差出人: Takagi
送信日時: 2000年10月30日月曜日 13:54
件名: げひら的観戦記(10.30 アジアカップ決勝 日本vsサウジアラビア)

<Result>1−0 得点者:望月中村)
<メンバー>

    
西澤   高原
           (→
柳沢)(→)  
         
森島
 
中村      (→小野
               
望月
      
名波
          明神
           

  服部    松田   森岡
(CAP)

         川口


<げひら的MIP>
望月(攻)、川口(守)。
<文章方針>とにかくオメデトウ♪

 アジア王者。このいい響きを手に入れるために、また日本はいい経験が出来た。夜中に起きてリアルタイムで見て、そんな感慨が深い。決勝の勝利はラッキーでもあったかもしれないが、「アジアカップの決勝では負けない」というジンクスがこれから構築されるのだから良しとしよう(笑)。
 でもまさかサウジと当たるとは。そして韓国と当たらずに終わるとは。僕は決勝ではまた日韓戦なのだろうなあと思っていた。いくらサウジが日本に惨敗したあとの監督交代で”蘇った”としてもさすがに韓国の壁は厚いだろうと思ったのだ。でもその韓国を撃破して決勝に駒を進めてきたので、「こりゃあホンモノかなあ」とやっと思った。
 試合前の選手たちは揃って「予選の時のサウジと同じチームだと思ったら間違いなくやられる」というコメントを発していた。このコメントがどこまで本心から出たものだったのか。そして”蘇った”サウジはもちろん日本へのリベンジを何よりも心に抱いてくるはずで、そのへんの「気持ちでの戦い」も大きいと思っていた。そして予選ではズタズタにされたサウジのマンマークでのディフェンスはどうなるのか?また日本チームでは中盤の底を支え、攻守に渡って活躍してきた
イナが出場停止で、その代わりにおそらく入るであろう望月がどれだけチームにフィットできるかというのがちょっと心配でもあった。このアジアカップでは途中投入の時ではいまいちチームに馴染めなかった感を受けたので。

 そしてファイナルマッチが始まる。日本のスタメンは予想通り
イナの代わりのボランチのポジションには明神が入り、右サイドには望月が入った。他のメンバーは今までのベストメンバー。センターバックには松田。さあ、どんな展開になるかとわくわくしながらキックオフ。深夜1時45分。
 サウジは初めから徹底して長めのボールで身体能力を生かして裏を取ろうとするサッカー。でも日本のディフェンスも良く見えている。
川口もちょっと立ち上がりは連係面で危なっかしい場面もあったけれど、とりあえずはよく守っている。
 今日の日本の立ち上がりはまあ落ち着いてるかな、という感じ。ちょっとピッチの芝の状態も悪くなってきてるようでパス回しもどっちかといえば慎重にも見えるくらいだが、いいクサビのプレーも入ってるし、そうなるといい形も必然的に出来てくる。でも予選の時みたいに簡単に崩せるかと思いきや、いやいやそんなに甘くない。
モリシもいい飛び出しも見せるもののやっぱりかなりサウジのディフェンスにケアされていて、予選のときなら完全にフリーだっただろう局面も、ディフェンダーが食い下がってきてネットは揺らせない。

 そんな中、いきなりの窮地。
完全にゴール前で突破を許し、後手に回ってしまった
望月森岡が相手フォワードのユニフォームを後ろから相次いで引っ張り、ペナルティーエリア内で倒してしまったのだ。もちろんサウジにPKになり、望月にはイエローが出される。(このイエローは森岡に対してだと全ての人が誤解していた。)僕もつい「おいおい春(一番似の森岡)さんよー」と嘆いてしまったくらい。
 でも神が日本に味方したか?サウジのPKはわずかにワクをはずす。ラッキーラッキー。ここで先制を許していたらかなりサウジに追い風を与える所だったから。その点では
望月の、森岡の(危険ではあったけれども)”賭け”はいい方に転がったともいえる。
 とはいえそこからもサウジの裏狙いの攻撃は続き、やっぱり身体能力の差も多少はあるわけでどうしてもディフェンダーは後手に回ってる感じがした。なかなか中盤でもボールの出所を消せない中で、
服部は落ち着いた対処を見せていて、ありがたかった。当たりも強いしミスも少ない。本当に頼れる選手だと思う。
 そこからはサウジは相変わらず長いボールで、日本はショートパスでお互いに「一発」を狙う展開となる。だんだんピッチにも慣れてきたのか日本らしい攻撃が作れるようになってくる。そうなるとフォワードがファールをもらえる。そして訪れる日本の大きな武器セットプレー。セットプレーが増える事は日本のパワープレーと言ってもいいだろう。
 そして何よりも待ち望んでいた先制点もフリーキックから。左サイドから放たれた
俊輔のクロスを押し込んだのは・・・望月!それまでも再三明神とはまた違った持ち味で右サイドでいい攻撃にもからんでいた彼が先制ゴールをもたらした。しかも代表初ゴール。とはいえ今まで望月は惜しいシュート、あるいは押し込むも無情のオフサイド、というシーンが何度となくあったので今回の初ゴールは遅かった感さえある。しかし本当に貴重な局面で決めてくれた。そしてそのアシストとなった俊輔も見事。あの左足は至宝だね。
 当たり前ながら得点は最大のカンフル剤。日本に更にリズムが生まれ、サウジもロングボールが減ってきた。しかし追加点は取れず、前半は1−0で折り返す。

