終章 一つの終わり・・・そして―――またいつか・・・

 

 

 ―――洞窟を出ると、丁度朝日が昇るところだった。
 この洞窟に入って半日以上―――1日近く経っていることになる。

 

「あー。なんかお日様見るのお久し振りー」

 

 んー、とセイが背伸びをする。
 その天に向かって伸ばした手の中には、藍色の綺麗な球が収まっていた。
 よくよく見ると、その球の中には人間が一人、折った両足を腕で抱え込んで丸くなって眠っている。・・・ように見える。

 球の中に収まっているのは虚空殺で半身が欠けたシード=アルロードだった。
 今、シードは時間が静止した結界の球の中に封じられている。
 いつかにも見た、セイが持つ弟の形見である杖―――その力らしい。俺には見た目ただの杖にしか見えなかったが、姉さんが驚いていたところを見ると、かなり凄い杖なんだろう。
 ・・・ま、時を止める、なんて芸当が出来る杖が普通の杖であるわけはないか。

 

「じゃ。頼んだぜ、セイ」

「・・・本当は頼まれたくないんだけどな」

 

 セイは心底嫌そうな顔で、降ろした手の中の球を見る。
 ・・・なんてシード=アルロードが時間を止められて封印されているかと言うと―――

 

「だけど、あなたがルーン=ケイリアックの弟とはね・・・セイコったら一言も言わないんだもの」

 

 ぷう、と軽く頬を膨らませ、姉さんがセイの頭を小突く。
 セイはそれを嫌そうな顔のままされるがままになっている。・・・下手に避けたりすると、もっと面倒なことになると思っているのだろう。そしてそれは正しかった。

 

「下の名前が同じならわかりそうなものだろうがよ」

「だってセイコにはセイって名前しか聞いてなかったんだもん」

 

 がすっ。
 なんかいきなり良い音が響いて、セイは地面に仰向けに倒れていた。

 ・・・・

 ええと。
 まあなんという・・・姉さんの組織を出奔してからの教え子にセイコという女性(俺がフロアの記憶の中で見た黒髪の女性だ)が居て、その彼女はセイの知りあいらしい・・・なんか名前が似てるのは、そのセイコさんとやらの名前が偽名で、セイと姉さんから名前を借りたからだそうだ。
 ・・・なんか名前を他人から借りるのって、俺だけじゃないんだなって少し感心して見たり。

 で、それはまあ置いといて。

 ルーン=ケイリアックというのがセイの姉。
 なんか前にもクレイスの母親とのごたごたで聞いた名前だけど。
 姉さんに言わせれば、ファレイス大陸でも屈指の魔道士らしい。で、セイが言うにはその自分の姉なら、シード―――シード=アルロードを助けられると言うのだ。
 だから、完全に身も心も魔族とならないうちに時間を止めた状態で運ぼうというわけ。

 

「・・・肉体改造はあの馬鹿姉の趣味だからな。元に戻す方法も知ってるさ」

 

 その肉体改造の実験体らしい本人が言うなら間違いないだろ。

 

「まあ安心しとくが良い! セイだけなら心配かも知れないが、僕もついてってやるから!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「な、なんだ・・・?」

 

 俺とセイにじっと見つめられて、クレイスがうろたえたように身を引く。

 ・・・ちなみにクレイスは洞窟で何故かでっけぇコブを作って気絶していた所をフロアの精霊が発見し、ついさっき気がついたばかりだ。
 どうやら暗い洞窟の中を全力で突っ走って、なにかに蹴躓いてそのまま倒れて昏倒してしまったらしいが。

 

「・・・いや、なんでお前まで・・・?」

「セイの姉は高名な魔道士なんだろう? ぜひ、お目にかかりたい」

「止めといたほうがいいぞ。と、一応忠告しといてやる」

 

 深刻そうなセイの言葉を、クレイスはハッハッハと笑い飛ばした。

 ・・・てか、マジでついていく気なのか、こいつ?

