散策中の山みちを、少し入った森で見つけたその倒木は、直径が大人の背丈ほどある大樹。「ケヤキだな。樹齢七、八百年はありそうだ。倒れて数十年になるだろう。恐らく伊勢湾台風(1959年)にやられたのではないか」と、林業に詳しいAさんの推測です。
 緑のコケに覆われ、土に帰ろうとする幹の一部。宙に突き出た枝や根は、節や裂け目が表情を持っているかのよう。圧倒的な迫力で迫る深緑の森の巨大なオブジェです。
 巨樹とか大樹といわれる大きな木に接すると、それが生きている木であれ、枯れた倒木であれ、圧倒されるものがあります。大自然の悠久の時の流れや、豊かさを感じる時もあれば、霊力だとか神の存在を覚える瞬間さえあります。非日常の存在感とでもいうのでしょうか。
 この倒木が森の奥から見てきたであろう、うたかたの人の世にしばし思いを馳せ、長すぎる休息となったのでした。
 
 

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惜桜小屋日記

2005年7月25日(月)