 さああと45分と後半が始まったが、この45分(プラスロスタイム5分)の長かった事。後半からサウジは左サイドに若い選手を投入してきて、いよいよ本気で攻めてきた。逆に日本はなかなかメンバーをいじりずらい。この11人の出来がいいだけに。3点差くらいついたら「守りの交代」も使えるだろうけれど、そんな展開は望めそうもないし、心配なのは疲労だった。けれどそれはサウジとて同じ。
 しかしそのサウジの左サイドの選手。相当キープ力、突破力がある。ここが1つの起点となって猛攻が始まる。どうしても組織で守るフラットスリーはドリブル突破を許すと辛い。そしてスリーバックがボールのほうにひきつけられてそこからこぼれた時に相手に決定機を許す。何度も危ないシーンがあり、日本はツートップもかなり引いてきて、もう完全な受身となる。
 しかし、どうも動きが重い。さすがに疲労もあるのか、
名波なんかちょっとプレーに精細を欠いてるような感じ。名波に限らなくてもパスミスが目立つ。技術は高い選手たちだけにこれは疲労なんだろうけど。
 そんな中で
森岡がファールをしてしまい、主審からイエローが示された。「退場??」とその瞬間は誰しもが思ったに違いない。しかし、2枚目のイエローのはずなのに何故か審判からはレッドカードは示されない。ここで初めてPKを与えた時に出たイエローが森岡に対してではなく望月にだったと知る。良かった。本当に命拾いしたよ。例えこれが世紀の誤審だったとしてもね。勝手だけど(笑)。
 しかし流れはずっとサウジペース。日本には1つの流れを変えるプレーが必要なのだけれどそうそううまくいかない。審判の笛もどちらかといえばアウェー。観客はほとんどアウェー。いつ点が入ってもおかしくないところで踏ん張ってくれたのが
川口だった。ホント後半は川口さまさま。何度もスーパーセーブ、ファインセーブを繰り返し、日本のゴールに立ちはだかる。そう、こういう川口が見たかった。準決勝までの出来ではまだ楢崎には届かない感じがしていたから。
 でもだんだんとサウジにしても疲れが目に付くようになる。いままでは面白いようにつなげられていたパスの精度が明らかに落ちてきた。そこで中盤を支配したかったけれど、どうも日本はサウジ以上に疲れていた。足が動いていない。パスも動きながら出していない。動きながら受けていない。そして前線につながってもサウジのディフェンダーのプレッシャーは相変わらずきつくてポストプレーーが全くと言っていいほど出来ない。確かに惜しい場面もあったけれど、完全に崩すと言う局面は日本のオフェンスでは見られなかった。
 もう死闘、むしろ消耗戦だった。BSの解説の原さんもつい我を忘れて「あっ」とか「おっ」とか声をあげる。それがほとんど日本の危ない局面だったのが残念だったけど。シドニーの時から感じていたことだが、本当に決定的な場面では解説者も我を忘れてプレーに夢中になる。
 しかし、危ない場面は続くもサウジのシュートの精度の低さととにかく
川口の神がかりセービング。川口は一体何点分を止めたことか。でもとにかく読みも身のこなしも冴えていて、この大会の試合の中で一番の出来だった。それが日本の最大のラッキーだったろう。
 そして時計の針もゆっくりながら45分に近づき、いよいよ日本もメンバーをいじる。でも最初に
高原に代わって投入された柳沢は数プレー精細を欠いて、すぐにに変えられた。トルシエがときどきやるいわば「制裁の再交代」だった。でもまさかこの決勝でやるとは。これにはびっくりした。確かにトルシエの強い理念は示された。しかしそれによって交代のカードが一枚減ったのだ。俊輔名波も相当疲れていた。ヤナギも悪いなりに何らかの指示だけで修正はできなかったのかと思う。まあ結果がなんとか良かったからいいけど。
 そしてもう1つの交代枠で
モリシにかわって小野が投入。これは嬉しかったね。ワールドユースで準優勝したときに累積警告で決勝のピッチに立てなかった小野だったからやっぱり場所は違えど決勝のピッチには立たせてあげたかった。それは日本にとっても小野にとっても大きな事だろうと思うから。
 でもロスタイムも5分と長かったが、日本は終了間際の逃げ切りのプレーを見せる。できるだけ時間をかけてリスクの少ない相手コーナー近くでキープする。
西澤小野がその仕事をきっちりこなす。守ってもやっとここでオフサイドがいくつか取れた。

 そして訪れた長い長いロスタイムのあとの長い笛。歓喜の瞬間。
 勝ち取ったアジアカップ。オメデトウ。
 とにかく歴史に名前が残った。勝ち取った。

 インタビューの時、トルシエが
名波の頭をなでた。「戦争のような戦いを制したのが大きい」と名波は言った。文句ナシの大会MVP。やはり日本にこの男は欠かせなかった。

 そして表彰式。選手、監督からチームドクターに至るまで、全ての日本チームメンバーに金メダルが贈られる。これは素晴らしいことだと思った。やるじゃん、AFCと思ったね。
 記念撮影のあと、
森岡が(猪木のまねをする)春一番のマネをして、「1,2,3、ダー」と拳を振り上げていたが、よっぽど嬉しかったんだろうなあと思う。彼はあまり春一番に似てると言われるのは喜ばないはずだから。
 でもトルシエの胴上げが見れて良かった。結果が出た。2002年に向けてまたいいスタートラインが引けたのが大きいと思う。

 おめでとう。トルシエニッポン。