『めっちゃハジけて!ガッツとばして!やるときゃやる そんなもんさぁ〜♪』
今日も紅南国を熱狂の渦へと巻き込む、超人気朱雀美声4人衆。その名もTHTC!
只今、紅南国全国ツアーの初日、首都栄陽でのライヴの真っ最中!
観客の大部分を占める娘たちがキャアキャアv叫ぶ中、絶好調で歌うは鬼宿こと魏、星宿、翼宿、井宿の4人。
歌の合間、ときどき炸裂する彼らの会話や、持ち技を活かした豪快なパフォーマンスがガシッとファンの心を鷲掴みにする。
「素敵ぃ !星宿さまぁvv」と叫ばれて、始めはやや渋っていた星宿も、今やもうノリノリだ。
「THTC最高や !!」
「……はぁ〜い!お疲れ様ぁ。ジュースでもどぉ?」
「おぅ、サンキュ。柳宿」
楽屋もといライヴを行った広場の横の宿で、汗だくで帰ってきた4人に柳宿が、待ち構えていたようにタオルとジュースを渡す。
「もぉう、素敵でしたわぁv星宿サマ」
「……疲れた」
星宿は、はぁ〜と大きなため息をつく。
いすに座って、鉄扇で仰ぎながらジュースをかっ込んでいた翼宿が、
「星宿様、んなんで疲れてたらこの先、体もたんで。
これはまだまだ初日や!あしたからもっと忙しくなるんやさかい、気合入れてもらわんと」
と、言った。
「……悪夢だ」
「そんなこと言って、星宿様だって十分ノッてたじゃないですか」
「そうなのだ。やっぱりみんなで歌うと楽しいのだ♪」
「……お前たちは、あんなうるさい中にいて疲れないのか?」
「じき慣れますって。あぁ、俺、次のパフォーマンス何やるか考えねぇとなぁ〜」
「その通りや鬼宿。今日のお前のパート、ウケ悪かったからな。こう、もっとひねってやな……」
「偉そうにリーダーぶりやがって。そう言うお前だってワンパターン芸人じゃんか」
「なんやと、こらぁ!!」
「……はいはい。落ち着くのだ。せっかくバンド組んだんだから、もっと仲良くするのだ。
次のパフォーマンスなんて、そのときどきで考えればいいのだ」
「お前は黙っとれ!この苦労知らず」
「井宿は芸達者だからなぁ。いいよなぁ〜」
「そんなことないのだ。こう見えてもここまで力つけるのには、
3年もの間大極山で苦労してそれはそれは厳しい修行を積んだのだ。決して、楽してるわけじゃないのだ」
「その苦労が今や、便利な芸の数々となったか……」
「……それは、お互い様なのだ」
「ほぉら、喧嘩しないの。次に行くところを、このあたしTHTCのマネージャー柳宿サマが発表するわよ。
もう美朱と軫宿と張宿が先に行って、下準備始めてんだからね。いつまでも休んでなんかいられないわよ」
「おのれはいつから俺らのマネージャーになったんじゃ?」
「それ言ったら、あんたのリーダースポットだって同じでしょうが」
「……で?柳宿。次は一体どこでやるのだ?このバカ騒ぎを」
もうやけくそだ。とでも言いたげな表情の星宿が、THTCの自称専属マネージャーに問う。
柳宿はにっと笑った。
「ふふん。みんな、驚いちゃダメよ?……なんと、倶東国のとある都市圏が第二回目の開催地となりまぁす!」
「なにぃ〜〜〜!?」
「……って!そこ紅南国とちゃうやん!これ、紅南国全国ツアーやろが!」
「細かいことは気にしないの!ほら、倶東のほうでも熱狂的なファン増やしとけば、
世界一周ツアーやったときになにかと都合が良いでしょう?」
「せっ……世界!?」
この後、星宿が長いすの上に生殺し状態(笑)で倒れこんだのは言うまでもない。
「たっ!大変です !!大変です、将軍!!」
「……何事だ。騒々しい」
倶東国の宮殿の回廊で、心宿はいきなり後ろから兵士に呼び止められた。
兵士は心宿の顔を見てから、辺りを気にかける。
「お耳を……」
その言葉で、事が尋常でないことを心宿は悟った。
「なんだ……?」
そして、兵士はボソッと小さく囁いた。
そう、とんでもない報せを、兵士は心宿に報告したのだった。
