「ともすれば分断されがちな、ひとり一人の切実な思いを繋ぐ、命綱」

       ―4月10日以来900人に発信続けた「3人を救え」―

 「法と民主主義」5月号掲載   2004.5.10  弁護士 毛 利 正 道

 

◎ 身を引きちぎられる思いで

昨年12月に、アフガン戦犯追及国際法廷での劣化ウランについての検事論告に触れつつベトナムに行き今も5万人の被害児が生まれる枯葉剤被害に接した私は、帰国後物理・化学・生物もかじって「劣化ウランは自分の存在をかける課題だ」と実感、ビデオ・上映機材・500円パンフ・詳細レジュメを持ち歩きつつ10回の出前講演をしていた。そこに3名拘束のニュースが入った。私と同じく私よりずっとたくましく劣化ウランと闘う、私の子どもと同年齢の今井紀明君が捕らわれ、しかも福田官房長官が捕らえられたと分かった直後に「自衛隊を撤退させる理由がない」と早々表明したことによりその時点からいつ殺害されるか分からない状態に追い込まれた。このことをその晩に知った私は、文字通り我が身を引きちぎられる痛みに駆られ、その時から全身全霊を打ち込んだ。街頭行動もむろん地域で行いつつ、私が置かれた条件の下で3名の救出のためにもっとも力になりうることをやろうと考えて実行したのが、「3(5)名を救え・各地の動き」のインターネットでの発信だった。

9.11テロ以来、青年との繋がりの中でのインターネット署名活動などにより私のパソコンに登録されていた日本と世界900以上のメールアドレス宛に、私が各種ML(メーリングリスト)に入っていることもあってあちこちから届く民衆の側からの情報を発信していくことにし、10日から開始し、日によっては一日3回、結局20日間に23通となった。一つ創るのに平均2時間かかった。3人が開放されるまでは、裁判の起案もなるべく向こうに送った。でも、多くの方からこれが大歓迎された。NHKテレビを筆頭とする文字通り「大本営発表」の如き、ともすれば元気を無くすような「自己責任論」の垂れ流し報道の中で、3名が生きているとのフランスからの情報を始め、私が届けた情報が更にあちこちに転送もされ、多くの人々を励まし各種闘いを創り広げた。私が「非戦つうしん」に発展させたいと提案したときも送信希望が一気に数百寄せられ、励まされて4月30日から開始して、5月10日現在4通発行した。あちこちでインターネットをこのように活用していけば、「大本営発表」に負けない民衆の側からの巨大な情報「ひろば」ができる。以下に於いては、リアルさを示すため(手抜きカバーの面もあるかな)、主に4月10日以来届いた「読者のこえ」をライブ(なま)で掲載したい。

 

◎ 流言飛語と偏向報道の中で 4月12日

今回メールをしようとおもいたったのはほかでもありません。

三人の人質事件について、毛利さんのメールがたいへん参考になったことをぜひお伝えし、感謝を申し上げたかったからです。

私自身はなんの市民団体にも属しておらず、インターネットとマスメディアだけが情報源です。インターネットでは流言飛語が飛び交い、マスメディアはひどい偏向報道を続けています。それらを前にしていると、まるで見上げるほどの鉄の壁に向かって無力なこぶしを振り上げているかのようで、三人はこのまま見殺しにされてしまうのか、たとえ建前ですら市民を大切にしようとしない社会へ変わってしまうのかと、不安と恐怖を感じます。

ですが、毛利さんのメールとその情報のおかげで、大勢の人々が努力をし、国境を越えてつながっているのだと知ることができました。また、首相官邸にメールするくらいしか自分ではおもいつかなかったのですが、ほかにもいろいろな方法があることを知り、微力ながら参加することができました。毛利さんのメールの中には、正気な人々がたくさんいます。まだ絶望には早いと感じます。三人を助けることは、ただ三人の命の問題ではなく、市民社会の命を護ることではないでしょうか。

長崎県 あきこ

 

◎ 救われた「生きている」情報 4月16日

3人の解放から一日が過ぎ、何よりも、書いておきたかったのが常に最新の情報メールを送ってくださっている毛利さんと特にコリン小林さんへの感謝です。定期的に寄せられたこの方の情報がなかったらこの8日間はもしかしたら、ちょっと気持ちが耐えられなかったような気がします。書かれている状況に説得力があったので個人的には、大丈夫、3人とも無事に生きているし救われれば救われる、と信じることができました。あも

 

