2年新人戦
私が1年生の頃
私の高校はかなり強かった。女子では今までで最高の代だったかもしれない
北信越までも、あと一歩だった
先輩は5人いたのに、私は1年のときからそういうチームにいれてもらっていた
「私達の高校は“勝てる高校なんだ”」と思っていた。
そういう思いでいた私にとって
自分たちの新人戦も、
「地区大会なんか優勝して当たり前」
だった
新人戦当日
準決勝も特に苦戦はせずに決勝まで順調に勝ちあがった
決勝の相手はH岡さん率いるF高校
F高校とは3年くらい前からず〜っと地区の決勝を戦っていた学校
そして
1年前の新人戦、今年のインハイ予選は私達の高校が優勝
「F校は勝ちたくてしょうがないんだぞ」
と、先生にも言われていた
いつもは先生がオーダーを考えて私たちはそれに従ってただけなんだけど
今回は私たちがオーダーを決めることになった
自分たちでオーダーを組んだ公式戦はこの時だけだった。
ダブルスは後輩のペアをひとつ入れていたので確実にポイントを取るために
ひっくり返した
カナはトップで決定していたので
途中まで決まったのはここまで
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選手名
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トップシングル
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カナ
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トップダブル
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ユリ&σ(^^)
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セカンドダブル
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1年生ペア
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セカンドシングル
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ユリorσ(^^)
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サードシングル
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ユリorσ(^^)
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問題はセカンド、サードシングル
色々考えた結果
私がセカンドに入ることにした
もし、F高校のエースがサードシングルに入ってユリとあたり
あたしがF高校のNo.2と当たれれば確実に私たちが勝てるオーダーにした。
逆に、F高校のエースがセカンドに入って
No.2がサードに入ると
結果は全くわからないオーダー・・・
カナ「もし、むこうもおんなじこと考えてたらどうする?」
調子づいて自信満々だった私はこう答えた
「絶対に勝ってみせる」
(なんて強気だったんだ・・・(T_T))
コールされ、むこうのオーダーを見てみると
自校
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F高校
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トップシングル
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カナ
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トップシングル
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No.4
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トップダブル
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1年生ペア
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トップダブル
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エースダブル
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セカンドダブル
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ユリ&σ(^^)
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セカンドダブル
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No.3&No.5
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セカンドシングル
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σ(^^)
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セカンドシングル
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エース
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サードシングル
