのだから。
「それにしても、嵐の前の静けさ……そんな感じですね」
「ああ……」
トキオもその言葉に頷いていた。
俺は……頷きたくなかった。
「後……もう少しでつくはずですよね」
「そうだ……」
俺達はその言葉を聞きよりいっそう気合を入れた。
そう、決戦が近いのだ。
俺のこの数十万に渡る生きた時間はこの日のためにあったのだ。
別にフィセアを殺したとかそう言うことに対しての復讐心とかは今は……ない。
どちらかと言えば、俺は自分を試したかった。
そして、何よりも俺は自分の手で今ある大切な存在【もの】を……守るため。
戦うという事はそう言うことではないんだろうか?
正義とか、悪とか、そんな物は一切関係ない。ただ、自分の大切な物を守るために戦う……
それが、俺の見つけ出せた答えだった。
だけど、その答えを見つけるためにあまりにも時間がかかってしまった。
こつこつこつ……
俺達の靴の音が妙に響く。
静か過ぎるというのは……あまりにも不気味な物なんだな。
それからしばらく歩いた時。
俺は始めて気付いた……
「気付いてるか?」
「「………ああ」」
二人同時に答えた。
そう、俺達は同じところを先ほどからずっと周回しているのだ。
「黒神よ!光王よ!」
もう、"気付いているぞ"という合図である。
それと共に現れる人陰。
さぁて、誰に乗り移ってくるかな?
多少の怒りと共に俺は睨みつけるように剣を抜いた。
シンジとトキオも同じように剣を抜く。
そして、現れたのは……!!!
「てめぇ!!」
俺は鬼気迫る表情で剣を振り上げた。
そして、それを一気に振り落とす。
そう、現れたのは夢フィセアの格好をした者だった。
俺の放った一撃は迷うことなくフィセアの格好をした者に迫っていった。
「ふふふ」
フィセアの格好をした者が艶やかに笑った。
そして、左手であっさりとそれをかき消す。
「お久しぶりね、魔龍 銀?いきなりあなたの恋人にこんな事をするなんて酷いじゃない?」
「……よくもまぁそんな事がいえるなっ!お前……覚悟は出来てるんだろうなぁ……!?」
俺は黒神と光王を合体させてカオス・ブレードへと戻した。
そして、それを思いっきり振り落とす。
そう、今の俺には彼女と言う一種の鎖はもうない。
俺の中ではすでにフィセアは存在していない者となっている……が。
その姿を真似て俺の心をかき乱そうとし、彼女のことを貶めたこいつは許せなかった。
「シンジ!トキオ!手を出すんじゃないぞ!!」
「……わかりました」
「……OK」
シンジとトキオはそう答えた。
その言葉を聞くと俺は剣を強く握り締めた。
「行くぜ!!」
「ふふふふ!アクアは倒せたけど私はどうかしら!?」
そう言いながらまるで舞を踊るかのように彼女は身を振るう。
これは!!
「剣の舞弐式"乱舞"!!」
美しい舞と共に鋭い剣閃が俺を襲う。
「チィ!!」
俺は、鋭く舌打ちするとバクテンをしながら、後ろに下がる。
そして、剣閃ぎりぎりのところに来た。
「ハァ!!」
頭上から地面まで俺は思いっきり剣を振るうと真空の波が相手を襲う。
だが、相手はそれを剣の舞でうまくかわす。
シュッ!
俺の頬に鋭い痛みが走る。
そしてつぅ……と紅い血が流れる。
「…………!!」
まさか、距離が伸びているのか!?
俺は、それを感じた瞬間全神経をフル稼働させて次の攻撃に備える。
やはり!敵の攻撃が少しづつだが延びてきている。
「剣の舞弐式"乱舞"の味はどうかしら?」
「ふん……なら、こいつはどうだ!?」
俺は、そう言うと即座に魔闘鬼神流の構えを取る。
そして、そのまま突きの構えに変える。
「魔闘鬼神流 爆砕 展開!!」
俺のすさまじいまでの突きの一撃が敵に向かう。
「ふふふ……甘いわよ、剣の舞参式"柳の舞"」
その言葉と共にまた彼女の踊りが変わる。
今まで波状だった一撃が全体へと放たれるようになった!?
だが、甘いぜ!!
放たれた爆砕の一撃が敵の攻撃に触れた瞬間一気に敵にすさまじいまでの広範囲の攻撃が広まる!
「なぁ!?」
流石にこれは慌てたようだ。だが、遅い!
「くあぁ!」
叫び声と共に奴の全身に俺の攻撃があたる。
だが、この攻撃はあまりにも浅すぎる。
普通の敵なら一瞬で消滅しているような一撃だが奴は普通ではない。
現にあの一撃をくらってなおぴんぴんしていた。
だが……
「……!?!」
俺達一同はその場に相手がいない事を悟った。
即座に俺とトキオとシンジは円陣を組み警戒する。
上下左右……ありとあらゆる方向に気を張り巡らせる。
だが、一向に奴からの攻撃はこない。
「諦めた……か?」
トキオが辺りを完全に警戒しながら言った。
俺も、それに答える。
「それはない、奴らの目的は世界を破壊するための邪魔な存在を消す事……ならば、最も危険な存在である俺……そして、数馬に認められているシンジを殺さないのはおかしすぎる」
「なるほど……いい迷惑な話ですね」
「全くだな」
嘆息する二人を尻目に俺はカオス・ブレードを右手で構え左手で魔法を使えるようにする。
「なんにせよ、この幻術を破ってとっとと出るぞ!」
そう叫んだ後、俺はカオス・ブレードを上段に構えた。
だが……
ズバァ!!
「ぐぁ!?」
咄嗟に避けたもののあまりにも急なため完全には避けられなかった。
俺は右腕に傷を負ってしまった。
「あなたらしくないわね、こんな事で油断するなんて」
そう言いながら、蒼銀の髪を持った女は俺に話しかけた。
俺は、その姿を見て即座に誰か思い当たった。
「なるほど……相も変わらずせこい手を使う奴だ、マーシィ・ドリーム【悲しみの夢】」
俺は、その位置から即座に身を返し剣を振り切る。
だが、その一撃を奴は後方に飛ぶ事によってかわした。
「ええ、あなたを殺すためならどんな事でもするわよ」
そう言いながら奴は自分の本当の獲物……魔塵の篭手を装備する。
奴のつけている魔塵の篭手が発光する。
光とも闇とも取れない色だ。
……面白い……
俺はそう判断すると剣をしまう。
元々、素手と剣ではこちらが不利である。
なぜか?お互い懐に入るのであれば一瞬である。
「シンジ、トキオ」
「わかってる」「わかってます」
二人共はもりながら俺の言葉に答えた。
……感謝、するぜ……
「行くぜ!魔闘鬼神流!!」
俺は魔闘鬼神流の構えをする、その途端手が発光し黄金と蒼銀の色を纏う。
ダッ!!
接近は一瞬だった、相手も俺も近づくとシンジ達ですら捕らえられない速度で何十度と打ち合う。
掌手、掌打、ジャブ、アッパー……etc、etc……
何十度も打ち合うが一度ともお互いにヒットと呼べるような一撃はなかった。
時にはかわし、時には打つ……
だが、相手も俺も焦ったのかお互い思いっきり吹き飛ばしを同時にする。
バァン!!
それによって互いに吹き飛ぶ。
だが、これだけ隙があれば奥義クラスを用意するのには十分事足りる!!
「魔闘鬼神流 奥義 体心滅撃!!」
全身から溢れんばかりの魔闘気を漲【みなぎ】らせそのまま突っ込む!
そして、俺を中心にしてすさまじい魔闘気がマーシィに襲い掛かる。
「グッ!!」
奴は腕を交差させた。
そして、全力を使いバリアを張った。
「ああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!」
「だあああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!」
バガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
シールドと体心滅撃がぶつかる。
一瞬、この世の物とは思えないまでの爆発が起きた。
吹き飛ばされる俺とマーシィ。
攻撃は届いた……が、浅い!
俺は回転して受身を取ると更に追い討ちをかけようとした。
が、今度は奴の方が速かった。
「!!!!!」
「螺旋!!」
奴の叫びと共に幾条のもの光り輝く拳が俺の周りを覆うように放たれる。
ずがががががががががが!!
螺旋は敵に1000発という攻撃を加える技だ、一撃一撃は弱い。
だが、今のは間違えなく避けられなかった。
が、何とか968発は受け流した。
しかし……やっぱ重い……
俺は反転しながらそう思った、だが、それこそ物思いにふけっている暇じゃあない!
「魔闘鬼神流 龍炎疾風牙突砕!!」
俺の両手が紅い炎と青い風の力を纏う。
それがすさまじい龍の闘気となってマーシィを襲う。
流石にこれはやばいと思ったのか奴はかわそうとする。
「甘い!!」
俺は、そう叫ぶと更に闘気を纏った。
そう、これは俺が仕掛けるための付せんだったのだ。
一瞬にしてマーシィの目の前へと俺は迫った。
そこから、魔闘気を纏った拳を何十発も入れる。
無論、これをかわせるほど余裕が相手にあるわけがない。
「かはっ」
よろり、とよろける相手に俺は言葉と共にとどめの一発を放つ。
「俺の思い出を傷つけたバカが!!喰らい……やがれぇ!!」
俺は、そう叫ぶと腕を振り上げた。
「魔闘鬼神流 奥義 天地崩壊!!」
ごすっ!!
ボゴァァァァァァァァァァァァン!!
今までの比ではない爆発が起こる。
そして、奴は消えた。