◎ 「知らないこと」を知らない日本人 4月17日

毛利さんが定期的にメールを送ってくださる事で、私はマスコミ報道を客観的に見ることができました。普通に過ごしていたら知ることができなかった事だらけです。曇りない目で、現実を見ることができた事をうれしく思います。

最近「自己責任」についてとても考えさせられています。政府に責任があるって言える人は、見えている人だと思います。でも、見えないのが本当に悪いのでしょうか?見えないものを見えるようにするには、どうしたらいいのでしょうか?自分はメールを読むことで見えたものがいっぱいあったけれど、でも、もしこのような縁がなければ…きっと見えていません。自分の国の自衛隊がイラクでしている事も見えない日本人でした。自分も「知らないこと」を知らない日本人でした。

これまで私は「知る」という事を、これほど快感に思った事はありませんでした。真実を伝えてくれるカメラマンやジャーナリストの方々は、大切にされるべきです。そんな人たちが非難されるという事がとても悲しいです。                    かながわ

 

◎ フランスから 4月26日

私は現在フランス在住で、今回の人質事件に限らず、ほとんどの日本の時事ニュースは大手メディア配信によるものに頼っています。そんな中、毛利様から送られてくる情報は何よりも正確かつ公正なもので、選ぶ情報の選択肢が限られている私としてはありがたいものでした。 まりこ

                       

◎ 今は戦前?」 4月26日

  私は東京に住んでいるため、この間毎日のようにデモや集会に行っていましたが、夜自宅に帰ってくるともうTVもあまり見られず、毛利さんのMLが本当にありがたい存在でした。本当に力づけられました。

  私は今、戦後最大の危機だと感じています。私は40歳代ですが、自分が生きているうちにこんな時代になるなんて…。戦後生まれだと思っていたのに、今は戦前?

  今が本当に頑張りどころだと思います。継続的に非戦・反戦の声を上げましょう。私は一市民であって何の団体にも所属していませんが、出来ることはやっていきます。           みどり

 

◎ 友人とのギャップに愕然 4月26日

連日の毛利さんからのメールがどんなに有り難かったか知れません。毎朝一番にメールを開き、時々刻々と動く情勢を知ることが出来、地域の友人との話の折々には「私がメールで受け取っている信頼できる情報では…」と前置きして、話すことも出来ました。多くの友人は、新聞TVの報道を唯一の、しかも公正な報道と受け止めているので、私もギャップに愕然としました。報道媒体の姿勢が、受け止める側を左右していることを痛感しました。                  みや子

 

◎ イラクと日本の市民が連帯した 4月26日

この間、「5名を救え」に連日よせられる情報や投稿にイラク戦争終結への新しい息吹を毎日感じてきました。5人の方にイラクの人びとが「自衛隊は撤退せよ」というメッセージを直接託し、日本の市民とイラクの人々が現実的に連帯したというこの事実に、言葉に尽くせない感動を覚えてきました。           Peace and love

 

◎ 輪が広がっている 4月26日

私から26人の方に転送していました。其のうち一人断ってきたので今は25人、送ってくれてありがとうと言う返事をもらいました。其のうちの何人かは更に他に転送しているそうです。輪が確実に広がっていて嬉しく思いました。                  しずえ

 

◎ 「先端技術活用の模範」 4月26日

情報源もはっきりしていて大いに助かります。人類の先端技術を権力者の占有にせず、一人ひとりの幸せのために大いに活用されている模範例だと考えます。大変参考になっています。         ひろし

 

◎ マスコミはファルージャを伝えない 4月26日

イラクの辛い現実や、人質事件の真相を知るにつれ、政府やマスコミが如何に真実を隠しているかが、分かりました。ファルージャのことを知らせてくれる、マスコミなんて、皆無ですよね。人質事件は、ファルージャ情勢と連動している、という伝え方まではしても、そのファルージャで何が起きているのか、伝えないのですから、伝え方が、不十分というか、わざとというか。              あつこ

 

◎ 「非戦つうしん」購読申込メールから

・ 毛利メールは貴重な情報源です。何よりも皆の気持ちが伝わってくる情報は、これしかないのです。

・ これまで、ただ黙ってメールを頂いているばかりですが、「声を上げ 届け その声を受ける」そんな関係を 大切にしたいです。

・ 最近の政府の方向性を危惧しながら、こんな時に何も自分はできないのか?と、悶々としている人たちは非常に多いのです。しかし、周囲の人と意見が同じとも限らず、泣きながら母や兄と口論をしたという方もいました。すぐに、メール転送させていただきました。同じ考えの人がたくさんいて本当にうれしかったそうです。

