諏訪湖西山の森は、エゾハルゼミの大合唱につつまれている。体長せいぜい4センチほどの小型ながら、まるで森全体が共鳴器と化したような賑やかさである。
 春から初夏にかけて鳴くこのセミは間もなく姿を消し、7月に入ればまずヒグラシが登場、つゆ明けと共にエゾゼミやアブラゼミ、ミンミンゼミなど、お馴染みの真夏のセミのそろい踏みとなるけれど、この分だと今夏も賑やかな蝉時雨が聞かれそうなのが嬉しい

 ただやかましいだけの譬えに使われることもある蝉だけれど、蝉蛻(せんぜい)は、超然として世俗を抜け出ることをいう。古来より人生をダブらせて語られることも多いだけに、春のセミも夏のセミも、ともかくできるだけ元気なほうがいい―と、四季を刻んで生きる年齢(とし)になった身が風に吹かれながら考えるのである。

 

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惜桜小屋日記

2008年6月13日(金)