小屋前のデッキにアカネトンボが止まっている。近づいても逃げないのでさわってみると、すでにむくろである。
 夏からずっと、デッキ横のウバユリのテッペンが、アカネトンボの休憩場所となっていた。小屋にいるときはいつも視野にあって、ホッとする添景でもあった。
 10月半ばころ、里へ下りたのか姿が見えなくなった。その後、定席だったウバユリも実が弾け、子孫を風に乗せた。
 やはり里で子孫を残す大きな事業をやり終え、終の棲家と定めた小屋の森に戻っての大往生とあればいじらしい。
 同じトンボであるはずもないけれど―。

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惜桜小屋絵日記

2008年11月18日(火)