差出人: Takagi
送信日時: 2001年6月1日金曜日 0:23
件名:
げっひー的観戦記(01・5・31 FIFAコンフェデレーションズカップ予選リーグ 日本VSカナダ)
Result:3−0 得点者:小野、西澤(森島)、森島(小野)
メンバー:
西澤
森島
中田英
小野 (→三浦) 伊東
稲本 戸田 (→明神)
中田浩 森岡 上村
(→中山)
川口<CAP>
げっひー的MIP:前半凌いだ川口。
文章方針:つべこべ言わずに歓喜でしょ!!
今日の名言:「右に左に明神です」
さあ、なんだかんだ言って始まりました、コンフェデレーションズカップ。開催まではFIFAともめ、韓国ともめ、また開催が近づいても、やれジダンが不参加だのブラジルはBチームだの、なんかマスコミは盛り上げる気あんの?っていうくらいネガティブなニュースが多かったこの大会。しかしフタを開けてみればやはり国際Aマッチ。フランスは(5−0というどっかで見たことあるスコアで)韓国を一蹴し、ブラジルは黒ヒョウエムボマ率いるカメルーンを2−0で下した。強い国は強いのだ。
とはいえホームのワールドカップまであと1年。ここのところスペイン、フランスといった強い相手と他流試合を行ってもまれてきている日本にとって、また絶好の機会。日本としても名波、俊輔、高原といった中心メンバーをケガなどで欠いたが、日本最高のトップ下とセンターフォワードは帰ってきたし、ディフェンシブにならないでどれだけやれるかが試される戦いになるね。と思った。カナダには勝ちたいけれど、カメルーンとブラジルにはある程度やれれば、というところだろう。ある程度、とは糧を得られるレベルの試合、ということ。もちろん勝利は信じているが、祈っているが、一流との試合ならば負けても、蹴散らされても得る物はあるはず。あの現在世界ランク一位のフランスだって前々回のワールドカップアメリカ大会は欧州予選で敗退したんだから。(間違ってたらゴメンナサイ。)そういう「屈辱」は脱皮のきっかけなのですよ。
さあ、大盛り上がりの新潟スタジアム「ビッグスワン」でスタメン発表!フォーメーションは3−6−1。ワントップに西澤を置き、その下に森島、中田ヒデが入り、左サイドに小野、右は伊東テル。ボランチはイナと戸田のシドニー世代コンビの2枚でスリーバックは左から中田浩二、森岡、ちょっと髪切った上村。そしてゴールマウスを守るのはスペイン戦で光った川口。腕にはキャプテンマーク。
体格差のある相手にワントップでいけるかなあ、というのが正直な感想。まあ森島はほぼフォワード的な位置であるけれど、まあこの形を見てみるか、という感じ。あとは小野が左サイドでどれだけやれるか、という心配はあったけどね。初スタメンの戸田に関しては、もともとシドニーのチームでスタメンを張ってたくらいだから経験もあるし、周りにはテルとか森岡のエスパルスつながりがいるのでやりやすいだろう、という印象。またトップのセレッソつながりはどうしてもハッサンU世国王杯を思い出してウキウキしてしまう。まあ心配要素を挙げるとすれば森島のオーバートレーニング症候群の後遺症とスペインであまりゲームに出てない西澤の試合勘、だったかな。守備に関しては、上村も2試合目だし、スリーバックの前にダブルボランチという見ていて一番落ち着く形なのであまり危惧はしていなかった。
そしてキックオフ。どうも立ち上がりは両者相手を探りながら、という感じ。日本も徐々に形を作っていこうかな、という感じ。いきなりガシガシ攻め込まれたらバタバタしちゃいがちなところだったけど、まあ相手の力という要素もあるかもしれないが、まずまずのマイペースな立ち上がりだったと思う。
課題の中盤のプレス意識はまずまず。そして攻めの形になったときに大きいのは森島。運動量やスペースへの嗅覚はいつもながら感心するが、この森島と言う選手はボールをしっかり持てるのが強い。球が足につく、という感じ。あの身体でタメを作れるのは凄い。
そして西澤。スペインではイマイチ力を発揮できないが、日本に帰ってくればやっぱりフォワードの中心だなあと思わせる前線での動き。ズバッと裏をついてキーパーと一対一になる動きには、やっぱり酔うねえ。
また、どんなもんかなあ、と思った小野の左サイドもなかなか味があって良かった。例えばアレックスみたいにドリブルで勝負して、突っかけて、みたいな動きのタイプではないが、やはり天性のテクニシャン。ワンタッチのボールコントロールで裏に抜け出てみたり、またサイドのスペースへの巧みな飛び出しもあって、なかなか魅せてくれた。以前代表の試合で右サイドに入った時はそんなに効いてなかった印象があるのに、左のほうが生きるのかもね。
全体のオフェンスとしてはフィールドを広く広く使おうとしてる印象。両サイドは本職ではないが、つなぐサッカーの中で開いていく展開が多く、ポジションチェンジを繰り返しながらサイドも含めて全体で押し上げていくような感じだった。イナも時折2列目あたりのスペースに飛び込んでいく。ミドルシュートも織り交ぜていかないとゴール前ばかり固められてしまうからね。それにしてもこう「個」より「組織」で攻める時には森島は欠かせないなあ、と思ってしまう。点につながっていく動きをするからね。日本のトップ下には(ヒデなり俊輔なりの)パサー1人と森島タイプを並べるのはやっぱり効果的なんだよね。
