駐車場から惜桜小屋に向かう、遊歩道入口のカラマツがすっかり枯れ上がり、芽吹く枝は梢に近い1本だけ。どうやら寿命かなと思うようになって、もう数年になる。
 最近は風に吹かれた枯れ枝が、遊歩道にドサッと音をたてて落下するようになった。いつもはるか上の枯れ枝を見上げながら、素早く通り過ぎていたけれど、友人夫妻が訪ねてくるのを潮(しお)に、やむなく伐採することに決めた。

 太さはひと抱えもあり、樹高も20m近い大樹。伐採後数えた年輪は80年近かい。本当はこの木に「惜桜小屋」の表札を取り付けようと、いろいろ思案していたのだが、仕方ない。

 方向を定め、慎重にチェーンソーを入れたつもり(?)―だったけれど、不覚にも木の重心は反対側にあったようだ。
 もう少しというところでチェーンソーがかまれてしまい、動かそうにも大木の重量がモロにかかって、ビクともしない。
 そうなるとニッチもサッチもゆかなくなって、結局は知人を頼んで重機で処理してもらうはめになった。

 これだけの喧騒を振りまき、ドタバタ劇を繰り広げても、近くのウワミズザクラの枝に陣取った小屋の森の歌姫キビタキは チンチロリー チンチロリー と涼やかなサエズリをやめず、何事もないように、歌い続けてくれたのである。

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惜桜小屋日記

2007年5月30日(水)