 

「イーグ。・・・いえ、シード君って呼んだ方がいいかな?」

 

 フロアに呼ばれ、俺は苦笑しながら首を横に振る。

 

「イーグでもシードでもどっちでもいいさ。俺であることには代わりない」

「そう。・・・でもシード君って呼ばせて貰うわね」

「・・・ “君” はいらない」

「あら? でもそうすると、シードとの区別が出来なくなるじゃない」

「ならシードのヤツがイーグ・・・・・イーグ=アルロードって名乗ればいいじゃんか」

 

 と、俺が何気なく言った言葉に、フロアは「ああ」と大きく頷いて。

 

「それもいいかもね」

「おいおい」

「・・・一応、名付け親は私なんだから、一言断って欲しいけど」

 

 苦笑のような、複雑な表情で姉さんが横槍を入れてくる。

 

「シード君。キミにね、言っておかなければならないことがあるの」

「?」

 

 そっ、とフロアは俺に顔を近づけると、耳にそっと囁いて来る。

 

「―――ハーン=ケルヴィン暗殺の依頼者は、エルラルド現国王―――」

「・・・・!?」

 

 ハッとしてフロアの顔を見る―――その瞬間、視界一杯にフロアの悪戯っぽく細められた瞳。それから唇に柔らかい感触。

 ―――キスされた。

 

「あはははっ。ほっぺに軽く口付けるつもりだったのに」

 

 真っ赤になると自分でもわかるくらい、顔の温度が急上昇する俺の目の前で、フロアは可笑しそうに笑って、それから振り返る。

 フロアはその先に居たミストに軽く頭を下げて、

 

「ごめんねぇ。ちょっとした事故なんだけど・・・」

「別に。気にしてないから」

 

 フロアの後ろで、ミストがにこやかに笑っている。

 ・・・妙なプレッシャーを感じるのは、俺の気のせいだろうか。

 

「それじゃあ、そろそろいくわね―――あ。イーグ」

 

 最後に姉さんが俺を見て。

 

「今度、私の結婚式があるんだけど出席してくれない?」

「気が向いたらな」

「招待状はどこに送ればいい?」

「アバリチアの・・・レストハウス・スモレアーって言えば多分、通じるだろ」

「解かった。じゃあ、また」

 

 そう言って姉さんは俺に背を向ける。
 自分でも意外なほどあっさりした別れ。
 その背中の向こうで姉さんはどんな表情をしているのか気になったが―――

 結局、俺も姉さんに背を向けた。
 決別―――とかそういう意味じゃない。
 上手く言えないけど・・・俺を育て、色んなことを教えてくれた姉さんは、もう俺の面倒を見る必要も、なにも教えることがなくなって、俺も姉さんを頼らないくらいに成長したと言う事・・・

 やっぱり決別なのかもしれない。それでも。

 

「ああ―――また、な」

 

 俺は肩越しに手を振って答えた。
 姉さんには見えなかったろうけど。なんとなく。

 

 

 

 

 それから、俺とミストを除いた全員は、姉さんの移送魔法で、セイの姉が居るファレイス大陸へと転移していった。
 ・・・結局、クレイスの馬鹿もついていった。俺とミストに「テレスとお爺様によろしく頼む」と言い残して。

 それから。
 その場には俺とミストだけが残された。
 なんというか。
 滅茶苦茶騒ぎまくって、殺す殺されるって話だった割には、別れはあっさりしすぎている―――というか。

 

「また、会えるよね」

「そうだな」

 

 ミストの言葉に俺は頷く。
 結局、別れにしては、別れの様に感じられないのは。
 また会える―――そんな気がするからかも知れない。

 ・・・いや、会えるんだろうなぁ。
 セイとクレイスは用事が終わったらアバリチアに戻ってくるだろうし、シードもきっと元に戻ってフロアと一緒にセイたちについて来るかも知れない。
 姉さんは姉さんで結婚式に呼ばれてるし―――そう言えば、新郎がどんな物好きか聞くの忘れてたな。ま、いっか。

