ブナ林といえば、魅力的な森としてもてはやされる、昨今です。
 「明後日にブナ林探訪」の、急な呼びかけに応じた、地域の中高年グループによる、守屋山のブナ見学登山に同行しました。
 守屋山は、茅野市の杖突峠から立石コースをおよそ1時間30分で東峰、そこから約20分で西峰に到達。標高1650メートルと、信州では高原並みの、気軽なハイキングコースですが、晴れれば八ケ岳はじめ北、南、中央の各アルプス、眼下に諏訪湖と、360度の雄大なロケーションが楽しめるため、人気があります。
 今日も山梨の中学生約100人、中高年約30人の集団登山のほか、数人のグループ登山、単独登山が何組かあって、頂上は大賑わい。
 私たちは頂上からこぼれ、稜線で弁当を広げるほどでした。
 ブナ林は、この西峰からおよそ10分ほど西奥に下った、カラマツ林に囲まれた場所にあります。知る人ぞ知る存在で、時折り林業関係者が訪れているようですが、もちろん道などはありません。
 ニリンソウ、ヤマエンゴサク、マイズルソウが群れ咲くカラマツ林を少し下り、再びなだらかに上ったところに、それは唐突に現れます。
 ブナの木は20本ほどあるでしょうか、大木は数本であとはまだ若い木のようです。透き通るような緑の若葉の先端が、先日の遅霜にやられたらしく、黒く縮んで見えるのが痛々しい感じです。
 強風や雪に耐えてたくましく育ったブナは、ごつごつ節くれだち、複雑に変形したり、幹を何本にも分岐した姿が力強く、すべすべした灰色の木肌とともに、魅力にあふれています。
 たくましく、また明るいブナ林には、ゆったりと、ここにしかない特別な時の流れがあるように感じられるのも不思議です。。
 ブナは令温帯を代表する樹木といわれます。同じ気候帯にある信州ですが、北信の豪雪地帯を除けば、ブナは部分的にしか見られません。
 かつてはブナが覆っていたけれど、伐採されたあと建築資材となるスギ、ヒノキ、カラマツが植えられた―ともいわれますが、実際にははじめから少なかったとの説が有力です。
 その理由は、まず令温帯とはいえブナにとっては暖かすぎること、積雪量が少なく三月、四月の乾燥期に雪解け水が不足すること―などからブナの適地ではない、とされています。緑のダムといわれるブナ林は、豊富な雪解け水が育てるということでしょう。

 ブナ林のすぐ隣りに、ツルアジサイに覆われたカラマツ林がありました。その数三十本近く、林床には無数の幼木が育っています。花をつけた景観はさぞ見事でしょう。
 花期は6月下旬から7月にかけてです。

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惜桜小屋日記

2005年5月21日(土)