戻る

惜桜小屋日記

 たわわに実った山ぶどうは、十分に熟している。口に含むと少しだけ酸味の利いた甘い果汁が、ジュワーと舌にからまる。
 今年も近くのYさんと、山ぶとう狩りに出かけた。
 収穫が早すぎた昨年は、酸味が強すぎ果実酒の味がいまひとつ。今年はじっくり時季を計り、満を持しての山行。
 熊の出没が気なる奥山の、ふたりだけの秘密の場所である。
 といって別に「秘密にしよう」などと、話したことはない。ふたりともその手のことにはあまり頓着がないほうだ。
 ただ、どちらかと言えばYさんが見つけた場所なので、なんとなく自分から他人に教えるのがはばかられる。友人どころか、家族にも話さないという、自分だけの茸のシロと同じである。
 
 

2006年10月29日(日)