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惜桜小屋日記

2005年3月3日(木)


 夜明けを待って、朝ごはん?を狩るキツネを見に、先日の西山山麓の丘陵地帯へ出かけた。キツネの方は現れなかったけれど、山畑に植えられた、大きな柿の木の天辺近く、一羽の頬白(ホオジロ)が、高らかにさえずっていた。
「高槻※の木末にありて頬白のさへつる春となりにけるかも」
  アララギ派の巨匠 島木赤彦の一句。とまった木の種類こそ違え、句意の情景そのままの絵柄を、パチリ収めることができた。
 チッチー ピーツツ チチ ツツピー(信濃毎日新聞発刊 長野県鳥類図鑑より)。「一筆啓上仕り候」イッピツケイジョウ ツカマツリ ソウロウ とユーモラスな聞きなしがあてられている。
 寒さを蹴散らしてくれるはずの日の出の太陽は、さえぎる雲を赤く染めはじめたばかり。春は名のみの凍った山ろくの空気を切り裂くように、声をふりしぼっていた。
   
※高槻(たかつき)はケヤキに似た落葉樹の高い木のこと