差出人: Takagi Shigehira 件名 : 6月16日 〜♪行かなくちゃ 君に会いに行かなくちゃ〜 日時 : 1999年6月16日 16:53  ・・・雨音?あ、けっこう激しく降ってる・・・。夢から覚める間際でそう思った か、思わずか。でも6時少し前に目を覚ましてみると、サーッとうっすら雨音が聞こ えて、少々湿っぽい涼しい風も網戸越しに入ってくる。寝付くのにそれほど時間はか からなかったハズなのに、それでもその時点で汗を体感するほど暑かった昨日の夜が ウソのよう。  窓の外を眺めていると、今日退院になる”逆サイド窓側”のゴミさんも起き出して きて、「今朝は涼しくていいですね」「そうだねえ。朝方は結構な量、雨が降ったん じゃないかな」という話になった。そうか、やっぱり激しく降ってたんだなあ、と自 分の睡眠学習ぶりに感心しながら、ゴミさんと洗顔に行った。  ところで、今僕の枕元にはどっしりとウサギがたたずんでいる。ウサギ、といって も顔だけのぬいぐるみで、そういってもタテ30cm×ヨコ50cmぐらいあるデカい物 で、この週末に遊びに来てくれた後輩の女の子アヤコ(仮名)にもらった物だ。真っ 白い顔でまんまるい大きな目と、鼻。そしてぴょろん、と耳。 「クレヨンしんちゃんのシロじゃない?」と看護婦さんに言われたりしたが、いえい えウサギです。非常にカワイくて、今一番のお気に入りだ。カワイイ物好きの血を常 にくすぐられている。  そういえば、お見舞い、差し入れで色々な物をもらって、それはできる限りベッド 周りに飾っているので、この空間はかなり僕色で染まっている。  夏風景(なつげしき)という極太三連発の打ち上げ花火がある。「キャミ」のダン シングベイビーのストラップがぶら下がっている。ピンクのカエルの孫の手が逆さ吊 りになっている。・・・そういえばカエルモノを多くもらうなあ。(現在、このベッ ド周りに3匹はいる。)飾っているけれど、彼女は相当のカエル嫌いなので、これ以 上増えたらさすがに怖がるかなあ、とも思う。まあ、入院もあと2,3週といったと ころだろうが・・・。  昨日は久々にエッセイを書いた。相変わらずの行き当たりばったりエッセイだが、 その日に書いた物をその日に送信というリアルタイムスタイルでいけて、自分的には けっこう満足。 その調子で今日も書くぞー、と思っていたのだが、ちょっと今朝ハガキを書く用を思 い立って、何通かハガキを書いた。結構いつもハガキを書くときはぐわっと思い立っ て、ババッと書いてしまう。テンションと勢いで。入院してからというもの、デジタ ルでもアナログでもよく手紙を出している。(健常時比)もともと筆無精な方なのだ が、ふと時間があると、ふと書く。下手な字だけど、手書きの暖かさ(?)だ。  手紙も投函し、さてさて日記部を・・・と少し書き始めたところ、「いのちゃん」 が現れた。例の如く、お互いの傷をなめ合いながら、僕は、あ、そうそうとこの前君 のマドンナがお見舞いに来たよ、と写真を見せびらかした。「今度はいつ来るかな ?」と言うから「もう来ないでしょう」とあしらったのに、「会いたいって言って たって言っといて」と言われた。あーはいはい。またいつかね、いのちゃん。 そんなこんなトークをしていたら、いつの間にか昼になっていた。  外を見てみると、雲がなんか重たい。風も湿っぽい。一雨きそうっすね、とルーム メイトと話す。しかし他のルームメイト達はそこから野菜作りの話に入っていってし まって、ついていけなくなった。  昨日はあまりに暑く、横になっているだけで汗がにじむほどだったので、今日の午 後ぐらいは涼しくあって欲しいなあ、と思った午後の入り口。   <叙情詩:恋心プレイバック>    初恋は 小学生の時   「ゴジラ」というあだ名の女だった。    その頃から好きになると、     「この子と結婚したら どんな家庭になるだろう」と      少しマセたことを考える子だった。  中学は惚れっぽかったような そうでないような   自分はしょっちゅうドキドキしてたけど    それよりもホレたハレたの噂で     右往左往する周囲を右往左往させるのも楽しんだ。  高校の失恋は痛いのばっかりだ   クラスメイトを屋上に呼びだしてもらって    でも来てくれなかったこと。     人生初の告白になる予定だったのに。      心にメチャメチャガソリン注いで臨んだのに。       「ヒトは必ず誰かに愛されてるといえるよ」        マッキーになぐさめられてみる。  テニス部の子を好きになった。   ほとんど話したこともない。    でも好きになった。     手紙を書いた。      「花火を見に行こう」       返事は来なかった。        いつかの夏の話。  でも痛かったけれど、   ムチャクチャカッコ悪かったけど、    無理にでも自分を動かさなくちゃ     前に進めないとわかった。    シェルターの中で叫んでも届かないと、     一発ぐらい流れ弾に当たったとして、      そんなに痛くないんだってわかった。  最初の彼女は手もつながなかった。   松本駅から塩尻駅までつないでいいものかずっと迷ってた。  2番目の彼女とも手はつなげなかった。   浮き足だった恋は浮き足だったうちに終わってた。  3番目の彼女は教習所で知り合った。   一瞬のクライマックスは、あまりに美しく輝く。  4番目の彼女は学祭で盛り上がった。   5万で買ったカローラFXで、マッキーのアルバムを聞きながら相模湖へ行った。  5番目の彼女はまた秋に始まった。   クリスマスイブの苗場のゲレンデでケンカした。  そして、今に至るぜ、6番目の彼女と。    過去の上に立ち、       また今の上に立っていくぜ。  ファーストキスは18だ   童貞捨てたのも18だ    初めてのラブホは22になってた  ちなみに浮気はしたことがない。            文句あるか。 ###########################            叙情詩は原文のまま採用しました         たかぎ しげひら (暑くて暑い南311号室より) ###########################