奥山に放された、体重100キロを超える大きなクマが、トウガラシスプレーのお仕置きに興奮し、研究者が乗った車を猛然と襲う姿が、テレビで放映されていました。
クマが猛獣であることを実感させる光景でした。
このクマは、養魚場のニジマスを夜な夜な失敬し、100万円もの損害を与えた、親子連れを含む4頭のうちのオスの成獣。
監視ビデオが証拠となりました。
「子グマが養魚場を餌場と学習する前に、お仕置きをして奥山へ移すのが賢明」という研究者のアドバイスで、檻を仕掛け捕獲したのです。
クマ被害について、かつては猟銃をズドンと一発打って、駆除する対処法が一般的でした。被害者の感情を思いやれば、当然のこととして大方の合意が得られてきたのは事実です。
ところが、人間によって追い詰められたクマが、絶滅の危機に直面している現在は、事情が少し変わってきました。
生物の多様性を守ることの大切さが、強く認識されるようになった背景もあって、即射殺するのではなく、トウガラシ成分の入ったスプレーなどを噴射し「里地は恐ろしいところだ」と覚えこませ、再び奥山へ放してやる方法が、選択肢に加えられたのです。
人間に恐怖を与える存在を、すべて否定し抹消駆除してしまうやり方は、やはり少し極端にすぎるし、人間のおごりといえます。
お仕置き放獣は大賛成です。
いくら科学が進もうと、人間の踏み込み難い、異界の領域である奥山にすむ、クマをはじめとしたケモノや妖怪、神々の存在が、人間に恐怖心、畏怖心、畏敬の念をいだかせる、それこそが人間のおごりをいましめ、謙虚な心を生むことになると思うのです。
そしてできれば、人とケモノの緩衝地帯としての里山を整備しクリやナラ、ブナなど実のなる広葉樹林を増やし、共生の環境を整えることが大切なのでしょう。
放獣はあくまで対症療法にすぎません(今日の一言参照)
惜桜小屋日記
2005年6月16日(木)