妙に友好的(?)なヤマドリがいることは、本(『ヤマドリがやってきた』大津昌昭著)で知っていたが、まさか実際に出会うとは夢にも思わなかった。
同好の仲間3人で山みちを散策していた。山梨の昇仙峡に近い里山である。
チゴユリが群れ咲く細い自然観察路から、軽トラが通れるくらい広い林道に出た。
左手は若葉の雑木林、片一方の皆伐した斜面ではヒノキの植樹が進んでいる。
すぐ横の雑木林から現れたヤマドリ(オス)は、当然そのまま木陰に隠れるものと思った。ところが逃げるどころか、逆に寄ってくる。エッ(!?)
そして、あろうことかすぐ目の前に来て、手にあるチョコレートをおねだりするそぶり。人に対する警戒心は随分と薄いようだ。むしろ友好的といっていい。
驚き戸惑いながらも、予期せぬ野生とのふれあいに、少々はしゃぎ気味の我々を見て、植林作業の手を休めた男性が、斜面のはるか上から声をかけてきた。
「昨年の秋からいるよ。伐採のとき手元近くよってくるので危なくてしかたなかった」「ここを通りすぎる登山者についてゆくけれど、途中で引き返すから心配ない」。親愛の態度は我々だけに向けられたものではなかった。
言うとおり、立ち去る我々の横にしっかりついて来る。50mほど歩いたころピタッとたちどまり、それ以上追ってくることはなかった。
本で紹介されたヤマドリは、猟師が入った冬、姿を消した。道脇に「鳥獣保護区」の看板が見えたのでホッとした。