家の周りの雪をかいたあと、小屋の森山麓の丘陵地帯を訪れた。日の出前の雪景色はシンとして、静寂につつまれている。
山裾を一周し、人家も近い農道までやってきた。30mほど先の畑地から飛び出したキツネは、しばらく路上にたたずんでいる。
大きいけれど、疥癬病にやられているのか、尻尾の毛がほとんど抜け落ち、先端近くに少しだけ残った薄毛が痛々しい。
毎日のように小屋の森林を巡回する、あの狩人キツネとは異なるようだ。狩人キツネは先日も林道入口付近で出合っているけれど、からだはもう少し小さく、健康な尻尾だった。
このキツネは、ひと息つくと意を決したように右手の傾斜のきつい土手を、雪深い林の中に消えた。今冬はなんとか乗り切れても、疥癬(虫)が広がりからだの毛が抜け落ちれば、厳寒の冬を生き抜く術はない。この秋までに回復するか、病状が悪化しないのを祈るばかりである。