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ユリ
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サードシングル
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No.2
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どっちが勝つかはわからないオーダーになりました
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・
セカンドシングルまで終わり
結果は考えていたと通り
自校 2−1 F高校
いよいよシングルです
コートがあいていたのでセカンド、サードが一緒に入りました
試合開始
自信満々だった私は第一ラリーで
自信が崩れました
「いつの間にこんな球を・・・?」
彼女(相手エース)は
対わたし用の持ち球を増やしていたのです
私が最も苦手とする球を。
一気に5点くらい取られて、少し粘ったりもしたけど
あっさりと1セット取られてしまいました
インターバル
先生「あの球が来たらラッキーだと思え」
「2セット目ははじめに少し点数取られるかもしれないけど、気にするな」
と言われ
「よし、あの球の中で甘いのが来たら前に詰めてプッシュしていこう
そしたら、そのうち打ってこなくなるはず」
と、考え2セット目
先生が言うとおり、3点くらい一気に取られました
けど
さっき、先生にいわれてたから特に気にせず少しずつ追い上げ
甘い球をプッシュし続けてたら嫌な球も来なくなり追い上げムード
が
競ってきたところでもう一回その球を使い始めた
「もう、ダメかもしれない・・・」
そう思った次のラリーから受身の試合になり
相手の点数が増えてくると
「このまま、できるだけ長くコートにいてユリにプレッシャーを与えないようにしたい」
と、思うようになり
チームのことを考えず、自分自身で
試合を捨てた
そして
負けた
「絶対に勝ってやる」
って、言っていたことが重くのしかかり
つらかった
先生のところに行くと
先生はすごく怒っていて
少しづつ話す言葉ひとつひとつが重くて、苦しかった
「皆、ごめん」
自分自身を過信し、相手エースを軽視していたことに気づき
そういう自分が情けなくて、悔しくて、やりきれなかった
あまりにもそういう気持ちが大きかったから
まるで、体育館の中で自分だけが別な次元にいるような気がした
まわりに水の壁があるような、そんな不思議な感じだった
まだ、ユリは戦っていた
1セット目をとって、2セット目5−5のスコアはしっかりと見た
「ユリは、あんなに頑張ってるのに私は今まで何をしてたんだろう・・?」
先生の言葉が重かったことはすごく覚えてるけど実際内容はほとんど覚えていない
「今まで何をしていたんだろう?」
「なんで、自分から試合を捨ててしまったのだろう・・?」
自問自答の繰り返しだった
けど、先生の話した言葉の中に
「お前は自分自身のためにしか戦わなかったんだ」
と、言われた記憶があり
「ユリは・・チームのために、カナのために、お前のために戦っているプレーをしている」
と、言われた記憶がある
涙が止まらなかった
ユリの試合は競った
後輩の応援の声に必死さが伝わってきて
自分がチームに対して何もできなかったことへの苦しさがつのった
最後の一本が決まり
ユリが勝ち
チームが優勝した
ユリも、カナも、後輩も、試合を見に来てくれた先輩も喜んで
泣いていた
だけど
私はコートの隅でみんなと離れ、その光景を見ていて
みんなとは違う意味で泣き続けていた
みんなと一緒には喜べなかった
輪の中には入れなくて
やたら他人事に思えた
優勝したくてここまできたのに
ライバル校に勝ちたくてここまできたのに
結果は出たのに
喜べない
悔しい
情けない
辛い
苦しい
辛くて、辛くて自分がどこにいるのか
何をしているのか
立っていることしかできなかったあの思いは
二度としたくない
全員で、試合に来てくれた先輩にお礼をいいに行った
「ありがとうございました!」
みんなの元気な声が耳に響いた
けど、私は下をむくことしかできず
先輩の顔を見ることができなかった
みんなが、喜びを全面に押し出して喜んでいたけど
一人の先輩が私の前に来て
「悔しかったね」
と、言ってくれ
「今は、悔しくてどうしようもなくていいと思うよ。がんばれ、がんばれ」
その言葉を聞いて、先輩の顔を見た瞬間に
泣いた
すごく泣いた
くやしくて、くやしくて
みんなと一緒に喜べない自分が悲しくて
そういう思いがいままで以上に溢れてきて
すごく泣いた
「二度とこんな思いはしたくない」
と、何回思ったかわからない
今でも、思い出すとつらい気持ちになる
苦しくて、すごくつらい気持ちになる
だけど、
この時に感じた
「二度とこんな思いはしたくない」
という気持ちは
このあとの高校バドミントン生活に
大きな意味を持つことになった
今でも
自分のバドミントンにとって大きなポイントだったと思う
この思い、つらくてどうしょうもない気持ちを知ってから
どんなに苦しくても
戦うことを放棄しなくなった
試合を放棄することで
自分が苦しい思いをすることを学んだから
もう、二度とあんな思いはしたくないと思うから
この思いをしてから
ひとつ強く、大きくなったと思うけど
大事なことだったと思うけど
でも、やっぱり
あんな思いはしたくなかった
すごく
つらかった
もう絶対にあんな思いはしたくないし
誰にもしてほしくないと思う
試合を放棄することは
自分の価値を下げて
自分を苦しめるだけのこと
どんなに苦しくても
最後まで戦おう
自分と戦おう
がんばれ、がんばれってがんばろう
最後まで
がんばれるはずだよ。


