『マルコによる福音書・マタイによる福音書』佐藤研訳 岩波書店 1995.6P178

マタイ 20:1-16

葡萄園の労働者たちとその主人の譬

 したがって、天の王国は〔次のような〕家の主人と同じである。〔つま
り〕彼は、自分の葡萄園に労働者を雇おうとして、夜が明けると同時に外へ出て行った。彼は、労働者たちと一日一デナリオンの約束をし、彼らを彼の葡萄園に遣(つかわ)した。また彼は、第三刻頃出て行くと、仕事もなく市場に立っているほかの者たちを見、その者たちに言った、『君たちも葡萄園へ行きなさい。そうすればそれなりのものをやるから』。そこで彼らは〔葡萄園へ〕おもむいた。〔さらに〕彼は再び第六刻頃と第九刻頃に出て行っ
て、同じようにした。彼はまた第一一刻頃出て行くと、ほかの者たちが〔いぜんとして〕立っているのに気がついた。そこで彼は彼らに言う、『なぜ君たちはここで一日中、何もしないで立っているのか』。彼らは彼にいう、
『誰も俺たちを雇ってはくれないから』。彼は彼らに言う、『君たちも葡萄園へ行きなさい』。夕方になって、葡萄園の主人は彼の管理人に言う、『労働者たちを呼んで、最後の者たちから始めて最初の者たちに至るまで、彼らに賃金を払うのだ』。そこで、第一一刻頃〔雇われた〕者たちがやって来
て、一人一デナリオンずつもらった。そこで最初に〔雇われた〕者たちがやって来て、もっと多くもらえるだろうと胸算用した。しかしその彼らもま
た、一デナリオンずつ〔しか〕もら〔わなか〕った。そこで受け取ると、彼らは家の主人に対して不満を漏らして言った。『この最後に〔来た〕奴ら
は、一時間しか働かなかった。それなのにあなたは、こいつらを、日中の辛さと暑さにもめげずに働いた俺たちと同じように扱った』。しかし彼は、彼らの一人に対して答えて言った、『友よ、私は君に対して不正を行なってはいない。君は私と一デナリオンの約束をしたではないか。君の取り分を取って〔とっとと〕行け。私はこの最後の者にも、君に対してと同じように払ってやりたいのだ。〔あるいは〕私のものについて、私が好きなようにするのがいけないとでも言うのか。それとも、私が寛大なものだから、君の目がよこしまになったのか』。

 このように、最初の者たちは最後の者たちになるであろう。そして最後の者たちは最初の者たちに〔なるであろう〕。

Wittenberg  3b

画像:
Petrus Christus (c.1410-72/3)
”Portrait of a Young Lady”
c.1470,
Gemäldegalerie, Berlin.

(部分)

写真:マロニエ

『旧約聖書』「詩篇」松田伊作訳 岩波書店 1998.6
P229

詩篇80-13

なにゆえ、その石垣をあなたは破ったのですか、
道を通る者がみなそれ〔から実〕を摘み取り、
森の猪がそれを食い荒らし、
野原のいなごがそれを食らい尽くすのです。
万軍の神よ、どうか引き返して下さい。
天から眺めて見、
この葡萄の木をおとずれて下さい、
あなたの右手が植えた、その株を。
そしてあなたのために強くなさった子の上に。
それは火に焼かれ、切り倒されている。

写真:
”Christ on the Back of a Donkey,
Procession Image on Palm Sunday”
Franken c. 1520/30,
Neue Nationalgalerie, Berlin

『マルコによる福音書・マタイによる福音書』佐藤研訳 岩波書店 1995.6
P189

マタイ 21:33-

悪しき農夫たちの譬(マルコ一二1-12、ルカ二〇9-19

 あなたたちは、ほかの譬を聞け。一人の家の主人がいた。彼は葡萄園を造り、そのまわりに垣根を設け、その中に受け槽(ぶね)を掘り、見張りやぐらを建て、それを農夫たちに貸して旅立った。

画像:
”Maria mit dem Kind und singenden Engeln”,
Sandro Botticelli, um 1477,
Gemäldegalerie Berlin