惜桜小屋日記

2005年3月24日(木)


 どんな土の様子になっているか、春耕を前に少し離れたところにある菜園を訪れた際、付近の畑地を歩いて早春の彩りを楽しんだ。
 ホトケノザが紅紫色したナギナタのような花を、線香花火のように突き出した隣りで、日差しをいっぱい受けたオオイヌノフグリがコバルトブルーに輝いている。ここ数年異常なくらい繁殖しているヒメオドリコソウが、ここでもひと群落を作っていて、高らかな進軍ラッパが聞こえてきそう。
 背を丸めてナズナ摘みするおばあさんがいた。一株一株ていねいに根をナイフで切り取り、カゴに放り込む。カゴはもう八分目くらいうまっていた。
 「もう十日も前から、天気がいい日には来ているよ」
 「おひたしにするのが一番、てんぷらにしてもおいしいでな」
 すぐ隣りの牧草畑から突然、ヒバリが鳴きながら飛び出した。空に浮かんだ一片の雲めがけて、ほぼ垂直に上ってゆく。やがて黒い点となり、わずか目をそらしたら姿を見失った。サエズリだけが空から降ってくる。
 友人と二人、しばらくはその場にたたずんで、雲雀の行方を見守った。
 風は少し冷たいけれど、なんとも穏やかな早春の日和である。