薄墨を刷いた、影絵のような山稜に太陽が顔を出した。雲ひとつない空に光彩を放ちつつ、ぐんぐん上昇する。
 日の出はいつも神々しい。
 つい二ヶ月前の初日は、八ヶ岳連峰最南端編笠岳の麓(ふもと)からだったのに、今日はもう権現岳左肩に移っている。
 月日は流れるように去ってゆく。太陽、名月、清風は誰にでもある―とは、碧巌録にある禅の教えである。
 

2月20日(月)

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惜桜小屋絵日記