小屋の森を頂上まで登りきらない山みちに、フキノトウがいっぱいできている。春浅いこの季節にここを訪れる人はほとんどいないので、先を越される心配もなく、頃合いをみて採ることができる。
 フキノトウは、年内にはもうそれなりの大きさになっているが、やはり早春の摘み採りがしっくりくる。風味を味わう山菜は、やはり旬(しゅん)の季節感がいのち。それに「春の料理には苦味を盛れ」とか。
 春に目覚めたフキノトウが、枯れ葉を押しのけようとするその脇に、ノウサギのフンが転がっていた【右上写真】。このきれいなフンの"表情"を見ていると、天敵に狙われやすく、神経を張りつめていた雪の季節が去って、解放感につつまれたノウサギのホッとした気分が伝わってくるよう。
 ともあれ、光の春は森羅万象を陽気にさせてくれる。
 少しずつ隣家と友人におすそ分けしたあと、生のまま薄く衣をつけて揚げたてんぷらと、小さく刻んで油をひいたフライパンで炒め、更に味噌を加えて炒めたふき味噌が、夕食のおかずとビールのつまみになった。
  

惜桜小屋日記

2005年3月30日(水)