 

「・・・・・なんかさー。結局、これってなんだったんだろうね」

 

 苦笑交じりの表情で、ミストが呟く。

 

「シード君が大事な友達と殺しあったり、私も融解されて―――挙句に一度死んじゃったり・・・結局、なにがどうしてこんなことになったのか―――どうして、こんなことになっちゃったんだろうね」

「・・・そうだな」

 

 俺は嘘を付いた。

 俺は知っている。少なくとも、どうしてシードが魔族になりかけたか。シードがキンクフォートの王族を皆殺しにしようとしたか。
 ・・・どうして、シードが俺に殺される事を望んだかを。

 俺は、知っている。
 だけどこれはミストが知らなくて言いことだし―――なによりも、もう、全部終わった事だから・・・

 

「ところで私以外のキスの味はどうだった?」

「・・・な!?」

 

 にやり。
 シード=アルロードが浮かべるような笑みで、ミストが腰を屈め、下から覗き込むようにして俺の顔を見上げる。
 ・・・また、顔に血が上る。
 それを悟られないように、俺は顔を空へと向けた。―――気付かれてるとは思うが、そうせずにはいられない。

 

「べっ、別に・・・っ」

「フロアさんになにを言われたの?」

「・・・さあな」

 

 空を見上げたまま。
 空には雲。それから青空。
 空の青は好きだった。特に雲一つない青空の青。
 じっと見上げていると、魂が弾き込まれるような感覚。それがドキドキして―――でも、今の空には残念ながら幾つかの雲が浮かんでいる。

 ふと、視界の外でミストが溜め息をつく音が聞こえた。

 

「―――ハーンさんを殺したかったのが国王様ってことなら・・・なんとなく見当ついてるよ。私」

「・・・・!?」

 

 思わずミストを見下ろす―――瞬間。

 

「―――ん」

 

 反射的に身を引こうとした時にはすでに、ミストの唇は離れていた。

 思わず自分の口を押さえる。
 そんな俺を見て、ミストは「あはは」と声に出して笑った。

 

「不注意過ぎるよシード君。それでも暗殺者?」

「・・・ “元” だ。元暗殺者」

「にしたって、油断しすぎだよ」

「うるせぇよ」

 

 どんな顔をしていいのかわからず、俺は口を塞いでいた手をずらして顔を隠すように手で覆う。
 ―――って。

 

「ちょと待て。なんでお前が知ってるんだよ。そんなこと!」

「え? ずっと前から知ってるよ? シード君が暗殺者だったなんて」

「違う。ハーン=ケルヴィンに暗殺者―――俺を仕向けたのがキンクフォートの国王だって事をだよ!」

「・・・聞いたから」

「は?」

「お母さんに、教えてもらったの」

 

 ミストはくるりと俺に背を向ける。
 ・・・
 ミストの母親って・・・確か、もう死んでるんじゃなかったのか?

 

「それ・・・いつ聞いたんだ?」

「ずっと前。お父さんがハーンさんを殺した犯人を探しに旅立ってすぐに」

「・・・まさかマスターが調べ上げて・・・!?」

 

 俺の言葉に、しかしミストは首を横に振る。

 

「お父さんが知ったら大変なことになる。・・・きっと、エルラルド国王の所まで殴り込んで行っちゃうわ。・・・だから、お母さんはお父さんに教えなかった」

「・・・なんで、お前の母親は気付いたんだ?」

「知らない。・・・でもね、昔からお母さんにわからない事なんてなかったから」

 

 すごい母親だ。

 

「だけど、やっとハーンさんが殺された理由がわかった」

「え?」

「シードさん―――アルロードさんに移植された魔族の肉片。あれ、もしかしたらエルラルド王国が所有していた物なんじゃないかな? きっとハーンさんはエルラルド王国が魔族となにか係わり合いを持っていた事を調べていた―――それに気付いた国王が、ハーンさんを殺そうとした・・・適当な理由をつけて処刑しなかったのは、多分ハーンさんが “切り札” を持っていたから。なにか、決定的な証拠を。だから―――」

