夕方近くなって、友人が尋ねてきたのでこれ幸い、やや強引に誘って小屋の森山麓に、ヒグラシを聞きに出かけました。
 まだ五時前というのに、つゆ空の林はもう夕暮れの気配です。
 カナカナカナカナカナ カナカナカナカナカナ
     カナカナカナカナカナ  カナカナカナカナカナカナカナ
 近くで、遠くで。あっちの沢で、こっちの林で。
 独特の金属性の声を響かせてしきりに鳴き続け、ジリジリする真夏の太陽が、すぐそこに近づいているのを告げています。
 おもに日がかたむき、涼しくなるころ鳴くので、ヒグラシの名がつき鳴き声からカナカナゼミとも呼ばれています。
 アブラゼミやミンミンゼミより、半月ほど早く鳴き始める、真夏のセミなのに、俳句の世界では晩夏から秋の季題となっているのは、朝夕の涼しいときに、なんとなくさびしげに鳴く印象があるからでしょう。
 暑さが厳しい夏の朝夕、爽涼感あふれるこのセミの鳴き声を聞くと、ほっとするとともに、心にしみるような感慨を覚えます。

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惜桜小屋日記

2005年7月11日(月)