でもちょっと守備で気にかかるところが。スペイン戦ではいいディフェンスを披露した上村だが、今日はどうもピンチを招くプレーが多かったのだ。「Jリーグで3本指に入る相手に嫌われるディフェンダー」らしく、しつこく食らいついていくディフェンスも見せてくれたが、それ以上に簡単に1対1の局面であっさり抜かれるシーンもいくつかあったし、また一番気をつけなければならない軽率なパスミスも何本かあった。カナダの決定力不足にも助けられた感もあったけど、もしあのパスミスで失点し、負けたりしたら間違いなく戦犯扱いだったろうなあ、と思う。しかし、こういう国際試合で例えば失点につながるミスをするのも長い目で見れば本人のためであるのかもしれない。特に上村みたいな”強い”ディフェンダーはトルシエジャパンにはあまりいないから。2002年に必要な人材だからね。
カナダのほうが決定的なシーンはやや多かったが、ゴールネットは揺れぬまま時間は進む。カナダはもっと体格を生かして激しい当たりでくるのかなあと思ったけれど、そんな激しくはなく、そんなに日本代表も疲労はなさそうだった。こういう展開は日本向きとも言えたと思う。
でもパスはカナダのほうがつながっていた。でもこれは一概に悪いことではなくて、つなぐカナダに対し、日本は特に小野、ヒデといったパサーから裏を狙ったキラーパスが何本も発射されていたのだ。確かにそういう鋭いパスはなかなか受け手と意志がかみ合わない事もあるし、受け手が感じていても追いつけない事も多い。でもそういうパスを数多く繰り出すのは攻撃の意識を高く保つ、あるいは更に高めるのにかなり有効だと思う。今日の結果から言えば間違いなく有効だった。
そして今日のトルシエは前半から動いた。ピンチを招くプレーが目に付いた上村に代え、中山投入。中山西澤のツートップ、イナのワンボランチとフォーメーションが変わり、戸田が最終ラインの右サイドにそのまま入った。そういえば先日の静岡ダービーでも戸田は出場停止の斉藤の代わりに右サイドのセンターバックに入ってたなあ、なんて思った。そして戸田に関して勝手な推測だが、縛れるくらい長かった髪をズバッと切ったのはトルシエの通訳と間違われるのを避けるためだった・・・らおもしろいのに。なんてね。
でもこの思い切ったフォーメーション変更はとりあえず悪い方へ転がる。守備陣を明らかに一枚減らしたため、サイドへのケアがややおろそかになり、カナダの猛攻を許す事になる。2本くらい決定的なシュートを打たれたが、ここは川口が踏ん張った。ここでゴールを許してれば後半の展開はがらっと変わったかもしれないところだったので、このファインセーブ達は大きかった。でもそこから前に展開しようとすると、どうも中盤でのボール回しがこの時間は完全にカナダに読まれ、前々攻めの形を作る前にまたカナダボールになってしまい、なんとか守って、という中で前半終了のホイッスル。
そしてこのメンバーで後半が始まる。後半は守備に関してはどれだけカバーリングを徹底できるか、攻撃に関してはカウンターに頼るのではなく、どれだけ形を作って攻めて、ゴールにつなげていくか、というところが課題であるような気がした。
前半から貫いてきた意識の高いパスをどれだけ継続できるか。キックに関してはかなり精度の高いメンバーが揃っているので、あとはもうちょっと疎通だけすればいい形は作れそうなワキウク感があったね。
そしてやっと開花する。しかも立て続けに。まあ多少主審の笛に助けられた気もしたけど、ゴール正面のかなり近い位置でゲットした直接フリーキックを小野がカナダゴールに叩き込んだ。このキックはもうカンペキ。「キーパー一歩も動けませ〜ん!」の世界であった。そしてそのゴールに僕が酔ってる間に、中山隊長のライン際の粘りからの折り返しを森島が更に小さく折り返して、フィニッシュは西澤の頭。追加点。しかもキーパーの二アサイドをぶち抜いたファインゴール。興奮しましたねえ。しかも西澤のゴールはいつも豪快。
中盤にキープのできる選手が多いのも(後半になって前半よりもキープが出来てきたのも)効いていた。キープする時間の「静」から一気に畳み掛ける「剛」へのリズム。また森島やヒデの動きがスペースを生み、そこに他の選手が入ってくる。
小野もともすれば下がりすぎとも言われるサイドバック気味の動きだったが、今回は逆にそれが良かった。イナなどから左サイドのスペースに開くロングパスに反応して飛び込んでいくプレーは見ごたえがあった。
カナダは攻撃には勢いがあって脅威だったけれど、どうもフィニッシュの精度がイマイチだった。精度の高いアタッカーがいたら0点で終わることはなかった気がする。あさってのカメルーン、そしてその後のブラジル戦はもっと守備の意識を高く保つようにしなきゃ。
ここからは「守備の黒子」明神や、なんと10番を背負った三浦アツが投入され、2点ビハインドでちょっとテンションが下がり気味のカナダに対して優位に試合を進め、そして小野の供給しつづけた精度の高いパスについに完璧に反応した森島がとどめの一発を叩き込み、勝負あり。
ロスタイムに失点しなかったのも良かったです。今日はいい試合を見せてもらいました。早くカメルーン戦が見たいよう。
