まだ残雪に装う山麓を散策した。南に面した山みちに群れ咲くオオイヌノフグリを渡って、一匹のミツバチが蜜を集めていた。轍にはさまれた草むらには、タンポポとフキノトウもほころんでいる。
 目の前のあるがままの自然は、早春の息吹にあふれ輝いている。
 しかし、自然はときに残酷である。
おだやかに春を誘う一方で、人間の尊厳を容赦なく踏みにじる。
 大自然が差配したあの大津波の惨状を見れば、どんなに心を込めた慰めも、所詮は旅人の空しい言葉遊びになってしまいそうだ。
 

2011年3月12(土)

戻る

惜桜小屋絵日記


※クリックで拡大