「THTC特別国外ライヴ !!?」
唯は心宿の口から信じられない言葉を聞かされ、叫び声を上げる。
心宿が小さく頷く。
「……ライヴか。……見たいかも」
「唯様!」
「えぇ?だって歌ってるの、あの朱雀七星の4人よね。……素敵かもしれな 」
「ダメです!!唯様ぁ〜〜〜!」
「すっ……、角宿!?」
角宿ががあっと唯のもとに走り寄った。
「あっ、あんな奴らのライヴなんて見たら目に毒です!(角宿、言いすぎ…;)あいつらのライヴ見るくらいなら、
今夜、俺と兄貴でささやかな兄弟演奏会しますから!」
「おっ、おい角宿?」
亢宿が勝手に弟の中で話が進んでいるのを知って、少し慌てる。
しかし、その彼の横で、「へぇ〜」と蒸気を帯びた声を漏らしたのは房宿だ。
「……いいですわね。ライヴ」
「房宿ぃvね?ね?見たいわよねぇ〜」
「……房宿」
「……すみません心宿。だって、ライヴと聞いただけで女の子の心はときめきますわv」
……そんなんでときめくのか?
心宿は視線を氏宿、箕宿、尾宿のほうに向けた。
あぁ、もうこの際お前たちでもいいから、誰かこの女たちを止めてくれ。とでも言いたげな表情で。
ところが……。
「ライヴですか……。人前に立っていた旅芸人の頃の記憶が甦りますねぇ。あぁ、またあの拍手に包まれる快感を味わいたい……」
(ゾクゾクゥ……;)
「ワシも興味ありますな。大衆の中で、新薬の集団催眠薬(毒薬)の効果を試す、いい機会にもなりそうだし」
「がう!がうがうっ……(俺も見てみた……)」
ビシィッ!!
心宿が無言でムチをしごいた。
「……がう(……くない)」
「……お前たちは」
「いいじゃないの、心宿。たまには、ね?息抜きってかんじでさぁ。見に行こうよ」
「だから!唯様、ダメですってばぁ。よりによってあいつら朱雀のなんて。いっそ、俺たち青龍のライヴ……」
と、角宿はここで何かに気付いたように、はっと言葉を区切った。
そうだ!この手があった。
「……角宿」
亢宿は弟が今、何を思ったのかピンときて、彼を見た。(流石、双子パワー)
「唯様!俺たちもやりましょうよ、ライヴ!!」
「……え?ライヴを……私たちが?」
「そうですよ!んでもって、朱雀の奴らに俺たちのが凄いってこと、見せつけてやるんです!」
「……角宿、唯様が困ってるじゃないか。俺たちでライヴだなんて、何考えてるんだ」
「亢宿の言う通りだ。角宿もいい加減にしないか」
心宿の檄が飛んだ。
だが、この中でただひとり彼の怒鳴り声が通じない者がいた。
「心宿。いい加減にするのはそっちだよ。さっきからノリ悪いよ?」
「……唯様」
心宿は諦めたように頭を抱える。
「唯様?」
角宿が、はっと唯の顔をうかがう。
「いいわよ。角宿!やりましょ。青龍七星士でライヴ」
『おぉ !!』
「がうっv」
だが、その中に若干2名。ノリ気でないのが、
『……はぁ』
と、同時にため息をついた。
「問題はまずバンド名よねぇ……」
房宿が腕を組む。
「あいつらに対抗して頭文字とってみる?」
「と、すると、僕のA、角宿のS、心宿様のN、房宿さんのS、箕宿のM、氏宿のT、尾宿のA……ですか」
「あれ?兄貴、もしかして結構ノリ気?」
「……まぁ、やるからには、な」
「でも、ASNSMTA……これじゃあバンド名になんないよ。あっちのTHTCみたいになんか、こう……発音良く、すっきりできないかしら?」
唯が言って、みんなが「うぅ〜ん」とうなる。
と、ここで、思いもよらぬところから意見が出た。
「がうっ……(それなら……)」
「それなら……なんだ?尾宿」
“心宿……、こいつの言葉に普通に受け応えできんの、あんただけだよ……”
若干6名がそう思う中、尾宿が言葉をつなげる。
「がうがうがう!(アルファベット順ですれば!)」
……ぷち。
「……てぇめぇー!ムカつくこと言ってんじゃねぇ〜ぞぉ〜!!!」
ビシッ!バシッ!……バシンッ!
