オオイヌノフグリ
 立春が過ぎたとはいえ "春は名のみの風の寒さや-"。
 諏訪湖西山の森につづく山畑はまだ一面の雪景色-。
 日当たりのよい土手で見つけたオオイヌノフグリも、四弁の花をシャキッと開いたのはほんの数個だけ。
もうひとつ元気がないのも、この雪と寒さではしかたない。
 澄んだコバルトブルーの花が、春の日差しを浴びて星屑のように輝くのは、三月に入ってから。たかだかひと月の辛抱だ。

   ところでこのオオイヌノフグリ、早春賦を奏でる花としてお馴染みだけれど、実は欧州原産の帰化植物、日本に渡ってきたのは明治の中ごろという。
  帰化植物の語感には悪者のイメージがつきまとう。
このオオイヌノフグリも在来のイヌノフグリを山間部に追いやった罪は罪として、百年以上も住みついて日本の四季に溶け込み、早春の季語ともなっている今、もうとやかくいうことはない。
 既存種との軋轢(あつれき)を乗り越えて獲得した市民権だ。
寒気のなか枯れのに咲く花は、まさに語らざれば憂いなきに似たり。
ひたすらすがすがしい。。 

惜桜小屋日記

2004年2月5日(木)