「暗殺・・・か」

 

 うーむ。
 母親も凄ければ娘も凄いなオイ。
 ミストには、魔族の肉片とやらがエルラルド王国の物だって事は言ってないし―――姉さんが言った時には死んでいた。
 それなのにここまで正確に推理できるなんて。

 確かに、エルラルド王国が所有していた魔族の肉片。それをシード=アルロードは移植されて魔物になってしまった。だからこそ、最後に―――その怒りをキンクフォートへと向けた。

 ・・・しかし。まさかここでハーン=ケルヴィンが暗殺された―――したのは俺だが―――理由までわかるとは。

 

「なんか・・・いきなり国家機密を知ってしまったが―――気分はスパイ?」

「シード君は暗殺者でしょ」

「元を忘れるなっつ―の。・・・所で、なんでさっきからお前、俺に背中向けてるんだよ」

「・・・・・・・」

「おー・・・い?」

「あっ」

 

 ぐい、とミストの肩を掴んで、強引に振りかえらせる。

 泣いてやがる。

 

「何故泣く!?」

「あ・・・ああ、違うのこれは・・・ッ」

「肩、強引に掴んで・・・痛かったか」

「違う・・・えーと―――ああ、なんで止まらないんだろ」

 

 困ったなあ、とミストは涙を流しながら笑みを零す。

 嬉し涙?
 じゃないよな・・・?

 

「これで・・・良かったんだよね」

「なにが?」

「私、帰ってきて良かったんだよね」

 

 話が見えない。

 

「天国で、お母さんに会えたの」

「・・・」

 

 ・・・いきなり重い話に突入するな。

 声に出そうと思って止める。
 茶々を入れれば、ミストは乗ってくれるだろう。そして涙を引っ込める。
 でも、それじゃあ引っ込めた涙はまた、いつか溢れ出す。

 ―――半年ほど前、俺とミストが大喧嘩したのは、ミストが自分の中に溜めていた哀しみが一気に溢れ出したからなんだと思う。
 そうやってミストは哀しみを自分の中に引っ込めて、押し込んで―――それは、俺がいたからかも知れない。
 俺がアバリチアに来る前は、ミストは随分塞ぎ込んでいたらしいし―――俺には想像出来ないが。
 だから、こいつの哀しみは俺が受けとめて、発散させてやらなきゃな。

 ・・・しかし参った。これからコイツに母親の事は禁句だ。

 

「私、お母さんと一緒に居たかった。でもお母さんは、お母さんとシード君どっちが大切かって聞かれたの」

「・・・どう答えたんだよ?」

「答えられるわけないじゃない。どっちも大切なんだから!」

 

 ぐい、とミストは涙を拭う。
 涙はそれでも止まらない。

 

「だから、私は帰ってきた。だけど―――本当に、良かったのかな。私、帰ってきちゃって」

「当たり前だろ」

「だけど、私が帰って来なかったら、シード君はフロアさんたちと一緒に行けたでしょ?」

「―――!」

 

 息が、止まった。

 一瞬だけ息を止めて―――吐く。
 それと同時にミストの頭を殴った。強く。

 

「ふぎゃっ!?」

「・・・そういうこと言うと殴るぞ」

「殴ってから言わないで!」

「―――行かなかったさ」

 

 涙目で―――殴った衝撃か、涙は止まった様だったが―――で睨みあげるミストの視線を避けるように、あらぬ方向を見上げてつぶやく。

 

「お前が死んでたとしても、俺はもう、あいつらの所には戻らない」

「シード君・・・なんで?」

 

 ふぅ・・・
 俺はミストを見下ろす。

 なにか、泣きたいような気分で俺はせつなく言った。

 

「借金があるから・・・」

 

 コケた。
 ミストは一気に脱力したように膝を地面に落とす。
 四つんばいになるように、地面に両手をついて身体を支える。

 

「・・・・・まさか、忘れてたのか」

「忘れるでしょ。フツー」

「し、しまった!」

 

 やべぇ、まさかミストが忘れてたなんて!?
 くそ、わざわざ思い出させたかー!?