心宿の怒りのムチにまざって、
ヒュルルル……ザショ!バキョ!!
「ふざけんな!アルファベットっていやぁ、テメェが一番先じゃねぇか!?」
角宿の流星錘が飛んだ。
「キャウンキャウン!!」
子犬のような声を上げて、頭を抱える尾宿。
「……あのぉ〜、一応僕もAなんですケド」
しかも、亢宿といえば順序からいっても、一番になるのは彼に違いなかったが、もはや誰も聞いちゃいなかった。
それというのも、こっちはこっちで房宿がこんなことを言ったからだ。
「7人でバンド組むのはいいけど、あたしたちはともかく、若干3名は持ち歌ひとつもないじゃない?」
……この言葉に、上記某3名が泣いたのは言うまでもない。
結局、メンバーは七星士で4人(3人は泣く泣く裏効果班に)プラス(本人と角宿の希望で)唯も加わり、
散々もめた結果、一度ノリだしたらノリだしたで止まらなくなってしまった心宿が、リーダーを自称し、
バンド名もその名もNASYSに決定。
青龍七星士4名プラス巫女による、対朱雀バンドが結成された。
「待ってろよ朱雀のやつら!今に俺の歌で、完膚なきまでに負かしてやるからな!」
「……ところで角宿、あんたのSってどっち?先のほう?それとも後?」
「ゆっ、唯様。ととと当然俺のは、さ……」
「嘘つかないの角宿。あんたのは後のほうでしょう?あんた、じゃんけん弱かったのねぇ」
房宿の言葉に、角宿がガクッと膝をつく。
「兄貴(亢宿)は強いのに?」
さらに唯のその言葉が、彼にズンッと追い討ちをかけた。
「……うっ」
「おい?角宿?」
亢宿が心配して顔を覗かせると、
「うわあぁぁぁん!!兄貴のバカぁ 」
角宿は、心宿以外の4人中で順番を決める(心宿ははじめがいいと我儘言った(笑))その際に、
一発でひとり勝ち抜けしたその兄を突き飛ばし、泣きながら走り去っていってしまった。
キョトンとする亢宿の向こうで、早くもノリ気で練習していたのは……心宿だった。
2へつづく
ついにやってしまったCDネタ。
CD聴いたときからなんとなくやりたいなぁとは思ってた朱雀対青龍の歌ヴァージョン。
そういえば最近、青龍の方が出演してるな……。
って、これ朱雀のメンツが出てきたの前半のちょっとだけやん!
すんません。
唯ちゃんの誕生日が近いってことで(現在10/9)許したって下さい><
次回は出ます。朱雀の皆さん。
というか、戦っちゃいますから…ね^^;
でもでも、熾烈な戦争、猛烈な熱唱バトルで盛り上がる(予定の)彼らに、様々な事故が待ち受けてたりするのです。
いがみ合う彼らの間でバトルはより激しく、しかし時にはやさしく友情も芽生え…。
そんな作品にしていきたいと思います。
つまり、まだできてな……(パシィーン!!)……痛ったぁ!?
だれ!? 今、金剛石で出来たハリセンなんぞかましたんは!(キョロキョロ)
……でも、正直な話、あまり続き物をためてばかりではいけませんよね。がんばろ。