「はぁはぁはぁはぁ……」
大きく肩で息をする俺。
体がだるい……マーシィに体力を使いすぎた……
「大丈夫ですか?」
シンジとトキオが俺の元へと来る、だが、正直……
「す、少し辛いかもしれない」
「とりあえず」
二人は俺に回復魔法をかける。
傷と疲労がすぅ……と、少しずつだが引いてきた……
そして、今まで変な空間だったのが何時の間にか元の空間へと戻ってきていた。
そして……目の前にあったのは……
「校長室……だな」
「つきましたね」
「そうだな」
これからが本当の勝負だ。





キャラ達による座談会


魔龍:ついにここまで来たな……
シンジ:そうですねぇ
トキオ:しかし、バトルバトルしてるな。
魔龍:この章は主にバトルだからね、どうしても展開的にこうなってしまうんだ。
トキオ:しかし……出番がない。
シンジ:ですねぇ。
魔龍:多分、作者の事だから次回だと思う。
トキオ:最終話、か。もしくは最終話前か?
シンジ:みたいですね、作者もどっちか決めあぐねているみたいですから。
魔龍:よし、次回、マスタークロスアナザーはついにインフィニティとの対決に!こうご期待!!



ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


おおおおおっ!
魔龍さんってばカッコよすぎ〜♪ 恋人の姿を汚され、怒りに燃えるッ!
くぅっ、良さ過ぎッ。燃えますぜっ!

しっかし、他二人(シンジ、トキオ)全然出番ないですねー(苦笑)。
クライマックスまであと少し、二人に出番はあるのかー!?(オイ)

もちろん、対インフィニティ戦も楽しみです!


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