
2004年6月29日(火)
キジバト
二階の椅子に座って見る、窓外のサワラの植木は、頂上からおよそ4メートルほどのところで視界が遮られている。窓枠からはみ出て、死角となった部分に、何やら巣らしきものを見つけたのは、偶然だった。
隣の部屋のデッキ(物干し台)で新聞を広げていた時、常連のヒヨドリがやって来て、いつもより高い枝に止まったのを目で追って気がついた。
頂上から2メートルほど下の枝に、枯れ木が積み重ねられている。直径約30センチ、フチの部分は青空がすけて見える。ハトの巣に間違いないようだ。
もちろんもうハトの姿はない。子育てが実際に行われたのか、巣だけ作って放棄してしまったのか、そこは定かでない。分かっていれば、じっくり観察をしたのだけれど、気がつくのがいささか遅かった。
実はここまでは5月27日の話。
そして今日、巣の下の方の枝にひっそりたたずむ!?ハトの姿があった。姿を消したと思ったら、隣のサワラでジッと空を見つめている。なんとなく巣への執着が感じられた。二番目の子育てを始めるのかもしれない。
2004年5月26日(水)
タイミング
写真は左からミヤマザクラ、イヌザクラ、ウワミズザクラの"山桜三兄弟"-。
いずれも惜桜小屋のすぐ脇にあって、5月初旬から今頃にかけて、それぞれ特徴のある白い花をつける。
ことし、並んで立つミヤマザクラの清楚な花が散って、しばらくしてこのイヌザクラが咲いたのを見て、エッと驚いた。ミヤマザクラとウワミズザクラは以前から知っていたけれど、イヌザクラを"確認"したのは初めてのこと。目の前にありながら、十余年もの間、まるで気がつかなかったのである。
房状の花は、一見ウワミズザクラに似ているけれど、それほどの派手さはなく、葉の形も花穂のつき方もまるで違うから、すぐ見分けがつく。
サラリーマン現役時代は、毎日小屋を訪れていたわけでないので、短い花期にたまたま遭遇する機会がなかったようだ。
自然の邂逅はまさにタイミング-。
この先も小屋の森を舞台とし、季節と気候、時と場所が複雑に交わる十字路に、どんな新しい発見があるのか。
2004年5月10日(月)
小雨降る小屋の森
夕方近く、雨模様の小屋の森を訪れた。
気がつけば なずな花咲く 垣根かな-の名句にならえば
気がつけば 蘭の芽そだつ 小屋のみち
ふと足元を見れば、季節は着実に移っている。
雨滴を気にしながら デジカメに切り取った 森の初夏八題-。
2004年5月7日(金)
木の葉隠れの術
まずは左の写真。
草丈10センチ、直径3センチの葉が七枚ついたベニバナヤマシャクヤクが画面のどこにあるかわかりますか?。
答えは真ん中の写真。
ケヤキの枯葉にあいた直径5ミリほどの小さな穴に、葉が束になって差し込まれ、この枯葉をかむったまま、成長をつづけた姿です。
小さな穴から差し込む僅かな光に幻惑されたのか、よりによってその枯葉の穴めがけて芽を出し、そのままはまりこんでしまった。
その後は物言わぬ植物の哀しさで、がんじがらめの身を、自ら抜け出すすべもなく、今日に至ったものでしょう。
ベニバナヤマシャクヤクは、長野県の指定希少野生植物52種類に含まれる絶滅危惧種(きぐしゅ)だけれど、野鳥が種をはこんできたらしく、小屋の森では数年前から二ヶ所で四株見つかっている。
今年は別の場所ではすでに成長を確認しているけれど、今回の場所は発芽の気配もなく、半分はあきらめていた。
今朝は「確かこの場所」と、数10センチ四方に狙いをしぼって、小さな芽でもないかと目を皿にした結果、なんとなく居心地の悪そうな葉っぱを見つけ、視線を下げてみたらご覧の通り【写真中】-。
これまでは、漫然と上から眺めていただけなので、気づかなかった。
見事な木の葉隠れの術-といいたいところだけれど、このヤマシャクにとっては拷問に近かったに違いない。
枯葉を抜き取って解放したとたん、葉は勢いよくパッと広がって、まるでマジックのよう。ぎゅうぎゅう締め付けられながらも、いじけることなくすくすく育った葉っぱに拍手を送りたい。小屋の森の明るいトピックス-。