サワギクの葉裏にとまったハルゼミの抜け殻
地域の仲間の奥さんの葬儀に参列したあと、惜桜小屋を訪れた。
森をつつむハルゼミの大合唱に、まさに鳥鳴絶え緑陰深し。いつものキビタキやクロツグミも沈黙している。
セミはわずか数日の地上での命をはかなくも懸命に燃やす。
「一日おのずから栄をなす」とは白楽天(唐の大衆詩人)の言葉である。
たとえ短い生であっても、精一杯生き幸せに輝いた日々が慰めとなる。
きのうまで、小屋の森に入ったとたん、キョキョキョキョとアカゲラ夫婦の激しい口撃(?)にさらされ辟易させられたのに、今日はその気配さえない。
どうやら無事にヒナが巣立ち、となりの森へ移ったらしい。新しい命の旅立ちである。
生きとし生けるもの生老病死の宿命のなかとはいえ、サワギクの葉裏で風に吹かれる空蝉に似て、ゆらぎ続けるのが人の心かもしれない。
惜桜小屋日記
2008年6月10日(火)