差出人: Takagi [Haruru@swm.root.or.jp]
送信日時: 2000年3月30日木曜日 18:04
件名:
げひら的観戦記(3・29五輪代表強化試合:vsニュ―ジーランド五輪
代表)
<RESULT>4−0 得点者:中村(本山)、高原、高原、小島
<メンバー>
平瀬(→小島) 高原(→北嶋)
本山(→藤本) 中村 市川(→西)
稲本(→酒井) 明神
中田浩 松田〔CAP〕 中澤
曽ヶ端
<げひら的MIP>しゅんす・・・いや、今回はイナに。
<文章方針>満足で、期待がこもって。
4−0。相手が五輪出場には、まだあと一勝が必要なニュージーランドでしかもベストメンバーでなかったとして、寄せ付けない圧勝。もっと点が取れたかもしれないというのもあるけど、この前のフル代表のことを思えば、まあ満足の内容といえよう。
試合前のスタメン予想では五輪代表に入ったばかりの北嶋と西がスタメンに入るという声が多かったが、いざフタを開けてみると、ツートップには高原と平瀬。そして右ウイングには市川が入った。他のメンバーは大方の予想通りだったが、この辺にトルシエの「本当に勝ちたい」気持ちが現れていたようにも伺える。ツートップも(本山&市川の)両ウイングもいわば、「本命」。シドニーのスターターであって欲しいメンバーだ。少なくとも、僕個人的には。(俊輔は別格として)特にこのオフェンス陣に”このチームとやり慣れた”メンバーを配置してきたのは嬉しかった。チームがチームとして成り立ってくるから。
特に前半は最高だった。特に高原のゴールへの意識は最近の代表のFWには見られなかったほど高かった。平瀬と2人でともすればガムシャラにゴールに向かうその姿勢は惜しいシュートも伴って、とってもダイナミックでブラウン管越しでも見ていてワクワクした。そしてそれを演出していたのが、中盤の真ん中3人、俊輔、イナ、明神だった。俊輔は言わなくてもいろんな選択肢を使ってフォワードにボールを供給する。ツートップとの意識もかなり近いところにあって、その辺もトルシエが”やり慣れた”2人を配置した理由なんだろうな、と思った。でもそうかと思えばその後ろの2人もこぼれ球を拾っては再びオフェンスにつなげていく。特にイナは磨きのかかったフィードに加えてミドルシュートを打ってみたり、ゴール前に持ち込んでみたりとかなり”リベロ的”だった。しかも(プレスが効いていたこともあると思うけど)パスカットも冴えていたし、タメも作っていた。最近の試合の中では一番理想に近い動きが出来た試合なのではなかっただろうか。もちろんそれも他の2人のバランス取りあってのものなんだけど・・・。
ディフェンスラインはいよいよ(両サイドは)固定されてきた。中田浩と中澤は徐々に代表キャップ数を重ねて安定してきた。その真ん中に「いきなり」座った松田も怖いくらい落ちついていた。ちょっと中田浩がプレスを受けると安易なミスを犯してしまうのが気になったぐらいで、成長を感じた。だけど殆ど危ない場面もなかったから悪い評価のしようがないけど。というわけで曽ヶ端も余計悪い評価のしようがない。
そして生まれた一点目。BS1の解説の柱谷氏が言っていた「俊輔の頭脳と技術を使ったキック」という表現そのとおりだと思う。フリーキックをすぐ横にいた本山にちょこんと出して、キーパーを逆に振ってから、俊輔の左足で蹴られたボールは曲がって落ちてゴールの右上に突き刺さった。興奮。こんなに興奮したフリーキックは久しぶりだった。ビューティフルかつワンダフル。これを見るだけでも今日のチケットの意味があっただろう。
しかしそこからゴールラッシュが生まれたわけではなく、勢いづいたもののちょっと無得点の時間が流れた。ちょっと気になったのは両ウイング。ちょっとついていってない印象を受けた。でも本山は(こう言ったら曽ヶ端もそうだけど)アントラーズであまり出場機会はなく、市川もこのチームでは久しぶりだし、この前日本平で見たときも調子は今ひとつという感じだった。でもさっき書いたようにこの二人は間違いなくシドニーのスターターであって欲しいし、そのためにはトルシエには2人を必ず召集して試合で使ってこのチームにもっと溶け込ませて欲しい。大分固まってきたメンバーの中で両ウイングがまだテストの繰り返しではサイドがどうしても置いていかれてしまう気がする。そろそろある程度の固定を。そしてイチ&モトにはサイドの突破と正確無比なクロス(byなをき)を。期待しているだけに厳しくなってしまうが、早くもっとチームにフィットを。
しかし両サイドがそうであっても彼らはもともとある程度のパフォーマンスの出来る選手たちだし、主に俊輔、そしてイナを起点とした想像力の生み出す軽快な、豪快なパスが出てくる。この試合程度の当たりでは俊輔のプレーは止まらない。・・・てことはJ1の中盤のディフェンスのが上なのかな?
