菜園に向かう峠路に現れたニホンジカ6頭は、あわてて路肩に車を寄せて見守る、30メートルほど先の車道を、一列に隊列を組んで渡り終えると、白い尾をピコピコさせながら林の中に消えてゆきました。ほんの十数秒のできごとでした。
 直後に群れから遅れた一頭が、道路脇に姿を見せました。
 急いで後を追うはずが、往来する車はないのに、道を横切るのをためらっています。先行した仲間の消えた方をしきりに気にしているけれど、なぜか車道に一歩を踏み出そうとしません。
 しばらく迷う素振りをみせていましたが、諦めたようすですごすご元来た林に戻ってゆきました。
 先の群れは一頭が道路に飛び出ると、ほかの鹿が次々あとに続きました。ごく普通の行動に見えたのですが、実は先頭は勇気あるリーダーでほかの鹿は、お笑いコントではないけれど「みんなで渡ればこわくない」ということだったのでしょか。
 舗装した広い道路に対する警戒心は、我々の想像以上なのかもしれません。たくましいと思っている野生にも、心理的に超えられない部分がある、ということでしょう。
 てなことを言って、もし私の車がプレッシャーになって、仲間を追えなかったとしたら、謝ります。

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惜桜小屋日記

2005年5月6日(金)


ひとりだけ遅れた鹿は車道を渡ることができず、しばらくためらったのち元来たの林に戻っていきました。写真はクリックすれば拡大します