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Fuga a 3 Soggetti クネヒト補完版
(失われた/未発見の作品)
 
 
ドイツのオルガニスト・作曲家であるクネヒトKnecht, J.H.(1752-1817)は、
声楽、管弦楽、鍵盤楽器などのために多くの作品を残しており、
バッハの名によるフーガ」の作者としてご存じの方もいるでしょう。
 
そんな作曲家が「フーガの技法」を完成させたという広告が
1804年の「優雅な世界新聞」紙上に発表されました。
(Zeitung fuer die elegante Welt 4, 1804 - Intelligenzblatt, 02.06.1804)
 
残念ながら、現在この作品は確認されていません。
出版準備まで整っていると宣伝されていたので、
おそらく作品は完成していたのだと思われますが、
印刷された楽譜も原稿も失われてしまったようです。
 
その出版広告にはいくつか興味深い内容が含まれています。
まずクネヒトは未完成のフーガを三重フーガとして完成させたこと。
これはボエリの補完版とも共通しており、当時このフーガが
タイトル通り三重フーガと認識されていたことがわかります。
 
また故人略伝の「4つの主題を含む最終フーガ」という記述が、
これも文字通り新たな4重フーガが構想されていたと認識されており、
クネヒトが4つの新主題に基づいた四重フーガを完成していたこと。
しかも「フーガの技法」の主要主題には基づいていないとみられるのです。
 
この四重フーガの説明がまたそそられるのですが、
各主題に提示部があり、そののち主題が2つずつ組み合わせられ、
最後に4つの主題が結合されるという手の込んだもの。
 
このほか、出版元であるネーゲリが、複数の作曲家に
「フーガの技法」の完成を打診していたというのも気になります。
その広告全文を拙訳にて以下に示します。
(原文はこちらをご覧ください。)
 

 
私はこの「不朽の」作品を探し出そうと方々問い合わせてみたのですが、
あいにく発見には至らず、ここにこの広告のみをご紹介するに至りました。
今後の発見を願ってやみません。
 
 
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