ポツポツ雨つぶが頬を打つころ、ぶらり散策していた雑木林で、一輪のカタクリに出会った。冬枯れの林床を彩る、スプリングエフェメラルの象徴ともいえる山野草である。
 雑木林が芽吹く前に、日差しをいっぱい浴びて花をつけ、木々の葉が生い茂り、光が閉ざされる初夏にはもう姿を消す。それゆえ、春の妖精―などと、しゃれた呼ばれかたもされる。
 ちょっとだけ人の手が加えられて群生する、濃紫色の派手やかなカタクリもいいけれど、厳しい環境に耐え、群れずそっと咲く、可憐な姿には、春の日の夢のようなはかなさがある。
 

2011年4月28(木)

戻る

惜桜小屋絵日記


※クリックで拡大