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惜桜小屋日記

2005年4月19日(火)


 冬のあいだマレにしか訪れることのない惜桜小屋を、秋まで余暇を快適に過ごせる状態にするために、春先はいろいろと作業が多い。
 柱をつないでいるボルトにゆるみが出るので、ひとつひとつ点検し締めなおす作業は意外に力がいる。雨ざらしになっているデッキに防腐剤を塗るのも欠かせない。収納スペースには隙間から枯れ葉が入り込み、時にはネズミの巣になっている。昨シーズン食べ残し、飲み残した食料の処分、水揚げ、周辺の片付けと、いろいろある。
 キノコの駒打ちのあと、こんな作業が続いている。
 正午の気温18度。微風。シャツ姿で暑いくらい。
 小屋の前のコブシが一気に五分咲きとなった。山桜の葉がいつの間にか青々している。ジシャの花は峠を越えた。スミレの花もちらほら咲き始めている。つやつやした茶と緑のウバユリの葉も10センチほどにのびている。花ごよみは春本番に向かって急発進を始めた。
 三名鳥に数えられるオオルリ(夏鳥)も今年初めてのサエズリ。少し離れた場所からで姿は見えないが、いつも今ごろ渡ってくる。
 チチルチルチルと透き通った鳴き声はミソサザイのさえずり。ついこの間までチャチャッと鳴いていた地味鳥とは思えないつやのあるラブソングである。茶色一色の印象があるけれど、よく見ると鮮やかな赤い羽を織り込んで、意外なくらいきれいだ。
 雨池に次々と森の野鳥がやってくるようになった。作業のあいまにデッキの椅子に休んでいたら、水浴びしていたヒガラが、目の前1メートルほどのところに止まって羽繕いをはじめた。じっと息をこらしたけれどやっぱりすぐに飛び去った。
 森の四月中、下旬は最高にすがすがしい季節だと思う。山菜採りの人たちが入山するのはゴールデンウィークあたりからだから、この時期の里山の魅力を知る人は少ない。
 

小屋の周りを散策していて見つけたカケスの次列風切羽(上)とヤマドリの尾羽