それはさておき、このチームは手数が増えてきたなあ、という印象。セットプレーも流れからでもいろんな形でゴールに迫ってくれる。これはやっぱりメンバーがある程度固まってきたことが大きいと思う。互いに互いをもっと分かってきている。これはとっても嬉しいこと。ただショートパスの精度がちょっと悪かったような気がする。これはもらい方もあるだろうけどそういうプレーが続くと俊輔さまもちょっとイライラ気味に見えた。そこはもうちょっと丁寧にやって欲しい。弱いパスということではなく。
しかしそんな中でも常に攻めつづけ、また攻めの意識を失わなかったことが実る。それが二点目の高原。あのシュートは「いつでもこい」という気持ちを持ちつづけていなかったら打てなかったと思う。あの不意のこぼれ球を上手くワンとラップでシュート。外したら怒られるけど、結構難しいシュートだったのではないか?ああいうプレーを見ると頼もしくなる。もちろん呼び水の中田浩二のロングシュートも良かったけどね。彼のロングキックはかなりの武器になりそう。正確だしね。
そして2-0で折り返し。そして後半からは浪速のもう一人の期待の星、小島が投入された。小島も呼ばれたり呼ばれなかったりでそんなにこのチームとは長くはないが、あの突破力が機能すればかなりのオプションになりうると思う。まあ二点リードの精神的余裕もあってか動き回ってゴールに迫った。でもちょっと長めのところからは積極的に打っていくのに、肝心のゴール前で決定機にパスを出してしまったりしたのはちょっと残念だった。全体の意識が一直線にゴールに向かっている中でのことだったから。イナも何回もいい上がりを見せて、惜しいシュートも多かった。一点は取ってほしかったけど、それは次にお預け。・・・てことは韓国戦か?
3点目の高原は俊輔の得点といってもいいだろう。左サイドからの俊輔のクロスは本当にいやらしいところにいって、(まあ、キーパーのミスといえばそれまでなんだけど)キーパーがこぼしたところを押し込んだ。これも意識の高さ。
4点目の小島はこれはイナのゴールといってもいい(ちと強引か?)。イナが持ち込んでディフェンスとゴールキーパーと交錯してこぼれたのを押し込んだ。ガンバコンビであげた一点。イナが誰よりもうれしそうだったというその表情を見たかった。
そしてどんどん前の選手が変わっていく。交代枠を3人以上使うのも珍しかったが藤本、北嶋、西と新しい選手が相次いで投入される。一番効いたのは藤本チカラだろう。トップ下でのパスの出所が2箇所になったから。藤本が入って俊輔が左に流れる動きが多くなったのも良かったと思う。中盤はバランスをとりながらフレックスに動くのが効果的のように思う。
しかし、後半どんどん攻めにからんでいくイナとは対照的に明神がちっとも画面に写らなくなってしまった。おそらく守備的な位置でバランス取りに重きをおいていたのだろう。明神の、そしてあるいは俊輔のカバーなくしてイナはあそこまでは上がれないだろうから。
しかし後半は2点を取ったものの前半より攻撃の形は作れなかったように思う。まあそれは新しいオプションを作るための犠牲だと思えばいいのではないか。北嶋や西もチームにフィットしてくれば重要なオプションになってくると思う。カードはたくさんあっていい。まだ小野、宮本、そしてヒデというカードも日本にはあるのだし・・・。
でもころころメンバーの入れ替わるフル代表と違ってこの五輪代表はある程度のメンバーが固まってきて、チームとして育っているという印象を受けた。もちろん競争もなくては困るが、良くも悪くも組織力は日本の特徴なのだから。
やっぱりもうちょっと骨のある相手との試合を見てみたい。シドニーでは少なくともニュージーランドと同じかそれ以上の実力のチームとやれるのだ。どこまでいけるか。この成長するチームは。
でもなによりイナファンとしては後半酒井と交代してイナがベンチに戻るときに起こった大きな拍手が嬉しかった。