 

「全く。言わなければ、そのままフロアさんたちと行くことも出来たかもしれないのに」

「むう、そうだな」

「今からでも、遅くない・・・かな?」

「は?」

「ファレイス大陸ってそんなに大きく無いから、探せば・・・きっとすぐに見つかると思うし」

「そうかもな」

「・・・・・行く? 行くなら―――」

「いや」

 

 俺はそっとミストを抱き寄せる。

 

「俺はイーグ=ファルコムじゃない。シード=ラインフィーだから―――俺の帰る場所は、もう・・・」

「それで、いいの?」

 

 俺の胸の中で、ミストはくぐもった呟きを漏らす。

 

「いいの? あの人たち、シード君の大切な人達なんでしょ? せっかく、生きて、再会できたんだよ? それなのに・・・」

「まあ借金あるし」

「・・・・・・」

「ミスト?」

「・・・ううううう〜」

「おやおやミストさん。またまた泣いていますねー。泣き虫ですねー」

「うう〜・・・シード君ほどじゃないわよぅ・・・」

「なにぃ、俺のどこが泣き虫だ?」

「・・・私が居なくなるとすぐに泣くくせに」

「うっ」

 

 心当たりがある。
 そーいや俺って、けっこーミストの前で泣きまくってたような。

 ああー!? もしかして俺ってすんごく恥ずかしいヤツ!?

 頭を抱える。と、いつのまにかミストは俺の胸から離れていた。
 赤い目をこすって。

 

「でも、まあ・・・また会えるもんね」

「そうだな」

 

 俺達はさっきと同じような会話を交わす。

 

「姉さんの結婚式にも呼ばれてるし、そこでも会えるだろ。多分」

「そうだよね」

 

 俺とミストは頷きあって笑う。

 生きていれば、きっと、また会える。
 だから、あいつらと別れても、そんなに寂しくはなかった。

 だけど―――

 俺はミストをじっと見つめた。
 ミストは照れくさそうに「ん?」と首を傾げる。

 俺はこいつと別れたくない。離れたくない。
 生きている限り、何度でも会えるとしても。俺は少しでも―――1秒でも多く、コイツと一緒にいたい。
 ・・・なんて言ったら、コイツはどんな顔をするんだろう。

 照れて顔を真っ赤にしたりするんだろうか?
 想像出来ない。
 まあ、きっと調子に乗るんだろうなー。だから絶対に言わない。

 

「なによ、シード君。さっきからジロジロと私の顔―――なにか付いてる?」

「・・・いや、別に」

「ヘンなの―――じゃ、そろそろ帰ろうよ」

「そうだな」

 

 そうして、俺はミストと二人で帰る。
 俺達二人が帰り付く場所へ。

 

 

 

 

 

 ―――結局。
 俺は姉さんの結婚式に出席することはできなかった。
 何故なら、俺達は三ヶ月程、キンクフォートを目指してさまよい旅をすることになったからだ。

 専門用語で「道に迷った」とも言う。

 キンクフォートからテリュートまでセイのザルムの背に乗ってひとっとび。
 それからテリュートから洞窟までセイの瞬間移動でひとっとび。
 ・・・考えて見れば、道知らんし。
 大体、歩いて帰ればどれくらいの距離かも解らなかった。
 太陽の位置で方角だけは何とかわかったから、ひたすら東を進んで、腹が減ったら適当な森の中で見たこともないような動物を狩って食べる・・・などという、サバイバルな旅。
 姉さんの結婚式は、俺たちがキンクフォートに辿り着く二ヶ月前には終わっていた。

 よく、生きて帰れたと自分でも思う。
 ミストなんかは「楽しかったねー」とかのたまっていたが。

 ・・・
 ともかく。
 これで、この俺シード=ラインフィーの一つの物語は終わる。
 でも、これはただの一区切りに過ぎない。
 俺の物語はこれからも続いていく―――それは、俺が死ぬまで。

 だから、これで一つの終わりでも。

 

「生きている限り、どこかでまた出会えたり、始まったりするんだよね、シード君!」

 

 そーいうこと。

 

パニック! シード編 了


次回登場人物達の自爆な座談会ッ!

