差出人: Takagi [Haruru@swm.root.or.jp]
送信日時: 2000年2月21日月曜日 18:37
件名: げひら的観戦記(アジアカップ予選:VSマカオ)

 RESULT 3−0(得点経過:中山{中村}、高原{中山}、中山{小野})
メンバー:楢崎、中田(浩)、松田、中澤、稲本、平野(→服部)、澤登(明神)、中村、小野、カズ(→高原)、中山<CAP>
げひら的MIP:中山雅史
今回の文章方針:期待を込めて中辛

 予選突破。結果は3勝0敗、しかも無失点。セットプレーからも、課題とされていた流れの中からも得点できたし、不安視されたディフェンスラインにしても松田を中心に3バックで守り抜いた。(攻め込まれたシーンは少なかったが・・・。)世代の融合というテーマにしても、かえって”五輪世代”の方が多くなってしまったぐらいだが、これも成功したといえるだろう。
 しかし、何か物足りない。予選突破を実質的に決めたマカオ戦も試合前の感じでは大量点で圧勝という、ブルネイ戦のような展開を期待していたのだけど・・・。3得点。アジアの王者に返り咲くためには決定力をもっと上げていくことが不可欠だろう。
 マカオ戦もシステムは3−5−2で、スタート時のミッドフィールドの両サイドには平野と小野が入った。小野は早い段階での澤登の交代後に明神と入れ替わったが、スタートは右サイド。
 前半は左の平野を中心にサイドからの崩しをかなり意識して攻めていたように思う。平野の突破力はかなりのものがある。スピードもある。ディフェンスを振り切ってセンタリングをあげることができる。・・・が、いかんせんそのセンタリングの精度が物足りない。どうも人のいるところに上がってこない。せっかくいい形を作ってもこれではフィニッシュにつながらない。
 まあそれはそれとして、「形を作る」「崩す」ということに関してはかなり皆が意識してプレーしていたようだ。こういうパスの通りやすい試合では個々がどれだけ裏を狙っているかが分かりやすくていい。そういう”意図の見えるパス”が何本も見れたのは良かったと思う。イマイチ受け手と意思疎通が出来ていなかったのが残念なところだったが・・・。
 この試合で不可解だったのは前半、それもかなり早い段階での澤登の交代だ。それほど調子も悪くなさそうだったし怪我もしてはいなそうだった。ああいう「早すぎる交代」を見るとワールドユースでのイナの使われ方が頭をよぎってしまう。やはり小野はサイドより中でのプレーがいいという判断だろうか。そうなれば澤登はそれほどサイド向きの選手ではないし、明神を入れたのも分かる気がする。でも僕は右サイドでの小野をもっと見てみたかったのでせめて前半終了ぐらいまで交代は待って欲しかった。
 とはいえ小野が中に入って明神からのサイド突破が見られるようになってオフェンスも良くなってきたので「刺激剤」としてはこの交代はなかなか良かったのかもしれない。
 またサイド突破だけでなく、外からも積極的に打っていっていた。イナのミドルシュートもかなり強烈だったし、(しかもワクにちゃんといっていたし、)中田浩二のロングシュートも惜しかった。中田浩二はロングキックの精度が高い。五輪予選などではちょっとディフェンス面が頼りなく感じたが、そこからまた成長したように感じる。左サイドに定着してきそうだ。
 また、僕の中での一番美しい崩しであるワンツーでの突破も伸二&俊輔コンビによってみごとに一点目につながった。これは完璧にディフェンスを翻弄していて素晴らしかった。ショートパスなら早いテンポで崩せる。という見本のような崩しだった。中山は本当に決めるのは簡単そうだったから。
 しかしオフェンスはどうしても意識が空回りしている感じはぬぐえなかった。中山も積極的にポストプレーをしていた。両サイドからのいい折り返しもあった。でもそのボールのくるところに人がいない。いいボールが入っても転がっても受ける人がいなければ、話にならない。いろいろな攻めの形の練習もしているはずなのに、全体で「ここはこう攻めるんだ」というような意識の疎通はイマイチできていなかった気がした。
 後半になると小野のプレーも前半より良くなってきたし、途中で平野に代って入った服部は外ばかりでなくあわよくば自分で中に切れ込んでいってやろうというスタンスでよかったと思う。「サイドから崩せ」という指示が出たら徹底的にサイド突破に固執という頭の固さはあまり好きではない。
 結果として3得点。でもその3点には全て中山隊長が絡んで「柱」ぶりを見せてくれた。中村、小野もそれぞれワンアシストずつで2列目の働きを数字で残した。
 でもマカオのディフェンスも立派だった。見習うところが多くあったと思う。特に神がかり的なディフェンスで多分3点ぐらい守った5番の選手はすごかった。自らいいプレーをして守備陣を鼓舞する姿は以前の日本のディフェンスの支柱だった柱谷を思わせた。まあ、ゴールキックが妙に飛ぶでかくて濃いキーパーも(ナニワーノケンジを思わせ、)かなりいい反応を見せていたし、その辺は植田監督が植え付けた意識ではなかろうか。気持ちだけでも格上国相手にあれだけ守れるのだ。アジアカップ本戦ではそれに技術が伴う。もっと攻撃面を強化しなければ、王座には返り咲けないだろう。
 しかし、悪いことばかりではない。コンディションはイマイチっぽかったけれど小野のプレーがだんだん良くなってきていた。俊輔も持ち味を出すようになってきたし、もちろん完全にボランチのポジションを掴み取って君臨し始めたイナもソツないディフェンスを披露した。試合を重ねるごとに攻撃意識も見えるようになった。
 本戦は秋だ。それまでにJ1,J2で精進する時間がある。練習試合もある。そこでコンディションを上げていって秋に(オリンピック代表は夏から)ピークを迎えるようにもっていけばいい。フォワードにしてもJリーグの中できっと調子のいい選手が出てくる。
 中山隊長の「まだまだですよ」という言葉にうなずきつつ、秋が楽しみになってきた。