初夏の爽やかな風にのって、ウスバシロチョウ(アゲハチヨウ科)がふわりふわりと舞い始めました。つい二日前には姿がなかったから、羽化が始まったのは昨日、今日のことです。
 ムラサキケマン、タンポポ、クサノオオ、ヒメオドリコソウなど色とりどりの花が咲く、小屋の森の山すその土手に十数匹。モンシロチョウのようにばたばたせず、翅をピンと広げ滑空するように舞う姿は、のんびり見えて意外にすばしこく、近づくとスッと風にのって、遠ざかってしまいます。
 五月中旬に羽化が始まり、六月上旬の梅雨入り前には、風のように姿を消す。この蝶が山すそに舞って森は初夏の装いになるのです。
              
 
 やはり山すその半日影の林床に、イチリンソウがひっそり花をつけました。しっとりした質感を帯びた純白の大柄な花びらは、一部に淡い紅をさし、つつましやかなたたずまいです。
 昨年まで2株だけだったのに、10株も花をつけたのはうれしいのですが、山みちから見通せる場所だけに盗掘が心配です。けして珍しい野草ではないけれど、この幽谷の深い味わいは野にあってこそ。庭先ではただの白い花、味わいなどすっとんでしまうでしょう。

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惜桜小屋日記

2005年5月16日(月)