・ 私の50名ほどの友人の方々に、毛利さんの通信を転送させていただいてきました。

・ いまだに、小泉の支持率が50%を維持しているというのは、マスコミが真実を報道しないからだと思います。市民の地道なネットワークで真実を伝えていくしかありませんね。

・ 毛利さんの精力的なメールに励まされました。一貫して3人を擁護されるメールは私も同じ思いをしていたので、心強かったです。今井君や高遠さんのような若者を絶対つぶしてはならないと思います。

・ 毛利さんの連帯の広さ、そして強さには驚くばかりです。この間のメールを通じての行動は、「テロという不寛容への、不寛容による反撃とは別の、第三の道hを探したいと願う寛容を世界に発信する新しい市民」(大江健三郎、朝日新聞2004年4月13日付け)としての行動だと思いました。学生間でもメーリングリストを通じてのやりとりが巻き起こり、僕も新しい市民の一躍を担っている、と実感しました。

・ 日朝問題で歴史的、理性的な解決をめざすのではなく、煽情的で、暴力的な行動をもたらす、日本のつくられた「世論」を危惧する私にとって、今回の日本の憲法違反のイラク派兵がもたらした結果の5人の方の拘束事件が「自己責任」というすり替えで、自衛隊のイラク派兵の歴史的な局面を誤魔化す動きを同じ流れと見て、日本の人権、民主主義の危機と見るのは、的をえていないでしょうか?

 

そして最後にとても嬉しく疲れも吹き飛んだメールを紹介して結びとします。

 

"毛利正道"さんへ

  高知の大学生です。

遅くなりましたが、「非戦つうしん」是非続けていただきたいと思います。

人質事件については、私の学内でも大きな同情の声があがり、学生有志で

緊急署名を集めるまで至りましたが、その後メディアに踊らされたかのよ

うに「自己責任」論を語る学生が多々現れ、混乱を引き起こしています。

そんな中での毛利さんの「5人を救え」メールニュースは、日本全国で、

 自分と同じ気持ちの人が勇気ある行動を続けていること、「本当の未来を

 つくる行動とは何か」を考えさせる発言を知らせてくれる、大切な命綱で

 した。ともすれば分断されがちな、ひとり一人の切実な思いを繋ぐ、命綱

  ぜひ続けてください。              きょうこ

 

 

 

最近発行した「非戦つうしん」のもくじをご紹介します。 04.6.15

15号 6月12日 

さわやか車山高原の花にひととき

有事法制10案件 アクション・参考人陳述

有識者9人による「9条の会」発足

◎特集

 3人の最も近くにいた弁護士が語る迫真のドキュメントと

  「自己責任論」批判など

アムネスティ・「君が代」斉唱の強制に強い懸念を表明

韓国進歩ネットが、民衆言論サイトを立ち上げ

名古屋自衛隊イラク派兵差止訴訟いよいよ18日開廷 

ありうる不測の事態に備えて〜WORLD PEACE NOWからの提案

◎特集 佐世保小6女児殺害事件について  中学生と長崎県民の発言

◎特集 アブグレイブの根はどこに

重要ニュース  韓国・北朝鮮が軍事衝突防止で合意

たんぽぽ舎からのお便り  2題

 米国はなぜ原爆を日本へ投下したのか

 6.17 米国先住民と核廃棄物貯蔵施設誘致問題 

参議院選挙小特集

 「非戦的」政党HP案内 

 6.27 20-30代の声を国会に届ける方法

書籍紹介 「平和と平等をあきらめない」

催し

 6.27東京 郡山総一郎さんの話

 仙台『紛争の地から』高橋邦典写真展

 6.12大阪「パレスチナ農民が語る『隔離壁』が奪ったもの

 6.16東京 米国のキューバ敵視政策に抗議する会

  戦後補償メーリングリストの案内

 映画『ヒバクシャー世界の終わりに』案内 高遠さんもトーク予定

 

14号 6月8日

米国の俳優や学者による署名活動のサイトご紹介

◎特集 戦争と殺人ー佐世保事件 6題

  星川淳・石川文洋・マイケルバーグなど

参院選沖縄選挙区の糸数さんを応援する運動

小泉総理 婦女暴行事件

反核 短編小説「風子〜」ご紹介

アムネスティ スーダンアクションの宛先

TUP初アンソロジー『世界は変えられる』発刊

「マイクの音で暴行容疑」のイヤ〜な時代

催し

◎力作 アブグレイブ刑務所・14人の捕らわれ人の証言調書