気温19.5℃。風穏やか。
デッキ脇のミズキの大木にからんだ、三つ葉アケビの実が熟し始めた。葉陰に二つだけ、青紫色した顔を覗かせている。
玄関脇からヤマツツジをつたって這い上がり、屋根を覆っていたヤマブドウが小屋の景観を損ねるようになったので、ツルをそっくり屋根からはがし、一部地面を這わせて4メートルほど離れたジシャの枝にひっかけたのを嫌われ、今年は一房もつけなかった。
小屋東に広がる日の出の森でミンミンゼミが一匹、か細く鳴いている。エゾゼミの大合唱も聞かれなくなって随分経つ。例年この時期になるとさすがに蝉の声はない。今年は残暑に惑わされて羽化してしまう、ウッカリものがいるようだ。
真夏の蝉は元気をくれるけれど、秋風が梢を鳴らすころの蝉には「もうそんなに頑張らないで」と、声をかけてやりたくなる。
「死ぬる時節には死ぬがよく候」と、あの良寛さんも言っている。
いや早く死ぬがよいというのではない。伴侶を見つけるのも難しい今頃になって出てこなくとも、もう一年だけ地中で暮らし、来年の夏になって仲間が大勢いるころ顔を出せばいいではないか―。
惜桜小屋日記
2004年9月12日(日)