惜桜小屋日記

2005年3月9日(水)


 小屋の森近くの峠道の土手に、四季を通じしばしばカモシカが姿を見せる。
夏はイタドリやクズの葉を、冬は枯れ草の下にある青い芽を食べている。
 通りかかった人たちが、珍しそうにソッと車から降りて、カメラや携帯電話に収めようとすると、一応警戒のそぶりを見せるけれど、10メートル程に近づいても、急いで逃げだすという
ふうでもない。
 人の気配に敏感なニホンジカに比べれば、警戒心は格段に薄いようだ。
 ウシ科らしく動作は鈍重に映るけれど、いざという場面での逃げ足は早いし身のこなしは軽快だという。ただ「カモシカのような足」と形容される、すらっとした脚線美とは少しイメージが異なる気がするけれど―。
 かつては、亜高山帯でマレに見かける程度だった"まぼろしの動物"が、どうしてこんな身近で見られるようになったのだろう!?。
 奥山の自然破壊がすすんだからと、単純に片付けてしまうのは好まない。むしろ、放置された森が鬱蒼(うっそう)として、エサとなる下草が生えずらくなったため、草があり、行動もしやすい林縁部に現れるようになった、というあたりが、主要な原因に思える。
 国の特別天然記念物、長野県の県獣として保護策が行き届き、数が相当に増えているのも確か。里山を歩いて出くわす機会も多くなっている。
 それにしても、里山の風景にこの姿は似合わない気もするけれど、お互い生態系の構成員として、仲良く共生したいものである。

右下のサムネイルは夏、ここから30メートルほど離れた土手でクズの葉を食べていた