 

輪子:終わっちゃったねぇ。

竜王:終わっちゃったなあ。

闇王:えーと、足掛け三年? ホントならもっと早く終わるはずだったらしいけどな。

修羅:まあしかたないよ。だって所詮は下級の使い魔。終わったことすら奇跡みたいなもんだし。

魔子:・・・随分と、お安っぽい奇跡なのですね・・・

シード:てゆーか誰だあんたら。

修羅:あ、前作主人公。

闇王:よう、前作主人公。

シード:・・・は? ぜんさくしゅじんこう?

輪子:ちなみに今度の主人公がりゅうなんだよー。ねー、りゅー!

竜王:りゅーって言うな。

闇王:やー、しかし長かったぜ。これでついに俺達も日の目が浴びられるんだなー。

魔子:ほんッとに長かったですわねー。
    というか、当初作者様はちょっとしたプロローグのつもりでシード編を書き始めたらしいですし。

竜王:パニック! の続編。僕が主人公の ”竜王編” 。ついに近日公開ですっ!

シード:えーと、あれ? ・・・もしかして、聞いてないのか?

シードを除く他の全員:なにが?

シード:このホームページ、四月で閉鎖するんだけど。

シードを除く他の全員:・・・はい?

シード:だから、へ・い・さ。閉鎖だってば。

シードを除く他の全員:・・・はいぃぃぃぃっ!?

 

 

 

クレイス:あー、遅れた遅れた。・・・あれ?

セイ:ん? 竜王たち、なに固まってるんだ?

シード:なんか、閉鎖のこと知らんようでな。教えてやったら白くなっちまった。

セイ:あちゃー。そいや言い忘れてたっけか。

シード:・・・・・あれ? セイ・・・それにクレイスも・・・なんか、背ぇ伸びて無いか?

クレイス:三年も経てば背も伸びるさ。

シード:?????

セイ;だあら、次回作の竜王編がシード編の三年後って設定なんだよ。

シード:へー? だからってなんでお前らが・・・

クレイス:僕とセイも出演する予定だったからさ。・・・あとがきのタイトルよく見なおしてみろよ。

シード:次回登場人物たちの座談会・・・・・・

セイ:結局でることのなかったキャラクターたちの、せめて名前だけでもってろう・ふぁみりあが。

シード:あれ。俺は・・・

セイ:元主人公ってことで一つ。

シード:なんだ一つって。

 

 

 

ろう:唐突ですがちょっとここで作品のフォローをば。

闇王:・・・出たな諸悪の根源。

修羅:アンタがもっと根性入れて書いていればこんなことにはならなかったのよねー。

輪子:のよねー。

竜王:皆、作者に八つ当りするのは良く無いよ。

ろう:とかいーつつなんでアナタ剣抜いて切っ先こちらに向けておりますかーッ!?

 

シード:・・・・・・うわあ。なんか骨の砕ける音とか肉の裂ける響きとかー。

セイ:えーと、作者に代わりまして作品のフォロー。

クレイス:ライザ女史が壊滅させた闇の宴ですが、その拠点の情報を伝えたのがシード姉だったりします。

ユーイティ:もっとも、ライザさんが駆け付けた時にはすでに、組織は半壊滅状態。

セイコ:やったのはもちろん私とリウラ。

セイ:・・・って、セイコさん!? なんでこんな所にーッ!?

セイコ:セイー。会いたかったーッ。本編じゃ一度も会えなかったしーッ!

セイ:前々回のあとがきで会ってるだろうがーッ!

