差出人: Takagi Shigehira 件名 : 6月20日 〜♪あなたの 涙がこぼれる時 再び ドラマが始まる〜 日時 : 1999年6月21日 16:36  ・・・薄明るくはれぼったい街に踏切の音だけが響き、休みの朝のおそらく寂しげ な普通電車がゴーッと音を立てて鉄橋を渡る。川は昨日まで、いや今朝方までの雨に よりだいぶ泥が混じっている。今日も一日こんな天気なのかなあ、と光も当たらず、 風に揺れることもない枝達をくすんだガラス越しにぼんやり見つめていると、また踏 切が鳴り始めた・・・。  梅雨まっただ中のとある日曜日の7時過ぎのベッドからの景色だ。 病院の中はもちろんもう既に動き出していて、歯を磨く音やスリッパの音、看護婦さ んの押すワゴンの音が行き交っている。でも不思議なもので、休みの日の魔力とでも いうのか、窓の外の街は、この時間でもまだ静けさを保っているようにも見える。も う少しゆっくりとお眠りなさい、街よ。あなたお疲れなんだから、という感じだ。  さて、昨日は主治医の上条先生がいらして、来週のアタマからいよいよホルモン剤 を一日6錠ペースに減らしますから、という話になった。覚えているだろうか、この 「一日6錠」という合言葉を。4月の20日ぐらいに一日10錠から始まったこのホ ルモン剤の歴史。経過が(先生曰く)非常に良好に来たため、最初の時点での「退院 のめやす」のここまで、当初の予定より一ヶ月近く早く来てしまった。来てしまっ た、なんて表現を使うとまるで僕がそれを望んでいないみたいだが、これは本当にあ りがたいことだと思っている。最初に「薬に頼らなくていいレベルまで回復する確率 は6割ですね」と言われているし、今のところ、その6割の中に入れている可能性が 非常に高いというわけで、楽観してはいけないが、やはり嬉しい。  そしてたどり着く、一日6錠の世界。これで少し経過を見て問題がないようなら、 外来に切り替えましょう、ということだ。つまりは退院。  いよいよここまで来た。はっきり退院が見えてきた。焦っては、焦っては決してい けないけれど。  このノート(←原作用)を使い切るのと退院と、どちらが早いかは結構いい勝負か もしれないな。 ##################                  たかぎ しげひら ##################