惜桜小屋日記

2005年4月2日(土)


 風もなく穏やかな日和に誘われ、山みちを散策した。ところどころ残雪を宿すまわりの雑木林は、まだ早春のたたずまい。
 まず先日の山みちでフキノトウを摘み採る。枯れ葉を突き上げて、もう新しいフキノトウが、続々顔をのぞかせていた。
 「風味のものは新鮮さがいのち。きょう食べられるだけに―」
 友人と合わせ二十個ほど採るのに、たいして時間はかからない。
 この季節には訪れたことのない、かなり奥まった林道を歩く。芽吹きにはまだ早い雑木林に、花曇りの日差しが柔らかく注いでいる。
 淡く黄色にけぶるような木があちらこちらに見える。
 「ダンコウバイだろう」と近づいてみる。
 長い花弁をよじった独特の形はマンサクの花である。"春まず咲く"からマンサクの名がついたとの一説に、なんとなく納得させられる。
 近くのダンコウバイは、いまにもはじけそうに花芽をふくらませてスタンバイOK。こちらも出番は近い。
 黒紫色の尾のような花を鈴なりにつけた大きなハンノキが二本、谷側から突き上げるように立っていた。派手ではないが「きれいだな」と思わせる、新鮮さが際立っている。しばらく足を止め見とれたほどだ。
 眠りから覚めたばかりのキタテハが、林道からヒラヒラ舞い立った。
 帰宅し、駐車場にしている広場で、活発に動き回るアリの姿を見つけた。気づかなかっただけで、随分前から活動しているようだ。
 さて、これだけ春だ春だと告げられると、春をからだいっぱいに堪能した気分になってきた。春だ!。

芽吹き前の早春の山で真っ先に花をつけ春の訪れを告げるマンサク