ユーイティ:で。なんで僕たちがこんな所にいるかというと、次回作に僕らも出演予定だったからなんですね。

セイ:・・・良かった、閉鎖して・・・・・

シード:・・・ん? そーいやアンタ、姉さんと一緒に居なかったが・・・どこ行ってたんだ?

セイコ:私? リウラとは偶然キンクフォートで会っただけだから。お手伝いしたあと、またセイを探す旅に。

セイ:・・・良かった、旅に出てくれて。

セイコ:勿論、セイと会えるとわかってたらリウラにもう少し付き合ったけどね―――って、逃げられた!?

 

ナレーション:いつの間にか瞬間移動で消えて居るセイ。セイコも呪文を唱えて瞬間移動する。

 

シード:セイのヤツも・・・色々と大変なんだな・・・

クレイス:世の中に大変じゃないヤツなんていないさ。

シード:・・・

クレイス:な、なんだよその目は!?

シード:いや・・・クレイスのくせにそういう哲学的っぽいことを言われると・・・ジンマシンが。

クレイス:・・・・・お前とは、一度本気で決着をつけなきゃいけないようだな・・・・・

 

 

 

ろう:ともあれ。これにてパニック! も一先ずの区切りとさせていただきます。

シード:お、許してもらったか。

闇王:許すもなにも。ボクタチハサイショカラオコッテナンカナイサ。

ろう:うわー、その言い方すごく不自然・・・

修羅;区切り? ひとまず区切りって言った? じゃあ、もしかして・・・

竜王:続きを書く事が―――

ろう:あるかもしれませんけど。

闇王:よしわかった。じゃあ書け。

ろう:いや闇王さん。それって実は解かってない・・・・・

竜王:まあ、こればかりは作者の気分次第だからね。

修羅:気分次第? 気分で文章書いてるの?

ろう:あれ? 知りませんでした?
   このパニック!ってほとんどなにも考えずにその場の思いつきでキー打ってたんですよ。

シード:だから先が見えなくてパニック! なんだよな(笑)。

ろう:だから気分が乗ると四章みたいに馬鹿長くなったりするんです。

セイ:あれ、当初は分量が三章よりも少ないはずだったなんて誰が信じるだろう・・・?

シード:テリュートと天空八命星、真流の設定。
    それから俺の家族の設定も、キーを叩くほんの一秒前に思いついたなんてなぁ・・・

クレイス:・・・というか、最初はテリュートって廃村って設定だったらしいが・・・?

修羅:・・・なんか、終わったこと自体が本気で奇跡に思えてきた・・・

ろう:ま、まあとにかくそんな昔のことはどうでもいいじゃないですか。とにかく終わったし。

闇王:そうだな・・・てゆーか終わらすなよ! 続きかけー!

ろう:(無視)今まで付き合ってくださった皆様、どうもでした♪

セイ:・・・居るのか? これを読みきったヤツ・・・・・

シード:そういうこと言うなよ。・・・・・・悲しくなるだろ(目を拭う)。

ろう:え、えーと。できれば読み終えた方はメールか掲示板で知らせていただけると嬉しいかと。

セイ:使い魔の自己満足のためにどうかお願いします。

竜王:自己満足のためだけなのか!?

ろう:イエス、その通り。

シード:肯定するなよお前もーッ!

ろう:オイラは自分の気持ちに正直に生きたいですッ!

魔子:まあ、ご立派ですわね。

修羅:確かに・・・その精神は立派かも知れないけど・・・内容が・・・

 

ろう:では、長い間でしたが、ここらへんで幕引きとさせて頂きます。

シード:じゃあ、また―――もし機会があれば。

セイ:生きている限り、どこかでまた出会えたり、始まったりするんだよね、シード君!(ミストの声真似)

シード:やかましいわッ!

竜王:・・・なにかしらオチつけないと落ち付かないのかキミタチは。

ろう:そーいうこと(苦笑)。

(03/03/02)
―――明日書き上げれば良かったなー(笑)。


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